第54話 バレた!

「呼んだのは分かっているよな。こちらに付く気がないのなら、このまま消えてもらうと言う事だ。お前が死んだ時点でDevilsにいる生徒は毒ガスで皆殺しにし、火事をおこして証拠を隠滅する。そうすれば何も残らないからな。そもそもあそこにいる生徒らは一歩間違えると凶器だからな。今、キラや飛鳥もDevilsに監禁している。一緒に死ねば何の問題もないからな。」


「あなたの息子もいるのでは?」


「計画の為には死んでもしかたないさ。」




 待っていてもデータが来ない…。11時まであと15分…用意は万端だがデータが来ない事にはどうにもならない。どうしたんだろうか?何かあったのだろうか?亜子はいてもたってもいられず、部屋から監視室に向かって動き出した。


 ソルは監視カメラを見て焦っていた。亜子のいる部屋の前の廊下の映像を再生していたのが終わり、通常の画面に変わっていたからだ。


 亜子が部屋に入るまでの時間と思って流していたので、亜子がそこから出てくるのは想定外だった。すぐに再生に切り替えたが………。小春川の手下が見ている牢屋の画面からは少し離れた位置にモニターがあるので、牢屋の映像に集中していれば気がつかなかっただろう。

 俺のデータが遅いせいで亜子がこっちに向かっている。

 本来ならキラ達が来てこっそり渡すはずだったのに今日に限って、小春川は牢屋から動かないわ、手下に動くなと言われどうにもすることが出来ない。


「すいません。俺トイレに行って来ます。」


「ソル。部屋から出るな。」


 何となく様子がおかしい。


 お前はどっちの味方なんだ?さっき亜子が廊下を歩いていたのは気がついたろう。牢屋にいるはずの亜子が廊下にいたのを報告しないって事はおまえは皇帝を裏切ったってことだよな。」

 手下は無線を取り、牢屋の前にいる元皇帝、小春川に状況をしらせた。


「牢屋にいる奴らは全員裏切り者です。亜子がそこから抜け出しています。」


 同時にソルは三田に連絡を入れていた。


「三田全員で外に出ろ!」


 一瞬ソルの電話の方が早かった。三田が素早くドアを開けた瞬間、誰かがドアにぶつかって倒れた。

「あ、ごめん。」

「三田、可哀想なことすんなよ」東金がヒョイっと顔を出した。

「仕方ねえだろ。いきなりだったんだから。」


「やばい小春川がいない!」


 牢屋の中では「ふざけんな!」見張りの奴らが5人ほど飛びかかって来た。

 後ろに控えていたキラと飛鳥も加わると、あっという間に倒し牢屋に入れて鍵をかけた。さすがにシューケットとは言えレベルの高いメンバーなので全く敵わなかった。

 キラ達は走り出し亜子とソルがいる部屋に向かった。


 亜子は監視室の前まで来るとドアをそっと開け隙間から中を覗き込んだ。見える範囲に誰もいなかった…そんなはずは無い…多分ワナだ。

 丁度持って来たペットボトルを中に投げ込んだ。するとそれに向かって銃声がなりペットボトルは弾け飛んだ。

「亜子だろ。よく抜け出したな。なぜここに来たんだ?何を企んでいる?」

「ソルは?」

「麻薬打ったからな。意識が朦朧としているがここにいるぞ。もう一本打ったら死ぬかもな。助けたかったらお前も中に入れ。」

 中に何人いるんだろう…倒せるだろうか。ゆっくりとドアを開ける。その途端5人に囲まれた。

「抵抗したらソルが生きていられないからな。お前には自白剤を打ったあと麻薬打ってやるよ。」

 ソルを見ると瞬きを2回した。合図だ。

 ソルは力を振り絞り敵の腹を殴りつけた。その瞬間フラフラと亜子の方へ倒れ込んだ。ソルは口の中からビニールに入ったUSBを取り出して亜子に渡すと行けと小さく言った。亜子はそれを掴み走り出そうとしたら、足を引っ掛けられ倒れ込んだ。その瞬間腕をナイフで刺された。


「ううっ。」


 片手が使えないまま戦った。亜子は強かったがさすがに5人も相手となると防ぐのがやっとで反撃ができない状態だった。壁に押さえつけられ刺された腕を強く掴まれた。そして注射を打たれそうになった時、その男が急に壁に吹っ飛んだ。


「キラ、亜子が傷つけられて頭にくるのも分かるけど、そんな強く殴ったら死んじゃうよ。」

「俺のパンチぐらいじゃ死なねーよ。ごめん亜子遅くなった。」

「キラ、俺たちにここは任せろ。亜子と行け。」

 亜子の腕を縛り走り出す。

「亜子行くぞ。」

「うん。」

 すれ違いざまに三田の仲間が監視室に向かって行った。仲間があんなにいれば大丈夫だな。


 亜子とキラが実践室の近くまで来ると、壁に寄りかかって小春川と部下2人が立っていた。いつの間に…。

「残念だな。キラ。ここまで来たがもう終わりだ。俺はお前と力は同等だ。亜子をかばって戦えるか?」

 2人は身構えた。こうなったら戦うしかない。

「亜子、俺がこいつらを引き寄せている間に中に入って鍵をかけて作業をするんだいいな。」

 小さな声でささやいた。

「ダメだよ。1人じゃ敵わない。」

「みんなの為だ。頼む。」

 亜子は涙ぐみながらうなずいた。

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