第52話 データの行方

「森田さんが亡くなって、どう考えてもUSBが絡んでいると思わざるを得なかった。 

 モンナさんから亜子に渡したデータを見たらUSBにロックがかかっていて、たぶん自分では開けなかったんだろう。受け取る時、森田さんが亜子がパスワードを知っていると言ったらしい。森田さんの部下が近くにいて聞いたらしいのでまちがいはない。だから亜子に渡してロックを解除したものを手に入れるつもりだったんだ。」


「キラちょっと待てモンナさんがなぜ手に入れる必要がある?」

「まだ分からないのか?モンナは味方じゃない。大統領のスパイだ。そして森田さんを殺したもの多分モンナだ。森田さんの行動も把握していただろうし。多分亜子の周りを探っている奴がいたのは亜子がパスワードを解除してそれを俺に渡したりしていないか監視していたんじゃないかな。」


「亜子はパスワードを解除したのか?」

「ああ。亜子が答えをみつけたよ。USBの中には森田さんのメッセージが入っていた。三田携帯で見せてあげてくれ。」


「よう。みんな元気か。直接話したかったがとりあえず動画で残しておく。このUSBが必要になって見ているのなら、俺は消されているのかもしれないな。まあそうはなりたくはないが。

 貸金庫に保管してあるUSBは嘘の情報を入れた偽物だ。今までの大統領の女遊びの情報しか入っていない。副大統領と話をした結果マスターは俺が選んだ人物に渡してある。俺しか知らない。そのデータを用意が整い次第、広めてもらうように頼んである。この世にあのデータは一つしか存在しない。無事にデータが世界に広がる事を祈っている。

 たまたまパスワードが開けてこれを見たのであればいいのだがな。偽物を渡して悪かった。それは許してほしい。このデータの最後にマスターに入っていた亜子ちゃんの家族の動画がある。ぜひ亜子ちゃんに見せてあげて欲しい。

 飛鳥、お前といて楽しかった。肉親がいなかった俺にはお前が家族だったよ。真面目にやれよ!じゃあな。」


 そこで動画は終わり、もう一つの動画には亜子の小さい頃の家族と遊んでいる風景が映し出された。そこには空もいて家の庭のプールで遊んでいるのを亜子の両親が優しく見守っているものだった。飛鳥の頬に涙が流れた。


 森田さんが必死に残してくれたもの。やり遂げないと。


「ところでマスターは誰が持っているのかわかったのか?」

「ああ、俺さ。」

「キラが!持ってるのか!」

「帰る時に森田さんに頼まれたんだ。あんなに飛鳥が信頼しているんなら大丈夫だろうって。」

「俺にも言わなかったんだな。」

「飛鳥に渡すと俺を助けるために渡してしまいそうだからやめとくって言ってた。自分が持ってる事にした方が俺が危なくないからって。もし自分に何かあったらこのデータを使って欲しいって言われてさ。」

「今、そのデーターは?」

「東金と三田がうまくやってくれてソルが処理中。」

「あと1日しかない。もうすぐ身代わりが来るからそしたらソルの所へ行って打ち合わせ通りに頼むよ。」

「うん。」

 話終わってすぐに扉が開く音がしてフードを被った長い髪の女の子が入って来た。初めはアゲハかと思ったが背格好が違う。

「誰だ?」飛鳥が問うと

「私よ」顔を上げると女の格好をした東金だった。

「へへ、似合う?この廊下はソルが監視カメラ止めてくれているから今なら抜け出せるよ。」

「よし、じゃあ亜子ちゃん、東金と服を取り替えて行くよ。」

「うん。」

 亜子がその場で着替え始めたのでみんなで焦って後ろを向いた。

 着替え終わると亜子は1人で外に出て行こうとしたので

「亜子ちょっと待って。」キラが話しかけた。

「どうしたの?」

 キラが亜子のそばまで行くと『ギュ』と抱きしめた。

 亜子の顔が真っ赤になる!

「え、キラ?」

「気を付けろ」そう言って亜子の肩をポンポンと叩いた。

 そして亜子を送り出した。

 …亜子はドキドキが止まらなくなった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る