第51話 監視

 小春川はナイフを受け取り、あまりにも小さなナイフにびっくりしていた。


「すげえな。このナイフこんなのあるんだな。まあそんなことはどうでもいいか。

 とりあえず、あんな奴いてもいなくても一緒だからどうでもいい。後で部下が始末するだろう。さあ問題はお前らだ。とりあえず亜子USBは何処だ?」


 亜子は無言でにらんでいた。


「まあ簡単に言う訳ないよな。まあ時間はたっぷりある。この牢屋にはお前ら3人、何も食べるものもなくなって、いつまで耐えられるか…三日後にまた来るからな。」

 そう言うと小春川は出て行った。三田は監視役として残されていた。


 小春川と廊下をあるきながらアゲハは心配そうな顔をしていた。


「ねえ、キラには何もしないで。」

「殺しはしねえよ。ギリギリまではやるけどな。少しは我慢してくれよ。亜子と離したいんだろ。最終的には亜子はずっとここから出られなくするつもりだから安心しろよ。」

「わかったよ。」


 三田は夜になるとシューケットへ戻って行った。扉の前には代わりの監視の奴が立っているようだ。

 さあこれからが勝負時だ。いつまで小春川を騙せるか。


 東金は部屋へ戻ると小さな包紙を手に持ち、その時間が来るのを待っていた。

 午後11時。シューケット全体が停電した。停電すると緊急用に部屋のロックが全て外れる。東金は暗視ゴーグルをつけ部屋を出た。停電が解除されるまでの15分間で終わらせなくてはいけない。行って戻って時間ギリギリだ。何人かの生徒は部屋の外に出てきているようだが周りが見えていないようだ。


 皇帝の部屋に入り机に掛かっている鍵を開け小さな金庫を取り出した。机に鍵をかけ直し、外へ出るのに10分ほど掛かってしまった。後5分急いで戻らないと…。

 急いで部屋の前まで戻ると三田が待っていた。

 三田に小さな金庫を渡すと、2人ともすぐに扉をあけ中に入った。入ったタイミングと電気が着いたタイミングがほぼ同時だった。入った瞬間オートロックがかかり扉は開かなくなった。

「とりあえず間に合った。危なかった。」


 次の日の朝、三田は小さな金庫をお菓子の入ったビニール袋に入れるとDevilsへ向かった。地下牢の入り口にはソルが監視役で座っていた。

「お疲れ。これ差し入れ。お菓子いっぱい入れておいたから。」

「あ、悪いね。じゃあ頼んだ。」

「ああ。」

 そう言うと三田は鍵を開け中に入った。

 キラ、飛鳥、亜子ともみんな横になって同じポーズのまま動かない。よくやるよ。すげーな。今日1日の辛抱だ。頑張れ。


 ソルは部屋にこもりパソコンの前で作業を始めた。半日で作業を終え、監視ルームへと向かって行った。


 監視ルームに入ると4人の生徒が画面を見ていたがほとんどが携帯をいじったりしていてろくに画面など見ていない。これなら簡単そうだ。


「あれ?ソルかどうしたんだ?」

「俺もここのメンバーに追加されたんだ。地下牢のモニター監視は俺がやるから。」

「本当か!良かったよ。全然動かなくて寝てばっかりで見ててもつまんないし。ただこの閉じ込められている男がちょっと皇帝に似てるんだよな。」

「そんなところにいる訳ないだろ。他人の空似だよ。」

「そうだよな。いる訳ないよな。じゃあこの席座れよ。」

「おうありがとな。」


 そう言うとソルは席に座り、画面を見つめた。ちょうど昼で2人抜け自分の周りに人がいなくなった事を確認した上で地下牢の音声を切り、録画の停止ボタンを押し、再生に切り替えた。先ほどの画面と全然変わらない状況にこれはすぐにはバレないと確信した。

 すぐに三田に電話をし、

「もういいぞ」ソルの言葉に

「わかった」と返事を返した。

「絶対に逃がすんじゃないぞ」

「わかってるさ。」と三田はニヤッと笑った。


 三田は椅子から立ち上がり、

「おい起き上がってもいいぞ」と声をかけた。


「やっと動ける!」亜子が小さな声でうれしそうにしている。

 牢屋の中で3人とも立ち上がった。

「体が痛え」キラは伸びをした。

「やっと話が出来るな」飛鳥は床にあぐらをかいた。

「東金、三田、ソルのおかげで助かったよ。」

「だろ、でもやっぱりソルのおかげかな。小春川がDevilsにいることを教えてくれたんだから。ソルは小春川に信頼されているからな。」

「そもそもなんで信頼されてるんだ?元々そんなに交流ないよな。」

「小春川が実技試験の時にキラを刺してから行方がわからなくなっただろ。その時に面倒を見ていたのがソルだったんだよ。ソルもいい奴で精神状態が不安定な小春川を取り巻きの先生から頼まれて面倒見てやったんだって。」

「それなのに裏切るのか?」

「ソルは小春川を更生させたいらしい。元々は悪い奴じゃないって言ってた。それと亜子を虐めたからそれは罪を償わせるだって。なあ亜子ソルは兄ちゃんみたいなもんだろ。」

「うん…。ずっと面倒見てくれた。」

「そういえば亜子って高校生の年齢じゃないのにどうしてここに来たんだ?本当は入れないはずだろ。」

「大統領がらみだから特別枠で入ったらしい。入ったら入ったで頭が良くてびっくりされていたけどな。」

「そうなのか。凄いな。じゃあ俺ら4人とソルで戦ったら無敵だな。」

「キラ、東金忘れてないか?」三田が笑った。

「あ!確かに!」

「おい、冗談話してる時間はないぞ。」

「大丈夫さ。ソルが準備進めてくれてる。その時がきたらあとは天才ハッカー亜子の役目だ。」

「俺はまだ状況が掴めないんだけど。」

「そうだよな。飛鳥に話すのは初めてだからな。」

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