第45話 亜子の家へ
宅配のトラックは1時間半ぐらい走ると、サービスエリアの駐車場に入った
。
トラックを追っていた男たちはトラックを監視していたが中々動く気配もなく苛立ち始めていた。
ドアが開き運転手2人が降り、売店の方へ行くのを確認するとすぐさま近寄り、後ろのドアをこじ開けた。中を見ると段ボールが3個積んで置いてあることに気がついた。ガムテープを勢いよく剥がすとビニールに入った大きな可愛いウサギのぬいぐるみが入っていた。他の段ボールも同じぬいぐるみが入っていた。男たちは舌打ちすると荷台から降り元来た道を戻って行った。
「位置情報はトラックの中なのにいないとは…はめられたな。とりあえず家まで行くぞ。」
車は大きな裏門から中へ入り停車した。あの事件依頼、亜子の家は空き家のままになっている。
ここが亜子の家なのか?亜子はこんな大きな家のお嬢様だったんだな。
唖然としているところに急に腕を掴まれて、びっくりして見ると亜子が震え、しがみついている…そうだよな。亜子には辛い思い出が詰まった場所だもんな。
「一緒に行こう」キラは亜子の手を握って歩き出した。裏口のドアをモンナが開けた。鍵で開けたわけでは無さそうなのでモンナも只者では無さそうだ。光の弱い小さなライトと暗視スコープを付け2階へ向かって歩き出した。血だろうか…廊下にはシミのようなものが残っている。
ゆっくりと廊下の一番奥の物入れまで歩いて行った。物入れにしては意外に広さがある。扉を開くとなかにはバケツや雑巾やモップその当時のまま置いてあった。
「なあ飛鳥どこに隠したかわからないのか?」
「昨日からずっと考えているんだけど、記憶がなかった上に小さかったから…。」
亜子が物入れのすみに落ちていたホコリだらけの小さい熊のぬいぐるみを見つけた。熊は手のひらに乗るぐらい小さい。
「これ、そう言えば大好きでいつも一緒に寝てたんだ。…ママにもらった…」ポロポロと泣き出した。声をこらえ小さく震えている姿にどうしようもない気持ちになり亜子を抱きしめた。
「亜子、悲しいけど今は俺たちがいるから、亜子を絶対に助けるから。」
その姿を見ていた飛鳥がこちらに歩いて来ると亜子が持っていたぬいぐるみをつかんだ。
「亜子、これ、これだよ。これ確か入れ物になっていたよな。」
飛鳥がぬいぐるみを探るとお尻の下に小さいチャックがついていた。開けるとUSBメモリが入っていた。
「あった!このぬいぐるみアメが入っていたんだよな。だからチャックがついていたんだ。」
「よく見つけた飛鳥!」
「あれ?森田、敬語じゃなくなってるよ。」
「外に出たらいいんだよ。」
「ごめん亜子、もう行かないと。いずれ帰って来られるようになるから我慢して。ここにいたら危ないんだ。」
亜子はうなずいた。外に出ようと手を引いて歩いていると、亜子が急に居間に入って行った。
「亜子?」
「ちょっとまって。」
そう言うと棚の上に置いてあった写真たてを手にとり戻って来た。それを胸に当てリュックにしまった。
「さあ行こう。」
外に出て車に乗り込む。裏門を開けライトはつけずに道に出る。遠くからライトがこちらに向かって来ているのがわかった。裏門を素早く閉めて車とは反対方向へ走り出した。
「急いで戻りましょう。」車はスピードを上げ自宅へと走り出した。
スーツの男たちは亜子の家の前に着くとあかりがついていない事を確認したが、念の為、家の中も確認しに入って行った。合鍵は持っている…がもうすでに開いていることに気が付いた。
中に入り何か変わった点はないかと確認している。現場の写真を持っているのでそれと照らし合わせた。どこも変わっていないようだが…居間に入ると写真たてがなくなっている事に気がついた。
「ここに来たんだな。畜生逃げられたか。」
「危なかったな。やっぱり後をつけられていたんだ。」
「そうですね。あと数分遅かったら出くわしてしまいましたね。」
「本当だな。」
後ろを振り返ると3人が寝ている。
「神経を使って疲れたんですね。」
「ああ、こうやってみるとやっぱりまだ子供だよな。」
敷地内へ入ると3人を無理やり起こし、こっそりと家の中に戻った。
「USBは明日ゆっくりと確認しましょう。亜子様ぬいぐるみと一緒にまだ持っていてください。今日は部屋に必ず鍵をかけて寝てください。」
「森田、敬語に戻った。」
「亜子は目を覚ますとキラが横のソファーで寝ている事に気がついた。心配してここにいてくれたのだろうか?
恥ずかしい寝顔見られたの?!
あ!ぬいぐるみ!ちゃんと枕元に置いてあった…よかった。このUSBに何が入っているのだろうか?お母さんが命がけで守ったもの。
キラが寝ている姿を初めて見た。寝相が綺麗だった。もっと近くで見たい…亜子はキラの目の前に座った。
寝てるからいいよね…亜子はキラの頬に唇を近づけた。
人のいる気配でキラは目が覚めた。一瞬目を開けると亜子が目を瞑りキスしようとしていると分かったので焦って目を閉じた。頬に柔らかい唇があたる。うわ!照れる…心臓の音が聞こえてしまうのではないかと思うぐらいドキドキした。亜子が離れて少し自分が落ち着いたところで目を開けた。
「あ、亜子おはよ。」
「キラ、おはよ。一緒にいてくれたんだね。ありがとう。」
「うん。じゃあ一回俺部屋に帰るな。着替えたらご飯食べに行こう。」
亜子の部屋を出ると、キラはため息をつき…俺の理性頑張った!と自分を褒めていた。
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