第43話 船で
荷物を持ち3人で学園から車に乗り外に出た。飛鳥の家の船が迎えに来ていたのですぐに出発することができた。
「お帰りなさい。飛鳥様。」
「久しぶりだね。森田。元気だった?」
「もちろんです。お話は聞いております。キラ様、亜子様。どうかしばしおくつろぎください。」
「もう大丈夫だ。この中は俺の身内しかいない。今日は船で一泊するから個々に部屋を用意してある。あ、ディナーは19時からだから部屋に用意しておいた服を着てきて。」
部屋に入るとベッドに横になった。船なのになんて豪華な部屋なんだろう。19時まであと2時間ある。少し寝られるな。
亜子はすべてにとまどっていた。
亜子は部屋に行くと見たことのない物だらけで部屋中を散策していた。よくわからない液体やスイッチ、広いお風呂何だろうここは?
しばらくすると部屋をコンコンと叩く音がしてビクッとなった。恐る恐る扉を開けると知らない女の人が立っていた。
「亜子様、お世話係のモンナと申します。よろしくお願いいたします。」
首を横にふり、1人で大丈夫ですとメモを見せたが「失礼します」と言って入って来てしまった。
お風呂にお湯を入れ、とてもいい匂いのする液体を入れていた。
「どうぞ、お入りください」と言われバスローブを持って中に入った。湯船に浸かると、とても気持ちよく眠くなって来た。こんなにゆっくりとした時間は物心ついてからは初めてだった。
お風呂を上がり外に出るとモンナさんが待っていて鏡の前に座らされた。
顔に液体をかけられ、手で頬をグリグリされた。少し痛かったけど気持ちが良かった。眉毛も整え、髪の毛を綺麗にとかして乾かしてもらい、カールまでしてもらった。
「まあとても色白の美人さんでしたのね。今までケアしてなかったのがもったい無い。お若いので肌はお綺麗ですから軽くリップのみ、つけさせていただきますね。」
鏡で見る自分は初めて会う人に見えた。
クローゼットにかけてあった、真っ白のワンピースに着替えた。今まで制服以外はボロボロの服しか着ていなかったので変な気分だった。
「さあお食事のお時間です。こちらへどうぞ。」
「ありがとう、ございます。」
「あらお話出来るんですね。とても可愛らしい声ですね。もっと積極的に話された方が良いですよ」とニコッと笑った。
この人はとても良い人だ。亜子は女の人にこんなに優しくされた事がなかったのでとても嬉しかった。
船のデッキ、星空が満点に見える場所がディナー会場だった。着なれないおしゃれな服を着て亜子が来るのを待っていた。
飛鳥は服の着こなしが自然でさすが金持ちの息子だった。
「お待たせ致しました。亜子様をお連れしました。」女の人がデッキに出て来た。その後ろを白いワンピースを着た亜子が現れ、可愛らしさに息を飲んだ。
「少しおしゃれをして来ました。とてもかわいらしいです。」
「本当だ亜子じゃないみたいだ。ほらキラなんて言葉忘れてるし。」
飛鳥に指摘されハッと現実に戻った。なんて可愛いのだろう。こんなに変わるとは思ってもみなかった。
「亜子めちゃくちゃ可愛い!」
「相変わらず表現がストレートだね。」
亜子は顔が赤くなっていた。
「うれしい。」
「わ、言葉が自然!」
「かんたんなことばなら、だんだんはなせるようになったよ。」
「すげえキラのおかげだな。」
「今日は楽しく食事して、これからの事は明日考えよう。」
「そうだな。」
3人でふざけ合いながら綺麗な星空の下、今日だけは現実を忘れた。
朝、目を覚ますと目の前に亜子の顔があった。びっくりして飛び起きベッドから転がり落ちた。
「キラ、あさだよ。」
昨日とは違ってジーパンにTシャツ姿だったがこの格好もまた新鮮で。ドキドキした。
「あ、うん。」
「あさごはんたべよう。」
「分かった。」
亜子が部屋を出て行かないので着替えられない。
「亜子ひょっとして俺のこと待ってる?」
うなずく。
「裸になるんだけど見るの?」と服を脱ぎ始めた。
びっくりして部屋を出て行った。
「ハハハ。やっぱり可愛い。」
ドアを開けて外に出ると亜子が立って待っていた。
「待っててくれたんだ。」
「ばしょがわからないとおもって」
言い方が可愛い…。
「亜子ちょっといい?」
返事を聞く前に亜子を引き寄せて抱きしめた。
「相変わらず細いね。」
亜子は真っ赤になっていた。
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