第42話 亜子の演技

 翌日もう一度Devilsに向かった。


「飛鳥、お前亜子に何言ったんだよ。」


「キラが亜子のこと好きみたいだから告白してみなよって言った。」


「何だよ。まんまストレートじゃないか!勝手に言うなよ。」


「だって煮え切らないじゃん。亜子からは絶対言わないだろうし、キラはなんかアゲハにも好かれてグズグズしているし。」


「だからって。」


「でもよかっただろ。カップル成立だろ。」


「まあそうだけど。なんか違う気が…。付き合おうとは言ってないし。」


「何で言わないんだよ。」


「何となく…色々と終わってからの方がいいかと思って」アゲハの事もあるし。


「ところで今日はこれからの事を3人で話したいんだ。」


「話変えやがって。いいよわかったよ。」


「亜子は飛鳥の事覚えてたのか?」

 亜子がうなずいた。パソコンの目の前に3人で座って会話をしていた。


『飛鳥じゃなく、空くんだけど。』


「空?え、飛鳥って元々空って名前なのか?」


「そうだよ。」


「え、顔に合わない。そんな爽やかな名前。」


「お前ふざけんなよ。」

 亜子は笑っている。


「で、これからどうするんだよ。」


「とりあえず、2人で思い出した事は亜子のお母さんが亡くなる前に、俺たちにUSBメモリを渡したんだ。俺はそれをどこかに隠したような気がするんだ。そのUSBメモリには何か情報が入っていたんだと思う。副大統領に渡してと言っていたし。」


「なぜ副大統領なんだ?大統領じゃなく?」


「それは言わなくても何となくわかるよな。」


「大統領の情報ってことか?」


「まあそうなるだろうな。」


「そうなると、今やらなきゃいけない事は亜子の家に行ってそのデータを探す事だ。」


「でも抜け出すのはキツくないか?」


「もうすぐ夏休みだろ。みんな帰省するから大丈夫さ。」


「そうだな。でも亜子は出れないよな。」


「俺に提案があるんだけど。」




 夏休みに入る前日Devilsで事件が起こった。


 その日はDevilsの皇帝の部屋にキラ、飛鳥、東金、三田が待機していた。


 Devilsの警備員が部屋に飛び込んできた。


「キラ様、1名気が狂ったように暴力を振っている女子生徒がいます。」


「わかりました。場所は何処ですか?」


「訓練施設Aです。相手はもう血だらけで…。」


「ここのメンバーで処理しますので、後で連絡するので待機していてください。」


「わかりました。」

 そう言うと出て行った。


 みんなで目を合わせるとニヤッと笑った。

「じゃあみんなで亜子をとめに行くか。」


 訓練施設に行くと、亜子が狂ったようにソルを殴っていた…正確には殴るふりをしていた。

 監視カメラが付いているのでとりあえずみんなで亜子を捕まえ羽交いじめをしてソルから引き離す演技をしている。


みんな役者だね。


 キラは皇帝だから立って見ていろと言われた…こんなんで威厳があるように見えるのか?


 縛り上げ、亜子の部屋まで連れて行った。中には監視カメラは無いのでみんなでホッと息をついた。

「すげえ迫力だったな。本気で殴っているみたいに見えたよ」三田が笑っている。

 亜子と東金が服とICチップの付いた生徒証を交換している。


 飛鳥が考えた作戦は東金と亜子の背丈が似ているので、亜子が暴れたふりをして、バツとして隔離して、東金と入れ替わると言う事だった。帰ってくるまでの5日間、東金にはここで生活してもらうことになる。


「ごめんな東金。」


「キラ、気にしなくていいよ。5日だろ、今回親が日本にいないから何処も行かないし、パソコン、テレビ、お菓子、ゲーム全部揃ってるから誰にも邪魔されず、オンラインゲームしまくる。」


「何かあったら三田に言ってくれ。それにしてもロン毛のカツラ似合うな。」


「女子みたいだな。毎日様子見に来るよ。」


「あんまりグズグズしていられない。行くぞ。」

 

 扉を閉めて鍵をかける。帽子を深く被った亜子も一緒にいる。監視カメラで見ていたのか、警備員がもうきていた。


「この後はどのようにすればよろしいですか?」


「1週間隔離する。食事はそこの小さい扉から入れてくれ。悪い事をしたとしても食事を抜きにするとかは禁止だ。三田がたまに来るのでそれ以外の者の入室は禁止だ。いいな」

 俺なんか偉そう…恥ずかしい。


「わかりました。ありがとうございました。」


 東金を残しシューケットへ戻る。皇帝の部屋へ全員で入った。

「キラ…皇帝みたいだったな。」

「恥ずかしいからやめてくれ。柄じゃ無い。もうすぐに出よう。飛鳥、亜子、行くぞ。三田、後を頼んだ。」

「おうよ。」

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