第41話 飛鳥と亜子
キラと飛鳥は街に出ていた。
「ごめんな。なかなか出掛けられなくて。」
「いいよ。今ここに来てくれているでしょ。」
「今日は思いっきり付き合うよ。どこに行きたい?」
「遊園地とイタリアン。」
「OK。」
遊園地はいつも並ぶ事もない。そもそもこの学園の人しか来ないからな。行く時は予約が必要となる…空いているって言う事はアゲハが前もって予約していたんだな。本当に悪かったな。ここに来ると隔離されている島だってことを忘れる。
何してんだ俺?皇帝になって小山の大将みたいに偉そうに学校のルールなんか決めちゃって、冷静に考えると何様だ…。なんか家に帰りたくなって来た。何も考えずにただボーッと過ごしていた頃が懐かしい…こんな事考えるなんて…疲れてるのかな。
「キラ!何ボーッとしてんの?」
「あ、ごめん。何でもないよ。」
「いっぱい乗ろう!」
アゲハに腕を引っ張れ苦手なジェットコースターまで乗らされた。でも楽しかった。亜子もいつか連れて来たいな。
アゲハといるのに、つい亜子の事を考えてしまう。
「次はイタリアン行こ。」
「まじで、俺気持ち悪いんだけど…。」
「料理が出てくる頃には治るよ。」
「結構無茶言うよね。」
アゲハは笑いながら俺の背中を押している。アゲハは俺の事好きのかな?
好きなんだよな。考えてはいけないと思っていたが、態度を見ていればその答えはわかる。告白もされていないのに『ごめん』とも言えないし、俺は亜子が好きだしどうしたらいいんだろう。このまま様子見でいいのだろうか?
複雑な心境のままアゲハとご飯を食べた。
「ねえ、キラはどんな女の子が好き?」
「どんな?ん〜難しいね。こんな人って断言出来ないんだよね。いつの間にか好きになってるとかそんな感じだから。」
「そうなんだ。私はあるよ。」
「いいね。好みがはっきりしてて」普通ならアゲハはどんな人がと切り返すのだが聞くのが怖くて返せなかった。
「キラは私がクルスに入って嬉しい?」
「ああ、もちろん嬉しいよ。すごく良くやってくれてるし。」
「やった。褒められた。」
「感謝してるよ。」
「私こそ。この学園に来てくれてありがとう。小春川から守ってくれてありがとう。」
「そんな事、いいよ。」
「また、たまにご飯食べに行こうね。」
「うん。」心にチクッと針が刺さった。
ご飯はおごったがプレゼントは花にした。残るものは何となくいけないんじゃないかと感じた。アゲハは満足しているかのように見えた。
次の日に飛鳥と一緒にDevilsに行った。部屋に入りしばらくすると扉がノックされたので鍵を開けた。
亜子がヒョイっと顔を出し俺を確認するとニコッと笑った…くそっ相変わらず可愛いな。
「亜子おいで。」
うなずくと俺の横に座った。
「亜子、今日は飛鳥が話があるんだって。パソコンの所に2人で座って会話して。」
不思議そうな顔をして飛鳥が座っているパソコンの所へ行き横に座った。
俺に聞かれたくないのかパソコンで会話をしている…俺席立ったほうがいいのかな?何も言われないのでとりあえず仕事をしていた。
急に亜子がうなり声を上げて泣き出した…行こうかと思ったがそのまま会話が続いているみたいなので見守った。
パソコンを打つ手が止まると亜子は飛鳥に抱きついた。思わず立ち上がってしまった。
「キラ心配しないで。そう言うのじゃないから。」
「あ、ごめん。何でもない。話続けて。」
あの事だよな。亜子は多分嬉しさと悲しさと両方の気持ちが入り混じっているのだろう。2人の会話は2時間ぐらい続いていた。
ある程度仕事が終わりそろそろ2人きりにしようかと思って立ち上がると亜子が走って来て抱きついて来た。
「キ・ラ。」
前より大分流ちょうに言葉を発した。
「言葉出るようになったんだね?」
亜子がうなずく。
「す・ご・く・れん・しゅ・う・した。」
「やった凄いじゃん。」
「キラ、俺先に戻るわ。」
「え、何で?」
「2人で少し話せよ。ありがとな、黙って待っていてくれて。」
そう言うと部屋を出て行った。
「こんな短期間でよく頑張ったね。凄いよ。もっと練習すれば普通に話せるようになるよ。」
「う・ん。」
「ところで亜子そろそろ離れてくれる。なんか恥ずかしいから。」
亜子が首を横にふる。
「え、何で?どうした?」
「キ・ラ・スキ。」
顔が赤くなってしまった。飛鳥とどんな会話したんだ?俺も好きだけど突然すぎる。さらにギュッと掴まれて痛い。
「亜子痛いよ」それでも離してくれない。
「わかったよ。正直に言うよ。俺も亜子のことが好きだよ。」
そう言うとやっと離してくれた。
「脅迫されているみたいな感じなんだけど」と笑いかけると、亜子がポロポロ涙を流している。
「今日は何回泣くの?明日落ち着いたらもう一度飛鳥と3人で話しよう。」
亜子はうなずいた。泣いている顔も可愛い。嬉しいけどまだ言うつもりじゃなかったんだけどな。亜子を助けてからと思っていたのでちょっと順番狂ったけど、まあいいか。
「じゃあ俺行くよ。亜子も落ち着いたら部屋に帰りな。」笑いながら部屋を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます