第40話 飛鳥の記憶

「キラ、俺は幼い頃の記憶が一部分、最近までなかったんだ。」


「最近まで無かったってことは今は思い出したのか?」


「まあそうだ。きっかけはキラが腹を刺された事がきっかけだったんだけど、同じような状況を見た事があって思い出したんだ。」


「誰か刺される現場を小さい頃見たって事か?」


「ああ。俺は亜子の母親が刺される所を亜子と一緒に見ていたんだ。」


「亜子と一緒に?」


「あいつは幼なじみだ。多分話せなくなったのはその現場を見てからじゃ無いかな。俺は記憶を取り戻すために亜子に会いに来た。でも会っても全然思い出せなくて、まさかキラが刺されるシーンを見て思い出すなんて思ってもみなかったよ。」


「亜子は親が犯罪を犯したからDevilsに入れられているんだろ。親は何をしたんだ?」


「何もしていないよ。俺を育ててくれた人に聞いたんだが、今の大統領の不正を暴くため何か秘密を握っていたが、それを暴露されないために始末したって。」


「じゃあ亜子は口封じの為にここに入れられたのか?」


「多分そうだ。もし亜子が話せたら殺されていたかも知れない。でも証拠も見つかっていないから生かされているのかも。」


「飛鳥、育ててくれた人って…。親はいないのか?」


「いるけど、俺の記憶が戻ったら家族全員が危ないから、ある人の子供になったんだ。」


「そんな話、俺にして大丈夫か?」


「キラは絶対に言わないだろ。亜子の事好きなんだから。」


「え!」


「俺から見たらバレバレだよ。まあそれはいいけど、俺は亜子を幼なじみとして助けてあげたいんだ。協力してくれるだろ?こんなアホらしい学園も世間にバラして無くしたい。ここに入らないと官僚になれないって変だろ。ここの卒業生を操って自分の思まに支配しようとしている上の奴らをみんな叩きおとしたい。」


「俺たちにそんな力はないだろ。」


「大丈夫さ。俺の後ろ盾は副大統領だ。そしてキラ、お前は皇帝になった事で官僚になる可能性が出たんだから。」


「なんか大きな話になって来て、現実味がないよ。物凄く怖いんだけど…。」


「俺たちが卒業するまでに必ず助けよう。」


「出来るか不安だけど頑張るよ。」


「キラ、ずっと皇帝で居続けてくれ。」


 飛鳥が部屋を出て行った後ベッドに横たわる。飛鳥の話していた事が現実とは思えず戸惑っていた。でも亜子が罪が無いのに入れられているとすると、それは助けなければならない話だ。もしうまく助けられれば俺は亜子と一緒に普通に学校生活を過ごせるかも知れない。


 アゲハは毎日のようにキラを誘っていたが全然相手にしてもらえなく、最初は仕方がないかと諦めていたが、段々ムカムカして来た。


 私、モテるんだよ。放っておいたら他の男に取られるんだから。とは思いながらも結局キラが好きな事はわかっていた。


 あ、キラだ!

 キラが飛鳥と歩いてきた。


「キラ、今日は絶対私と一緒にご飯外に食べに行こう」キラの腕を引っ張った。


「アゲハ、ごめん今日は飛鳥と一緒に用事があるんだ。」


「嫌だ。いつも断るじゃない。今日だけは嫌!私誕生日なんだよ。」


「あ!そうか!そうだよな。」

 アゲハが涙ぐんで怒っている。


「誕生日って実家に帰っていいことになってるのに帰らなかったんだな。じゃあ飛鳥も一緒に…。」


「嫌、キラと2人がいい。」


「え。」


「いいよキラ俺1人でとりあえず行ってくるよ。お前アゲハと行ってやれよ。」


「あ、ああ、うん。」


「じゃあアゲハ行こう」学園の外に向かって2人で歩き出した。


 キラ…あいつだけモテやがって。なんかムカつく。


 飛鳥は1人でDevilsの皇帝の部屋へと向かっていた。キラが皇帝になってからはかなりこちらも穏やかな状況になっていた。


「キラの手柄だな。」


 扉の鍵を開け中へと入った。しばらくして扉をノックする音が聞こえたので遠隔で鍵を自動解除した。


亜子が中へと入って来た。キラがいる時に話をしようか…。それとも今…。多分亜子はかなり動揺するだろう。亜子がキョロキョロと辺りを見渡していたので声をかけた。


「今日はキラは来ていないよ。用事で来られないんだ。」


 わかりやすくがっかりしている。お互い好きなのにじれったいな。アゲハと会っていることを知ったら傷つくな……いや殺すか?


「明日は来られると思うよ。」


 そう言うと、亜子はうなずき部屋を出て行こうとした。


「亜子」思わず呼びかけてしまった。亜子が振り向く。言おうとしたが勇気が出なかった。


「ごめん。何でもない。明日な。」


 不思議そうな顔をして出て行った。話したらどんな反応を示すのか…俺だけ普通に暮らしていた恨まれるだろうか。明日キラのいる時に話そう…俺、結構小心者なんだな。

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