第35話 最終試験
最終試験 実技 個人戦
今回の個人戦は射撃と格闘が合体していて、射撃は当たった所に色がつく弾、格闘はいつもと同じで、当たればカウントされて攻撃を受けた数の少ないものが優勝となる。皇帝は射撃が得意だと言っていたな。
このルールは皇帝に有利かもしれない。でも俺も亜子に射撃を叩き込まれた…自信はある。亜子を救いだすためにも俺は皇帝に勝たなければいけない。
最終で残った人数は50名だった。
通常の3倍の大きさの倉庫、1階フロアに障害物が沢山置いてあり、隠れられる所はいっぱいある。目隠しをされ所定の位置にに連れて行かれ座らされた。
皇帝は誰かに守られ最後まで残るだろう。俺と飛鳥も絶対に残らなければいけない。
ブザーが鳴り響く。今から30分間の戦いが始まった。
アイマスクを取ると倉庫の大きな入り口から見て左端の角の方にいることが分かった。
打ち合う音が聞こえて来た。
まだ始まって大して立っていないのにもう撃っている…早いな。
玉は10発しかないので無駄には出来ない。物陰に隠れ様子を伺う。
飛鳥はどこのポジションから出て来たのだろうか。小さな声で俺を呼ぶ声が聞こえた。
「キラ!キラ!」
声のする方を見るとこの前、飛鳥とペアを組んでいた三田だった。素早く走り隣に座った。
「俺たちキラと飛鳥を援護するから。」
「俺たち?」
さっき三田がいた所に5、6人、いるのが見えた。
「飛鳥の方にも同じぐらいの人数が行っているはずだ。」
「すげえな。でも何で?」
「俺ら今の皇帝嫌いなんだよ。何となくだけどキラと飛鳥ならまともな学校になりそうでさ。俺たちの為にも絶対なってくれ。」
「ああ、必ずな」と笑った。
「皇帝と手を組んでいる奴もいるだろうから絶対に油断するなよ。」
「分かってるさ。まずは10発使い切らせたいな。」
「おい!三田!囲まれたぞ。」
「はえーな。もうかよ。」
「いくぞキラ。」
飛鳥は倉庫の丁度真ん中あたりの段ボールの陰にいた。
さて皇帝はどこにいるのか。どうせ取り巻き連中と一緒にいるんだろう。多分キラと俺はすぐに一緒になれないように遠い所に配置されたはずだ。周りは敵だらけか?
すぐ後ろに人の気配がした。とっさに伏せる。
自分の目の前の段ボールに銃弾の弾の白い塗料が付いた。後ろを振り返り逃げながら狙った奴を撃って色を体につける事に成功した。会場はブルーライト一回塗料が付けば見つけるのはたやすい。すぐに近づき後ろ蹴りをして倒した。そして周りをうかがいながら移動して行った。飛鳥の後ろを音もなく付いていく者がいる事を飛鳥は気がついていなかった。
キラの所に次々と戦いを挑みに来るが、他のメンバーにことごとく倒され、キラの所までたどり着けないうちに終わっていた。
「さすがに残っているだけあるんだな。みんな強いな。俺本気で来られたら負けそうだな。」
「筆記のテストがキラより良ければとっくにキラなんて倒してるさ。皇帝になれる確率がないから手伝っているだけだ。」
「なるほど、それなら納得が行くよ。」
本当は何となくいい奴みたいに思えるからだけどな。まあ言わないけど。
みんなのおかげで体力を十分に温存できた。飛鳥はどこだろう。あいつの事だから倒されているわけはないとおもうが…。
多分皇帝は一番奥あたりにいるだろう。あそこは暗くて一番見つかりにくい。何人ぐらい減ったのだろうか。
ライト?周りからこちらに眩しい光が集まる。こんな道具使うのは禁止のはずだ。卑怯な真似しやがって。いきなり明るくされて目が追いつかない。
「飛鳥もう囲ったぞ。諦めて出てこい。」
行くわけねえだろ。ふざけんな。
いきなり横に人の気配がした。まだよく見えない…やられる。覚悟した時にいきなり何か顔に付けられた。
「飛鳥、目を開けろ。」
目を開けると顔にサングラスをかけられていた。
「助かった。サンキュ。あれ?お前、黒の部下だろ?」
「意外、俺の事知ってるんだ。なんか人に興味なさそうなのに。」
「顔ぐらい覚えるさ。何でここにいるんだ?」
「皇帝の命令で飛鳥とキラを倒せって言われてるんだど、黒があいつは皇帝には相応しくないから逆に2人を助けろってさ。一緒に行動しようと思ったけど、敵だと思われたら攻撃されそうだったから、こっそり後ろに付いていた。」
「全然気がつかなかった。あんたが敵なら間違いなくやられてたな。」
「まあな。でも俺は皇帝になる器じゃないし、忍びみたいな感じがあってるのさ。あいつら8人いるぞ。一緒に行けるか?」
「当たり前だろ。あんな奴らに負けるわけねえし。」
「俺は右から。飛鳥は左からな。行くぞ。」
2人で一斉に飛び出す。うまく段ボールを使って弾はよけた。拳銃を取り上げると弾を落とし遠くに放り投げた。こいつら意外に強い。さすがに勝ち残った奴ら3人相手はキツかった。
その時銃弾が3人にあたり、一瞬固まった隙に3人を蹴り飛ばした。
「おいおい手加減なしかよ。こいつら気絶してんぞ。」
「キラ!」
「と、仲間たち。」
周りを見るといつの間にか10人以上の人が集まっていた。さっき俺を囲んだ奴らはあっという間にやられていた。
「わりい。探すのに戸惑った。でもあの眩しいライトのおかげで居場所がすぐ分かったよ。あいつら馬鹿だな。ここですって教えてくれているようなものなのにな。」
「こっちはとりあえず17、8人は倒した。」
「5人。」
「俺は3人。」
「飛鳥すげーな、こんな短時間で1人で5人も倒したのかよ。ところでそいつ誰?」
「ああ、こいつは皇帝の回し者。」
「え!」
「だけどこっちに付いてくれた奴。」
「脅かすなよ。」
「うちの数を引いてもあと数人だけど、皇帝側には何人いるんだ?」
「俺入れて6人だったはず。」
「そうか。じゃあもうそろそろ皇帝に近ずいてもいいかもな。」
「じゃあ行こうぜ。この人数いれば皇帝の取り巻きは多少多くても倒せるだろ。」
視界の良い中央の広場に出て、奥へ大勢で歩き出した。真正面に皇帝の姿が見える。
樽の上に座り下を見下ろしている。あんなに卑怯な手を使っていたのに威厳はあるんだな。
「来たな。2人とも。こんなに大勢で卑怯な奴だ。」
「あんたと戦うのは俺だけだ。後のみんなは悪いけどそっちを頼む。」
「飛鳥と2人で来るかと思ったけど、意外に勇気があるじゃないか。」
「飛鳥がやれば勝つとは思うけど、俺が勝たなくちゃ意味ないんだよ。みんなの為にも。」
「カッコつけやがって、後悔するなよ。来いよ。」
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