第31話 仕組まれたペア
「よう東金。」
「キラ君。俺とペアって何で?筆記テスト1位だったんでしょ。実技で俺とだなんて…足を引っ張っちゃうよ。」
「そんな自信のない事言うなよ。なったもんはしょうがない。勝ち抜くぞ。」
「無理だよ…俺。」
「裏を返せばチャンスだぞ。虐めた奴を見返してやろうぜ。大丈夫だよ。俺は相当強いから大丈夫。東金は何か得意な事はないのか?」
「得意な事?1つだけ。」
「お!」
「攻撃を交わすのは得意だよ。」
「それはありがたいよ。俺は攻撃に集中すれば良いんだから。必ず何かあっても絶対に助けるからそれまでこらえて逃げてくれ。」
「わかった。頑張るよ。」
「おう!行くぞ。」
開始のブザーが鳴る。実技が始まった。
場所は同じだが中のレイアウトは変わっていた。今回は3階からのスタートだ。他の扉から誰も出てこないと言うことは3階には東金と俺だけなのか?
ブザーがなった後は1分以内に出なくてはいけないので、いればもう外に出ているはずだ。
「東金、背中合わせになってゆっくり進むぞ。人が見えたら大きな声を出さずに教えてくれ。」
「分かった。」
5組いるはずなのに、あたりは静まり返っている。みんな身を潜めているようだ。静かすぎて不気味で気持ち悪い。戦わないとポイントにならないのに何で動かないんだ?
「おーい。神城、東金出て来いよ。」
下から声が聞こえた。手すりから下を見ると俺たち以外のメンバー8人が1階に集まっている。
「戦おうぜ。」と言って笑っている。
「みんな俺を虐めている奴だ。何で全員同じリーグに…。」
「そんなの簡単だよ。2対8で戦わせる為だ。俺を潰すためにな。東金は巻き込まれたんだな。悪いな。」
「何でキラ君を潰すの?」
「皇帝にならせないためだよ。俺が邪魔だと思っている奴がいるって訳だ。でも大丈夫。東金がひたすら逃げてくれれば8人ぐらいなんてことはない。逃げられないように3階から始めさせたのが奴らの失敗だったな。階段を全員一度には登れないだろ。」
「何、2人で話してんの〜。3階だからすぐには攻めれないって思ってる?」
その時一本の弓矢が3階に向かって放たれた。
「弓矢!」特殊な作りで当たれば体に2センチぐらい刺さるような仕組みになっている…殺したくはないが怪我をさせたい的な感じか。
「武器は使ってはいけない事になっているはずだ」
「これはおもちゃだから武器じゃないだろ。ほらもう一本。」
結構な勢いで矢が飛んできた。
「東金、アーチェリー得意って言ってたよな。」
「う、うん。」
「今飛んできた矢、これから飛んでくる矢も全部集めといて。俺がアーチェリー奪うからそしたら東金はそれで攻撃してくれ。ある意味チャンスだ。」
「分かった。」
「来ないなら行くよ。」
下を覗き込むともう一本矢が飛んできた。良い調子だどんどん打たせないと。
「おい、あんまり打つなよ。矢は20本しかないんだぞ。」
「そんなに打たないで終わるから大丈夫さ。」
矢は20本…アーチェリーを持っているのは1人だけ。先に打ちに来るだろうからそいつ1人を捕まえればそれで終わりだ。
「東金、その木の机、そこに立て掛けて。それをダミーにするから左の柱の後ろに隠れて待ってて。」
先に上がってくるのはアーチェリーを持った奴。そいつさえ倒せてしまえば行ける。余裕で話をしながら上がってくる。俺を舐めるなよ。
アーチェリーを構えた奴が螺旋階段の入り口に見えた。そいつがダミーで置いておいた木の机に矢を放った。
こいつどんだけ臆病なんだ。撃ってしまったら次のをセットするのに時間がかかるだろに…伏せて待っていたので相手が気がつくよりキラが早かった。
アーチェリーをつかんでそいつと共に投げ飛ばした。部屋の奥に転がる。勢いでアーチェリーが手から離れた。弓矢はバラバラと下に落ちた。東金は移動して投げ飛ばされた男子を自分が入ってきたドアの向こうに押し込んだ。会場から出れば失格だ。とりあえず1人いなくなった。アーチェリーを掴み木の机の陰に入った。
「ナイス!」
キラ君に褒められた。嬉しくてたまらなかった。それにしてもあの投げ飛ばした力…あんなに細いのに凄い。
まさかアーチェリーを持った奴がいなくなると思っていなかったのだろう。おどおどし出し、その後はなんて事ない。弱すぎる。全員に一発入れるともう襲っては来なかった。
「東金出てきて良いよ。」
「うん。」
「せっかくアーチェリーの腕の見せ所だったのに、こいつらが弱すぎて活躍できなかったな。」
「違うよ。キラ君が強すぎるんだよ」一発しか当てていないのに6人気絶してるよ。」
「そうだな。気絶してないお前答えろ。袋叩きにしろって誰に頼まれた?」
「だ、誰だかは知らないけど、3年に神城を潰せば優遇してやるって。東金と組むって聞いたから楽勝だと思って。正式メンバーはテストがダメだから無理だけど、クルスに関わる所に入れてくれるって言われて…入れば将来官僚になる近道だし、親も喜ぶから…。」
「お前らみたいな卑怯者が官僚なんかになって世の中よくなる訳ないだろ。まず自分が弱いって事自覚しろよ。このままだとお前らクズだぞ。自分で扉から出ていけ。」
会話中に目が覚めた1人が起き上がりキラにつかみかかろうとしていた。アーチェリーを持った東金が矢を放った。背中にあたり勢いよく倒れた。
「うわ!ビックリした。ありがとう東金。助かったよ。けが人出したくなかったけど仕方ないか。あれ?矢が刺さってない。」
「矢を逆さまにして撃ったよ。俺も怪我させたくないし。」
「優しいな東金。俺も加勢するから全員殴れば良いのに。」
「ふふ。そうだね。じゃ遠慮なく。」
そう言った瞬間全員起き上がり、扉から走って出て行った。
「弱すぎ。」
「そうだね。」
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