第30話 ペア決め

 皇帝は自分の部屋で結果を見ていた。


 キラめ、目障りな奴だ。さっきの結果はそのまま親へ送信されるので、負けた事を見た父親から電話が来て「実技で負けたら家には帰れないと思え」と怒鳴られたところだった。


 キラにあった時から、なんとなく嫌な予感はしていた。実技で潰さないと俺は皇帝の座を落ち残りの6ヶ月間惨めな日常を送ることになる。皇帝を落ちた時の周りの反応は酷い事が多く、俺は特に好き勝手やって来た所があるから敵も多い。考えただけでもゾッとする。この生活を守るために、キラを叩き潰さなければ。


 飛鳥抜きでのクルスの会議が行われていた。


「飛鳥は裏切り者だ。キラと一緒に皇帝の座を狙っている。俺はそれを阻止したい。お前らも今まで俺に世話になっただろ。金も与え、好き勝手にやらせていた。キラが皇帝になったらそんな事もさせられない。銀と赤は今回テストでも落ちているよな。本来はクルスに残れないが、キラを阻止してくれたらクルスに残れるように取り計らうから、協力をしろ。いいな。」


 銀は女好きで好きになった女は無理やり自分の物にしていた。 

 女が嫌がっても自分がクルスだと話すと怖がって従う…顔が悪いのは自分でもわかっている。

 クルスでなくなったら今までみたいに女と遊べなくなる…それは絶対に嫌だ。皇帝なんて誰でもいいが、こいつなら何をやってもきちんと従っていれば何も言わない。キラがなるよりこいつの方が楽だ。キラを皇帝なんかにはさせない。


 赤は女好きでいい加減な皇帝が嫌いだった。全然学校を取り締まらず、今の現状はいじめや差別が横行していても何も変えようとしていない。

 こんな奴が将来官僚になんてなったらそれこそ国が終わる。自分の将来を考えて仕方なくクルスにいたので、キラが皇帝に変わるのは大賛成だった。協力して皇帝を叩き落とし、見返りとしてクルスに残れるように話してみよう。 

 Devilsも含めこの学校を良い学校にしたい。


 実技はこの前と同じく最初はペアで戦い、勝ち抜くと個人戦になる。飛鳥と組むことになっているので心配はしていなかった。


 当日組み合わせ表を見ると自分のペアが飛鳥ではなく東金幸平となっていた。

 リーグも飛鳥とは別れた。先生に質問をしてみたが俺が東金と組むと届が出ていたと言われ唖然とした。皇帝が裏で手を回したのだろう。東金…どこかで…あ!あの虐められていた生徒だ。

 ふーんそう言う事か。弱そうだから俺につけたんだな…となると相手はもちろんあの虐めていた奴らだろうな。面白いじゃないか。今まで亜子に教わった事全部出してやる。


 飛鳥のペアは同じクラスの三田だった。あまり話した事もなく全然性格もわからない…ただ一つわかる事はチャラいと言う印象だけ。勉強もあまりしていない感じに見えるけど実際はどうだかはわからない。なんで三田と組ませたのだろう?


 競技場に入ると緊張感が高まる。


「三田、よろしく。」


「おう、飛鳥じゃん。よろしく。飛鳥が強いから安心したよ。」


「三田は誰とペアを申請したんだ?」


「俺?俺は誰も申請してねえよ。誰でもいいって書いた。」


「そうか。だから俺とになったんだな。」


「飛鳥はキラと組むんじゃなかったのか?」


「そのはずだったんだけど組めなかった。」


「ふーん。キラが1位をとったからか?皇帝になる可能性があるからか?」


「どうだろうな。」


「今更隠すなよ。だから邪魔されてんだろ。あ、俺別に皇帝の回しもんじゃないから。皇帝が気に入らないだけだ。もし飛鳥が本気でキラを皇帝にする気になっているなら手伝うぜ。」


 いきなりの事でびっくりした。なんの恨みがあるのだろう?


「俺は相当強いぜ。まあ誰も知らないと思うけどな。中学時代、空手世界チャンピオンだ。大怪我して辞めたけどな。」


「なんでまたやらなかったんだ?」


「また怪我したらと思うと恐怖でさ。でも仕返ししてやりたい事が出来たから最近は毎日訓練していた。だから大丈夫だ。」


 こいつチャラいだけの奴じゃなかったんだ。


「何の事で仕返しをしたいんだ?」


「俺さ、頼まれてある人のコーチやってたんだよ。すごく一生懸命でさ…チャンピオンになって欲しかったんだよ。でもそれはもう叶わなくなってしまった。覚えていないか?飛鳥も見ているはずだ。実技の試験中に足を折られた奴がいただろう。足粉々でもう一生歩けないかもしれないって言われてる。」


 銀と黒に足を折られた奴がいた…そんなに酷い事になっていたなんて。


「見ていたよ。いたな。」


「俺はあいつの仇を取る!」


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