第29話 筆記テスト 結果
「アゲハそのまま聞け。後ろを向くなよ。」
「うん。何?」
「皇帝にキラのことがバレたぞ。」
「バレたって何が?」
「お前がキラを好きだって事だ。」
「え、何で?私告白とかしてないよ。」
「だから言っただろバレバレだって。誰かが多分皇帝に密告したんだ。その辺にクルスの部下は隠れているからな。」まあ言ったとすれば黒あたりが怪しいが。
「ねえ、私が好きだってキラにもバレたの?」
「まあな。キラはアゲハから聞いていないから勝手に思い込んでいると思っているけどな。」
あいつ勝手に人の気持ちをバラしてふざけんな。人から伝わるなんて最悪だ。
「飛鳥、キラと話せないかな。自分で言いたい。」
「今は見張りが凄いからちょっと待ってくれ。そのうち機会を作るから。」
とは言ったものの機会が作れるかは自信がなかった。
外に出たところで監視カメラはあるし、クルスの手下もその辺にいるはずだ。
クルスは分かるが手下まではわからない。もしかしたら同じクラスにもいる可能性もある。アゲハが告白なんてしたらそれこそ決定的だ。
考えてみたらもし仮に試験前に振られでもしてアゲハは大丈夫なのだろうか?
テストまで待たせるのが一番だが。でもアゲハはキラに間接的に知られたのが嫌なのだろう。気持ちはわかるからアゲハのためにやってあげたいが難しいだろう。
キラは部屋でため息をついていた。シューケットのジムで練習していても落ち着かない。
全然Devilsに行く事が出来なってから亜子の事が気になって仕方がない。
ちゃんと食べているのだろうか?最近飛鳥も行くのを禁じられているので様子が全然わからない。亜子に初めて会った場所に行ってみたが、前は鉄柵だったのに鉄の門に変わっていて中を見ることも出来なくなっていた。
あの襲った男を捕まえたあとだったのは救いだった。こうなると俺は皇帝になって会いに行くしかなさそうだ。でも皇帝は俺を敵対視しているから勝ち上がるのは容易ではない。でもそれしか方法はない。
亜子はキラに会えなくなり集中力が落ち、最近は食欲もなく怪我だらけで痩せる一方だった。飛鳥も来ないのでキラの様子も聞けず、なぜ2人とも突然来なくなったのか分からなかった。この前の教官の件で何かあったのだろうか。キラに会った門まで行ってみたが外が見えなくなっていた。寂しくてたまらなかった。誰も話をしてくれる人がいない…1人だ。
ここに入って2回目の試験の日が来た。
筆記試験は答案用紙がコンピューターで管理されている為、その日の午後3時には結果が電光掲示板に表示される。今回は本気でやった。手応えがあったのでうまくいけば1位になれると思っていた。
皇帝は果たして何点とっているのか?筆記試験に関しては不正は効かない。当日に試験の答案がそれぞれのパソコンに送られてくる。不正は許されない。不正が見つかるとDevilsの地下行きになる。そうなると一生出れないかもしれない。そんなリスクを犯してまで不正をする奴はいないと飛鳥から聞いている。格闘に関してはこの前のテストで見た通り、潰される可能性はあるので、そちらの方が気をつけなければならない。
電光掲示板に載るデータはそれぞれのパソコンでも見られるようになっている。もうすぐ午後3時…緊張する。どうせ1位だと思っていたから、今までテストなんかで緊張したことなんてなかった。こんなにドキドキするのは初めてだ。1年、2年、3年と問題はそれぞれ違うが、合計点数で順位が決まる。
みんなパソコンの前で画面と睨めっこをしている。飛鳥は俺の横に来て一緒に画面を見ていた。「このクラスではまた飛鳥が一番じゃない?」1位は誰だろうとみんなが噂をしている。
結果が表示された。教室がざわつく…。
1位 神城キラ 500点
2位 小春川共生 487点
2位 高位 飛鳥 487点
:
:
6位 風生アゲハ 462点
「すげえキラが満点だ!」「飛鳥も同率2位だ」「アゲハ凄い!」
「このクラスに10位以内が3人もいるぞ。」
「キラが皇帝を抜いてる!」
教室中が大騒ぎになった。
「キラやったな。満点なんて凄いな。」
「まさか満点を取れるとは思ってなかったけど、今回勉強したからちょっと自信あった。」
「お前って本当に天才なんだな。」
「まあな。あとは実技だな。」
「ああ、お前絶対狙われるからな油断するなよ。」
「お互いに死にたくないな。」
アゲハはホッとしていた。とりあえずキラが皇帝を上回ってくれた。今までは皇帝のいるクルスに入りたくなかったから、テストも実力を出さなかった。
でも今回はキラが皇帝の座をとってくれると思っていたので本気を出した。クルスに入るには10番以内に入らないといけなかったが、10位以内だと入ることもほぼ強制的だった。
キラが皇帝になる前提で頑張ったが、これで実技で皇帝に負けてしまっても、私はクルスに入ることになるだろう。アゲハにとっても賭けだった。
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