第27話 飛鳥………

「おにぎり食べたんだな。よかった。ここにいたらまずいから、早くそれ持って部屋に戻りな。一人にさせちゃうけどごめんな。」


 俺にギュッと抱きついてきたので頭を撫でた。そして亜子は走って出ていった。


「さてこいつをどうしようかな。誰に言えば処分してもらえるんだ?とりあえず飛鳥に言わないと。」


 服を脱がし、全裸にし、縄でグルグル巻きにして廊下においた。


Devilsの門番にお菓子を渡し、今日来た事は内緒にしてくれと頼んだ。Devilsではお菓子も貴重なので嬉しそうに頷いて受け取った。シューケットに戻ると急いで飛鳥の部屋に飛び込んだ。


「何だよキラノックもしないでいきなり入って来て。」


「ごめん。急用なんだ。」


「亜子が教官が襲われそうになってさ、腹が立っちゃって、そいつ蹴り倒して気絶させて縄で縛ってぐるぐる巻きにして逃げて来た。」 


「ちょっと待て、状況が掴めない。Devilsに1人で行ったのか?」


「うん。亜子が心配になってロッカーに置いて来たものが無くなっているか確認しに行ったら、そこで亜子が襲われていて助けたんだけど、そいつ全然悪びれてなくてアッタマきたから手を出した…ごめん。」


「それで亜子は無事だったのか?」


「ああ、泣いていたけど襲われる前だった。」


「とりあえずよかった。わかった。後の処理はしておく。女の先生にカウンセリングもしてもらうよ。」


「そうしてくれると助かる。後の処理…?何か手があるのか?」


「まあな。大丈夫さ」父に頼めば教官ぐらい簡単にひねりつぶせる。


「悪いな迷惑かけて。」


「いや、いいさ。俺がその場にいたら殺してるからな。」


 平気な顔して怖い事を言う…でも飛鳥ならやりそうだ。


「怖いよ。」


 飛鳥はフッと笑うと

「冗談だよ。もう部屋に行けよ。」


「あ、うん。」

 

 自分の部屋に戻るり、飛鳥の顔を思い出し、揉み消せるって…飛鳥って一体何者なんだ?


「本気で殺さないよな」ちょっと心配になった。

 

 アゲハは話しかけたくてもキラに話しかける事が出来ずにイライラしていた。最近はよく女子に話しかけられている…キラは人懐っこいので、みんな話しかけやすいみたいだ。女の子が近づくたびにイライラして、その度にキラが皇帝になるまでの辛抱だと耐えている。キラもキラだ…あんなに仲良く話す事ないのに!


「ねえキラって猫っ毛だよね。触っていい?」


「そんな事初めて言われた。別にいいけど。」


 触ろうとしているのを見て我慢できずに立ち上がり触ろうとしていた女の子にワザとぶつかった。


「あ、ごめん。」


「アゲハ危ないよ。」


「さっき千奈美が呼んでたよ。」


「え、本当に?」そう言うと廊下に出て行った。私のキラに触るな!追い払うと席に戻った。


「見え見えだよ。アゲハ。」


 後ろから声が聞こえた。飛鳥はアゲハの後ろの席だ。


「うるさいな。キラに話しかけてはいないんだからそれくらいいいでしょ。」


「好きだから女の子と話なんてしないでって感じか?」


「うるさい!飛鳥の意地悪。ねえ、学校が終わるとキラはどこに行ってるの?」


「さあね。知らないよ。」


 亜子と毎日会っている事は言えないな。それこそキレそうだ。もしキラが亜子のことを好きだったらアゲハはどうするんだろう?キラは誰にでも優しいから好きになった女の子は大変だな。俺ならアゲハだけに優しくするけどな…。

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