第23話 不安
「キラ、出かけてきたの?」
「よくわかったね。」
「窓から見えた。どこに行って来たの?」
「なんかカフェに連れて行かれた。お洒落すぎて気が引けた。」
キラは自分がかっこいい事に気がついていない。
「確かにキラにカフェって合わないね。」
「だろ!でもまあこんな機会でもない限り行かないだろうから良い経験になったよ。」
「今度は私とも行こう。」
「ああそうだねな。俺が皇帝になったら行こうな。」
「そうだよね。今一緒に出かけたら目立ってしまうもんね。」
「次はなるからもうしばらくの辛抱だよ。」
「うん。もう皇帝に呼ばれるの嫌なんだ。」
「だよな。上手くどうにかわせればいいけど。」
「うん。キラ心配してくれてる?」
「もちろん。」
「じゃ頑張る。またね。」
「またな。」
ちょっとだけ安心した。あの子達と何かあったわけでは無さそうだ。ただああやって誰の目も気にせずにキラと出かけられるのが羨ましくもあり悔しかった。
今日も出かけないかと昨日の女の子に誘われたが、今日は練習がしたかったので断った。昨日カフェに行った時、亜子にお土産を買って来ていた。白と赤のストライプの棒にピンクにコーティングされたドーナッツが付き、さらによくわからない黄色のリボンのストラップが付いていた。これが良いかはわからないが、昨日の子たちが可愛いいと言っていたので買ってみた。
練習場に入ると直ぐに亜子が袋に気が付き指をさした。
「これ?」
亜子が「うん、うん」と肯いている。
「亜子に買って来た」と手渡した。
亜子が袋を開けると目が大きくなった。
「可愛いだろ。女の子に人気らしいよ。食べてみなよ。」
亜子は嬉しそうに取り出し、ドーナツを口に含むと嬉しそうに笑った。
「美味しい?」
「うん、うん。」とまた大きく頷いた。食べ終わるとストラップを自分の持っているホルスターにつけた。拳銃に黄色いストラップって…まあ喜んでいるからいいか。
「また買ってくるよ。」
亜子が嬉しそうだった。いつかお店に連れて行ってやりたいな。亜子にしてもソルにしても悪人ではない。親が犯罪を犯しただけで子供まで…この制度も直さなきゃいけない。そもそも駒になる人間なんて作っちゃいけない。
「亜子、ストラップ外せ」飛鳥が言った。
「え、なんで?いいじゃないかストラップぐらい。」
「見回りでここに来ている事になっているのに亜子がこれを付けていたら誰にもらった?ってなるだろ。そうなったら俺たちの計画はなくなるんだよ。キラが皇帝になったら制度を変えてそれから亜子にあげろよ。」
その話を聞いていた亜子がストラップを外して俺に渡した。
「俺が預かっておくから、いつか付けような。」
亜子は目を合わさずうなずいた。
最近アゲハを呼んでも何かしら理由をつけて来ない事が多い。今日は来ると言っていたので夜景でも見に行こうと思いヘリコプターをチャーターした。久しぶりに島から出られるんだ嬉しいだろう。
皇帝再就任祝いも含めホテルのレストランも予約した。屋上のヘリポートで待っていると、アゲハが現れた。お洒落をして来なと言ったのに普通の服だった。まあいいかホテルで何か似合うものを買ってやろう。
「来たな。今日は皇帝就任祝いだ。レストランを予約したらから行こう。」
アゲハの手を掴むとヘリに乗せようとした。アゲハは手をゆっくりと離した。
「一緒には行けない。皇帝になったお祝いしてあげられなくてごめんなさい。」
「俺は皇帝だぞ。この学園で一番の男なんだぞ。」
「一生懸命考えたよ。好きになれるかなって。でもごめんなさい。やっぱりあなたが彼氏になる事は想像が出来ない。」
「他に好きな奴がいるのか?」
「いないよ。でも無理なんだごめんなさい。」
「もう誘うのもダメか?」
「うん。もうやめてほしい。」
「わかったいいよ。もう行けよ。」
アゲハは戻って行った。イライラしているところに運転手が降りて来てどうします?お一人で行かれますか?と聞いて来たので思いっきり蹴り飛ばし部屋に戻った。
アゲハは部屋に入るとため息を大きくついた。言った。とうとう言った。ずっと言いたくても怖くて言えなかった。でも今はキラがいる。それだけで勇気が湧いた。
キラに被害が行かないように好きな人はいないと言ったけど大丈夫だよね…バレないよね。皇帝とは言え高校生だ。傷つけたかな…でも本当の気持ちだから仕方がない。
皇帝、小春川共生は部屋に入るとイライラが止まらなくなって来た。
いつもは女の子を呼んでチヤホヤされるのが気持ち良かったが今日は別だ。アゲハもその内こちらに向くだろうと高を括っていたので、まさかふられる事になるなんて思っても見なかった。綺麗だからって調子にのりやがって。俺は皇帝だ誰も逆らえないのに…振り向かないなら潰すまでだ。
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