第21話 HQテスト

 射撃の練習が終わり休んでいると飛鳥が

「キラちょっといいか?」

「ああ、何?」

「今回のテストで皇帝になるのは見送ろう。」

「え、なんで?俺の実力まだ足りないとは思うけど、いい線行っていないか?」

「確かに伸びているけど、今だとまだ皇帝を少し上回っているだけだ。その日に調子が悪ければ負ける可能性もある。ギリギリで負けたら次は間違いなくキラを陥れようと企む。皇帝の交代は油断している所でやらないと絶対に邪魔が入る。それは避けたい。」

「なんかアホそうなのに、そんなに強いのか?」

「ああ、頭の良さはキラが勝っているけど、あの体格だろ格闘技は強いよ。まあ裏で金が動いてるけどな。」

「まあ迫力はあったよな。裏金…面倒だね。わかったよ。今回のテストは大人しくしているよ。」


 その夜、クルスが集まり会議をしていた。


「もう少しでテストが始まる。今回も俺は皇帝になるだろう。お前らもそのままメンバーにしてやるから俺に協力しろ。誰か俺より上回りそうな生徒はいないか?」


「3年には見当たりません」黒が答えた。

「2年に板倉アオトと言う者がおりますが、次は皇帝になると言っていたようです」銀が伝えた。

「そいつはほっといて大丈夫なレベルか?」

「一応潰しておいた方が良いかと。」

「じゃあ、他にもそんな奴がいたら、適当に足か腕を折っておけ。」

「わかりました。」

「他には?」

 聞いていてゾッとした。キラが脅かす存在と知ればキラは必ず被害を受ける。一発勝負で勝たせなくては。俺と一緒にクルスに入れば行動しやすくなるのか。それとも逆に目をつけられてしまうだろうか。アゲハも絡んでいるし、やめておこう。


 シューケットHQテストが始まった。日程は1ヶ月間。

 テストは1日で終わるが射撃と格闘が時間がかかる。

 学力テストは学年別だがその他は男女別全員参加になるので大変な事だ。テストは全部の回答が分かったが7割正解にしておいた。


 みんながどれくらい出来るか分からないから少し控えめにしておいた。格闘と射撃は6割ぐらいにしておくか。元々1学年80名程度、男子が半分いたとして40名、1から3年生まで全員で約120名。初めはペアで戦い抜き、半分に減った所で個人戦になる。外部から審判も来るらしい。どこまで贅沢なのか。ちゃんと公平にジャッジしてくれるのだろうか。ペアは自分で決める。飛鳥と組んで途中まで上がり個人戦で俺だけ負ける事を計画していた。


 初めは広い倉庫に見立てた部屋でペア5チームでランダムに戦う。勝ち上がるのは2チーム。同点の場合、筆記テストの良い方が勝ち抜く。戦い方は他のチームと組んでもいいし、その辺は自由だ。服にセンサーが付いていて20分間戦って殴られたり蹴られたりした回数で順位が決まる。約束事として思いっきり当てない事。表向きはあくまでも軽く当てる。まず相手の事を思って行動する奴なんてほとんどいない。


 倉庫は3階建てで、部屋もあり段ボールや椅子など映画で見るようなセットになっていて隠れる事も出来る。そんな倉庫が5つもある。5つとも中身は違うシチュエーションになっていて、中にはオフィス的になっているところもあるらしい…どんだけ金かけているんだ。失格になるとイヤホンから知らされる。


「なんか楽しそうだな。」

「気楽だなキラ。楽しくなるかならないかは相手次第だ。失格になってもいいから本気で殴ってくる奴が多いから気を付けろ。この競技で病院行きになった奴はいっぱいいるからな。」

「飛鳥も一緒だし、上手くやるよ。相手をあまり強く殴りたくないからな。」


 ブザーが鳴り試合が始まった。3階建ての倉庫の5つの扉が同時に開く。自分たちは薄暗い部屋の2階から出発だった。相手は顔を合わせるその時にならないと誰と戦うのかわからない。飛鳥と同じ方向へゆっくりと移動した。今はまだ気配も感じない。積み重なっている段ボールの隙間から様子を伺う…螺旋階段の所から隠れながら下を覗くと誰かか動いているのが見える。

 広くなったエリアに2人隠れもせず堂々と立っている…相当自信があるのか…相手から来るのを待っているようだ。


 飛鳥は広場の人物を見て、クルスの銀と黒だと分かった。あいつらと一緒か…仕組んだのか?基本クルス同士は落とし合いをしない。違うやつを狙った方がいいな。

「キラ、あいつらはいいから違う奴に行くぞ。」

「ああ。」

 歩き出した直後、上から人が飛び降りてきた。3階から出発した奴らか?寸前の所で避けて胸と足を攻撃した。軽く当ててポイントだけ稼いだ。戦い方を知らないのか、ただ力任せに殴り掛かってくる。これじゃ逆にすきだらけだ。ある程度攻撃を加えて足を引っ掛け転がした。その隙に階段を駆け上がり3階へ行った。そこにはすでに飛鳥も来ていた。

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