第20話 気持ち悪い

 今日もクルスの制服に着替え亜子が待つ射撃場に行った。


 最近亜子はいつの間にか近くに寄って来て隣にいたりする。少しずつ心を許してくれているのだろうか。でも毎回チョコレートを要求される。お菓子狙い?


 今日は亜子が相手で、ヒットすると色が付く弾丸で戦う。最初は亜子の弾丸を全然避けられず、終わった後体を見たら少なくとも10回は死んでいた。最近は2、3発当たるぐらいだ。まあそれでも死んではいるけど。


「じゃ行くぞ」飛鳥の掛け声でブザーが鳴り始まった。平日もかなり体を追い込むぐらい鍛えているので前よりかは体が動く。それでも亜子の後ろが中々取れない。

「キラもっと低く回り込め!。」飛鳥から指示が出る。

 やりたいけど出来ないんだよ!チクショウ。ちょっと油断した隙に頭の後ろに拳銃が突きつけられた。チェックメイトだ。また負けた。

「亜子は強いな。」

 近くに寄って来た亜子の頭を撫でた。その瞬間亜子の顔が赤くなった。

「えっ?どうした亜子?」

 お菓子を掴むとそのまま不機嫌そうに出て行ってしまった。」

「俺なんか悪いことしたのかな?気安く触ったのがいけなかったのか?」気をつけないといけないな。


 ちょっと気まずそうにに立ち尽くしているキラを飛鳥はじっと見ていた。亜子が気を許してくれるまで自分が空だと言うことは隠そうと思っていた。記憶を早く取り戻したいが、焦ってはいけないと言い聞かせていた。

「俺より早くキラの方が亜子の心を開く事ができそうだな。」


 テストまであと1週間、キラはかなり筋肉も付き、いい仕上がりになって来ている。ここで皇帝を落とせるか五分五分だ。今、ギリギリで皇帝に負けてしまうと、皇帝を脅かす存在として目をつけられてしまう。あと3ヶ月待って確実に皇帝より上回ったらの方がいいかも知れないと飛鳥は考えていた。3ヶ月後にはキラは皇帝だ。


  ひときわ豪華な扉の前にアゲハは立っていた。深呼吸するとノックをし扉を開けた。

 皇帝はアゲハが来ると立ち上がり窓際に立った。アゲハは入り口のそばに立っていた。

「御用ですか?」

「用?そんなもんあるわけない。顔が見たかっただけだ。アゲハ、そろそろクルスに入れよ。」

「特別扱いはいけませんよ。ここはテストの上位者だけが入れる場所です。」

「知ってるぜ。アゲハお前ワザとテストの点落としてるよな。そんなに俺と一緒になるのが嫌か?」

「そんな事あるわけないじゃないですか。実力が足りないのです。」

「ふーん。」

 皇帝がアゲハに近づく。顔が目の前に来る。思わず顔を逸らした。顎を掴まれ顔を正面に向かさせられた。唇が近づく…触れる寸前の所で皇帝が笑い出した。

「まあいいさ。そのうち自分から来るようになるさ。」


 アゲハは部屋を飛び出した。気持ち悪い…あんな奴に媚びを売っている女子が信じられない。デカイだけで顔だって全然格好よくない。早くキラ皇帝になってほしい!ここ最近は毎日の様に話しかけられたり触られたり、もううんざりだった。キラと遊びたいけど、皇帝に目をつけられたらそれも困る。あのスケベ!皇帝じゃなくなったら引っ叩いてやるんだから!!


 最近はDevilsで放課後を過ごす事が増え、亜子がいつも近くに寄ってくる。顔は可愛いけど、態度は女じゃねえ!ズボン履いているからいいけど、足は大股開くし、いっぱい食うせいで毎回差し入れを持って行く羽目になっている。言葉が話せないせいか、怒ると髪の毛とか引っ張ったり攻撃的になってなんか動物みたいだ。


 疲れて寝ている時が一番可愛い。でもそんな亜子を見るのが楽しくなっていた。最近教室で女の子に話しかけられるのだが、なんかクネクネしていて亜子に慣れてしまったせいで、ちょっとそう言う態度に引き気味になってしまう。ここにいるのが気楽でいいや。

 Devilsの一部しか見れていないのでここがそんなに怖い所には感じられないが飛鳥が言うには昼間の訓練は怪我人が出ない日の方がないらしい。そんな過酷な所にこの細い亜子が良く耐えていると感心する。

 

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