第18話 我慢できない

「いてて。」相変わらずキラの格闘と射撃の特訓が続いていた。

 射撃の動きながらの命中率は亜子のおかげで格段と上がった。格闘技も元々やっていたのでいい感じで成長していると思う。テストは自信があったので次の時に皇帝を落とせるかも知れないと思っていた。さすがに入ってすぐ1位になれるだろうか。伸びて来ているとは言え、まだ成長過程だ。でも女の子を取っ替え引っ替えして虐めなどを全然気にしないヤツが上に立つのも気に入らない…落としたい。

 

 いつもの様に飛鳥と昼飯を食べ終わり、教室に向かって歩いていると1人を寄ってたかっていじめているのを見かけた。

 校内での成績が下位の生徒に対してのいじめは続いていた。何度か止めようとしたが飛鳥に目立つから今は我慢しろと言われ仕方なく見て見ぬ振りをしていたが、あまりにも馬鹿みたいで声をかけてしまった。


「飛鳥。あの虐められてるヤツなんて名前だ?知ってるか?」

「え、東金幸平だけど?なんでだよ。」

 キラがが集団に近づいて行く。

「東金!何してんだよ。」

 その集団は振り返りキラを見た。

「お前誰だ?」

「俺が誰か知る必要ある?東金ほら昼一緒に食べるって約束してただろ。来いよ。」

「お前、こんな事して分かってんのか?」

「転校生だから知らねえよ。俺は東金と飯食うだけ。ほら昼休み終わっちゃうだろ。」

 キラは前に進むと目の前にあったガラスの窓を殴り付けた。ガラスは勢いよく飛び散り、殴った手からは血が流れ出た。東金を引っ張り連れ出した。虐めていた生徒は何も言わずにただ黙ってキラが歩いて行くのを見ていた。


 虐めていた生徒たちが見えなくなり気が抜けた。

「いってえ!!血が出てんじゃんよ。」

「そりゃ出るだろ。ガラスなんて殴ったら。」

「あ、あの助けてくれてありがとう。手、痛かったでしょ。」

「お前だって頭から血が出てんぞ。俺より重傷じゃねえか。」

「まあ、そうなんだけど。」

「とりあえず手当てするか。保健室行くぞ。」


 保健室に入ると先生は不在だった。

「俺が手当てするよ」飛鳥は薬の入った棚を探り始めた。


「東金、毎回あんな風にされてんの?」

「うん。俺弱いし、勉強も出来なくて争い事も嫌いだし。」

「でも嫌なもんは嫌だろ。そんな事される筋合いないだろ。」

「そうなんだけど、集団でこられると怖くて。」

「東金、次のテストで少しでも上に上がれそうもないのか?」

「僕、勉強向いてないんだ。昔から勉強も格闘技も無理だし。」

「じゃあお前の得意分野って何?」

「アーチェリー。ずっと好きでやっていたんだけど、この学校にその部活なくて。親にここに入るの嫌だって言ったんだけど、将来を考えて絶対に入ったほうがいいって言われたんだ。でもやっぱり入らなきゃよかったよ。」

「そっか。でもくじけるなよ。昼休みは俺んとこ遊びに来いよ。あと、お前と同じように虐められている奴ってまだいるんだろ?」

「うんいるよ。」

「そいつらも連れてくれば。」

「えっと、誘っても行けるかわからないけど言ってみるよ。じゃあ俺戻るね。」

「手当てしないのか?」

「大丈夫。ともかくありがとう。」

「おう、またな。」


 東金が出て行くと飛鳥はため息をついた。


「キラ、あんまり目立つことするなよ。目をつけられて皇帝の座を狙ってるって知られたら間違いなく攻撃されるからな。」

「分かってるよ。でもさ。ほっとけないだろあんな事されてんのに。」

「気持ちはわかるよ。でも今は我慢だ。すべては今の皇帝を引き摺り下ろしてからだ。」

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