第12話 ソルとの練習
「青の使いお久しぶりです。」
出てきたのはガッチリとした体型の大きな男だった。腰までのロングヘアを後ろで結び、顔に大きなナイフ跡のような傷がある。
「ソル、元気だったか?」
「はい、今の所無事です。」
会話が怖い。今のところ無事って…。
「そちらが話をしていた方ですね。」
「ああ、キラだ。」
「キラです。よろしくお願いします。」
「私に敬語はいらないです。同い歳です。」
「同い歳!」
「よく老けてると言われます。」
「あ、そういう意味では無く…。」
「ハハ、優しいんですね。でも練習が始まったらその優しさは無くしてください。時間がありません。始めましょう。」
「え、もう!」
「飛鳥、体中が痛い。」
「まあ初めだからな。仕方ないよ。毎日行けば慣れてくるから。」
「毎日!」ため息が出た。練習が終わり2人で廊下を歩いていた。相手が強すぎる。早すぎて動きを追うのがやっとだった。ただ気がついた時にはもう殴られていた。ヘッドギアつけていなかったら死んでるな俺。あんなに差があるのか。
「そうさ。毎日行かなきゃ意味がない。そのうち射撃もやるから。」
「うわ!死ぬかも。」
こんなふざけた感じだが、キラの感の鋭さは凄かった。攻撃される方向は確実に読んでいた。途中ソルが押されている時もあって驚いた。このままいけばいい具合に仕上がるだろう。すべてにおいて感が良さそうだから、これから楽しみだ。
「そういえばソルって飛鳥とどういう関係?」
「ソルは家から俺を守るために一緒に来てくれたんだ。」
「え!でもなんでシューケットじゃなくてDevilsに?」
「シューケットは危なくないだろ。Devilsでは何が起こるかわからないからな。」
「ふーん。飛鳥の家はお金持ちなんだな。」
部屋に戻ると直ぐにシャワーを浴びベッドに倒れ込んだ。動けない。そのまま疲れて寝てしまった。ご飯を食べ損ねて夜中にお腹がすき目を覚ました。テーブルの上を見ると食事が置いてあった。こんな事するの飛鳥ぐらいしかいないか。キラは飛鳥の優しさが嬉しかった。
授業が終わるとDevilsへ行き疲れ果てて帰ってくる生活が続いていた。
「今日から射撃もやるぞ。」
「やっとキックボクシングの方になれて来たのにまた新しい事やって疲れ果てそうだな。」
「時間がないんだしょうがない。」
「分かってるよ。」
今日は9階へ上がった。このフロアーは壁は赤く金色の扉が左右に2つしかなかった。右側の扉を開け中に入った。射撃場はものすごく広い。中に入ると亜子が飛びついて来た。
「亜子か!怪我は大丈夫なのか?」
亜子がうなずく。亜子が俺のリュックを指さした。
「会えると思ってなかったからお菓子を持って来てないよ。ごめん。」
ほっぺがふくれている。すねるんだ。
亜子の腕前は凄かった。アゲハとは比べ物にならない。動く的に対しての命中率が凄すぎる。
「飛鳥、亜子はDevilsの中で射撃の腕前はどれくらいの位置にいるんだ?」
「1番だ。亜子に狙われたら、まず命はないと思った方がいい。」
あんなに華奢な体であの身のこなし、迷いがない。俺すごい人に教わるんだな。銃を打っている時の亜子が事が少し怖くなった。
亜子の教え方は淡々としている。銃の持ち方と狙う場所を教えられ後はひたすら的に向かって打った。動いていない的なのに真ん中に当たらない。亜子は黙って見ていたが寄って来て姿勢をなおされた。その姿勢のまま打ってみた。
当たった。真ん中に。そのままの体制を保つのが難しい。でも何となくコツは掴んできた。この銃で人を殺せると思うと怖いが、ただ射撃の練習はゲーム感覚で楽しい。よろけて派手に転んでしまった…これじゃあ殺されるな。
亜子が心配そうにのぞき込んでいる。
「大丈夫だよ。腰を打っただけだから。」
そういうと安心したように見えた。
帰り際に亜子が悲しそうな顔をして中々帰らないので
「明日も来るから頼むな」と言うと肯き出て行った。あんな大きな目で見つめられるとこちらが何か悪い事をした気になる。亜子はどうやって育って来たのだろう。時々仕草が子供に見える時と、恐ろしく冷血に見える時と差が激しい。
「亜子はキラの事を気に入っているみたいだな。」
「そうか?あんまりそんな感じには見えないけどな。」
「あいつが人の事を心配した姿は初めて見たからな。」
飛鳥は昔、空と言う名前だった。亜子は政治家の両親の元に生まれた。正義感の強い父親と母親、裏金や賄賂などには程遠い真っ直ぐな政治家だった。空と亜子の父親は親友だった。亜子が生まれた時に両親と家を尋ね、お祝いをし、一緒に出かける事が多かったので兄妹のように仲良くなった。亜子は両親の愛を受けていつもニコニコしていて素直な子だった。うちの家は父は普通のサラリーマンで母は家でピアノ教室を開いていた。亜子の両親が忙しい時はうちに来させて面倒を見ていた。母親の教室に生徒が来ている時は亜子と一緒に遊んだ。
家の状況がおかしくなったのは空が9歳、亜子が8歳の時だった。
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