第11話 訓練

 今日は授業で射撃練習がある日だ。初めて銃を持つ…手順は覚えた。あとは的に当てるだけ。号令とともに一発打った。衝撃が凄い。こんなのでよく的が狙えるよな。少し先にアゲハがいた。ほとんどが真ん中に当たっている。うまいんだな…だから教えてくれるって言っていたのか。でもアゲハに教えてもらうと皇帝に目をつけられる可能性がある。飛鳥に教わろう。それにしても射撃を高校生が練習するなんて、本当にここは日本なのか?


 放課後になると飛鳥によく分からない服を渡され部屋で待つように言われた。広げると綺麗な青色だが軍服の様だった。何だこの服。言われた通り着替えて待っていると飛鳥が現れた。飛鳥も同じ青の軍服を来ていた。飛鳥の方が少し派手な飾りがついていた。飛鳥は肩ぐらいの長さでストレートヘア、今はうしろで髪の毛を結んでいるので鋭い目つきが際立っている。いつも冷たい印象だが軍服を着るとさらにキツそうな印象になる。


「飛鳥この服は?お前似合うな軍服。なんかキリッとしてていいな。」

「この服は俺のチームの服だ。キラは顔が優しいから怖そうに見えないな。」

「チーム?」

「皇帝には銀、黒、赤、青の部下がいる。まあ兵隊みたいなものだ。それから部下の下にさらに召使がいる。キラを俺の召使に入れた。その方が一緒に動きやすいからな。召使は俺が勝手に決められるから大丈夫だろう。今の所キラを召使にしたところで、皇帝にまだ目はつけられていないから心配する事もないだろう。」

「この格好でどこに行くんだ?」

「Devilsに行くぞ。」

「えっ、中に入っていいのか?」

「俺と一緒なら入れる。そして向こうで射撃と格闘技練習をする。」

「向こうで!あっちって殺し屋とかスナイパーとか育てる場所なんだろ。本場で習うって事か。」

「ああ、それぐらいしないと皇帝には勝てない。あいつはまず教師を買収している。最終的にキラが残れば絶対に何かお前が不利になるようにしてくるだろう。だから確実に勝てるように習うんだ。皇帝もDevilsで訓練しているからな、あなどれない。」


 クルス専用エレベーターで地下へ降りる。パスワードを入れて解除してからではないと操作ができないようになっていた。地下3階で止まり、降りると煉瓦造りの壁に沢山の写真が飾られていた。歴代の皇帝らしい…名前が書いてあったので見ると歴代の大統領が何人かいる!ここの学校出身なのか…でもこの写真悪趣味だな。

「見て分かっただろ。ここで皇帝になると大統領の道への近道だ。だからここで名を残そうとするんだ。本当にやばい奴は外に出る前に暗殺されていると言う噂があるけどな。今の皇帝はほっといても暗殺される可能性がありそうだけど。でも親が大統領だからそう簡単にはいかない。」

「今の皇帝の親って大統領なのか?苗字違うだろ。」

「その事を知っているのは俺だけだ。俺はちょっとしたルートで知らされた。ここにいるほとんどは偽名だ。入学時に偽名にするって項目あったの気付かなかったか?」

「そんな所あったんだ!ちゃんと読んで無くて気がつかなかった。何だ俺も偽名にすればよかった。」

「大丈夫だよ。キラはどう考えても偽名に聞こえるから。」

「おい!」

「ハハ。教師も偽名だぞ。クヌギって樹木の名前だから。」

「はあ!」

 飛鳥が笑っている。珍しい。何だよ嘘ばっかりなんだな。

「飛鳥お前は偽名か?」

「さあな。想像に任せるよ。もう直ぐ入り口だ。」


 エレベーターの先に大きな鉄の扉があり、ここもまたキーロックされている。飛鳥がキーロックを外し、扉はスライドして開いた。中に入ると鉄格子があり、その横に門番みたいな奴がいる。飛鳥を見ると鉄格子が開かれた。どんだけ厳重なんだ。奥へ進むと意外にも真っ白な壁でイメージとはかなり違っていた。そこを通り過ぎてさらにガラスの扉。キーロックを外すとやっと中に入れたようだ。

「すごい厳重だな。」

「すごい奴らが揃っているからここまでしないと、反撃されたら敵わないからな。あの真っ白な壁の中には常に電流が流れていて、逃げ出そうとしたものは電気ショックで死なない程度に倒される仕組みになっている。」

「それはキツイな。」

「さあ、話はつけてあるから行こう。」

「なあ飛鳥。亜子には会えないのか?」

「今度会えるようにしておくよ。」

「渡したいものがあるんだ。とりあえず今は飛鳥に渡しておいていいいか?」

「ああ、いいよ。何だこの荷物!重いな。」

「食べ物だよ。リュックごとあげてくれ。」

「喜びそうだな。」


 白い壁はさらに続き、一番奥に青色のエレベーターがあった。

「あれまさか青の使いの専用エレベーターか?」

「それは流石に違うよ。たまたまだ。でもクルス専用だけどな。」

「もうこの学園は何でもありのような気がしてきたよ。」

 エレベーターに乗ると8階のボタンを押した。どこにも止まらず上がっていく。フロアーに着くと広がる風景は今度は黒だった。壁一面、真っ黒だった。先に進むと扉がいくつもあり、Aから順番にアルファベットの番号がついていた。立ち止まった部屋はFだった。重そうな扉を開け中へ入った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る