第10話 皇帝になるには?
部屋に戻り、皇帝になるにはどうすればいいか考えていた。勉強には自信がある。問題は射撃と格闘技だ。キックボクシングで通用するのだろうか。通用するにしても最近何もやっていない。練習を始めないと。確か格闘技系の部活があると言っていたな。飛鳥に教えてもらおう。なぜ皇帝は1位になれるのか?見た目は大きいが筋肉なんて全然無いよな。まさかイカサマ?色々なことを想定して考えなくてはいけない。考えすぎて頭がパンパンだ。少し横になろう。目を閉じると亜子の腕の傷と笑顔と交互に思い出す。今日俺に話しかけてきた女の子みたいに化粧やおしゃれをしたら物凄く可愛くなるんだろうな。あの格好でも亜子は可愛い。なんか楽しい事させてやりたいな。
次の日、飛鳥と外でお昼ご飯を食べていた。
「飛鳥、テストの格闘技って何やるんだ?」
「その時によって違うんだ、ルールも色々あるんだけど、決まっているのは殺してはいけないぐらいか。あまりにも決まらない場合は審査員の判断だ。」
「審査員がいるのか…審査員って誰がやるんだ?」
「その辺はよく分からないんだ。俺たちの見えない場所でチェックしているみたいだ。」
「そうか。まあ取り敢えず何でも良いんだな。飛鳥この学校キックボクシング部ってあるか?」
「あるよ。俺はそこの部員だ。」
飛鳥に連れられ見学に行った。部員は少なく8人しかいなかった。
「意外に人数いないんだな。」
「まあな。空手部は結構多いんだけど、キックボクシングあまり人気がない。女子がいないからかもな」と飛鳥が笑った。
飛鳥が笑うなんて珍しいな。機嫌がいいのか?今までムスッとした顔しか見たことがなかったのでびっくりした。飛鳥も人間だったんだ…失礼か。
「経験者なんだろ。少しやってみるか?」
グローブとヘッドギアを渡された。懐かしい皮の匂い。ちょっとワクワクしてきた。
「飛鳥。スパーリングやるのか?」部員達が集まってきた。
「おい新人頑張れよ。飛鳥はこの部で一番強いからな。」
「マジか。」
マウスピースをつけると、ゴングがなった。2人共様子見でしばらく見つめ合った。先に手を出したのは飛鳥だった。鋭いパンチが顔をかすめる。やば、強いぞこいつ。
飛鳥は本気でパンチを出していた。皇帝になるのであれば俺なんかに負けられては困る。当たりそうで当たらない。キックを出してもあたってはいるがうまくかわされてしまい決定打にならない。まだ荒削りだがいい素質を持っていると感じた。もしかしてもしかするかもしれない。結局打ち合いにはなったが勝負がつかず引き分けになった。周りの部員達はただ呆気にとられこの2人とは戦いたくないと感じていた。皇帝に勝つには誰から見てもキラが勝ったと思わせるように、完璧に倒さなければいけない。今まで皇帝が教師を買収し、相手も脅して勝利を勝ち取ってきたのは知っている。そうならないようにキラを完璧に勝たせる必要がある。あいつに頼むか。
部屋に戻るとシャワーを浴び、鏡をみると全身いたるところに痣が出来ている。久しぶりに対戦したせいで身体中が痛い。少しずつでも体力を戻さないと…でもあと1ヶ月半悠長な事は言っていられない。毎日練習しないと。飛鳥はクルスの人間なんだろうか?そうなると俺が皇帝を取ろうと思っていると知られたら邪魔されるだろうか。あまり皇帝びいきには見えないが、まだ何とも言えない。亜子にも3日も会いに行けていない…心配だ…俺の事待ってるかな。
久しぶりにお菓子を大量に買い込み、薬も調達してリュックに詰め込んだ。急ぎ足で門まで向かった。門につき、見渡しても亜子の姿は見えなかった。しばらく待っても来なかったのでその日は帰るしかなかった。無性に心配になり、毎日門まで行ってみたが3日経っても亜子に会えなかった。門の前にしゃがみ込んで亜子が来るか待っていると木の影から飛鳥が現れた。
「え、飛鳥?」
「亜子は来ないよ。」
「飛鳥、亜子の事知っているのか?まさか、俺が会いに来ているせいで来られなくなったのか?」
「そうじゃないよ。そもそもこの事は誰にも言ってないよ。亜子は訓練中に大怪我をして病院に入院している。」
「大怪我!大丈夫なのか?」
「そもそもキラは何でそんなに亜子の心配をしている?」
「それはここで会ってから色々と話をして友達になったから。」
「友達に?そんな感情を持たせたから亜子は怪我をした。」
「え、俺のせいなのか?」
「クルスはDevilsに入れる。俺が病院にいった時、キラは元気なのかと初めて亜子から聞かれた。会えなくて心配していたと。」
「やっぱり飛鳥はクルスなんだな。俺に言っていいのか?」
「俺は別に隠してもいないしな。それと俺は別に皇帝に忠誠心はないよ。」
「じゃあなぜクルスにいるんだ?なぜ飛鳥は亜子とそんなに親しいんだ?」
「質問多いな。クルスは皇帝に言われたから入っただけだし、こんな学園だし近くにいた方が上が何を考えているか分かった方が楽だしな。亜子については、俺は亜子の上司みたいなもんだ。事情があって俺は亜子に聞きたい事があるんだ。でも今の状況で亜子に関わると危険かも知れないから皇帝になってからと思っているんだが、テストで1位になれず、中々助けられていないが、どうにかして次は救い出すつもりでいたんだ。」
「じゃあお前、皇帝の座を狙っているんだな。皇帝の味方じゃないんだな。」
「ああ、そうだ。俺はこの学園に亜子を助けるために入学した。」
「亜子は大丈夫なのか?」
「しばらく安静にすれば大丈夫だ。なあ、キラは皇帝になる自信はあるか?」
「俺が?………勉強の面ではな。射撃と格闘技が何とも言えない。」
「俺は勉強が苦手だ。」
「おい、それ真面目に言っているのか?面白いやつだな。それじゃどうやって皇帝になるつもりだったんだよ。」
「格闘技は皇帝よりも上をいっているからどうにかならないかと、ひたすら勉強したが無理だった。だからキラお前を皇帝にする。俺より可能性は高い。」
「じゃあ、勉強以外の事は飛鳥が教えてくれ。2人のうちのどちらかがなれればいいだろう。」
「お前の方がなれそうだけどな。分かった。俺は裏で動く。皇帝をおろしたい奴をこちらに引き込む。だた射撃も格闘も亜子の方がうまいけどな。」
「そんな事をして大丈夫か?飛鳥が危ないんじゃないのか?」
「大丈夫だ。俺にも味方はいる。キラ絶対に皇帝になれ。」
引き受けてしまったものの、本当になれるか不安になってきた。アゲハと亜子を救うのが大前提だ。やらなくてはいけない。少なくとも今の皇帝よりかはもっと学校を良くする自信はある。今まで頭がいい事に対して何も思わなかったが、それが役に立つと言う事が少し嬉しかった。もうやるって決めたんだ。亜子待ってろ。
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