第7話 ナイフを持った女の子

 アゲハがキラにちょっと話があると言って先に薫を帰らせた。

 2人きりになり近くの公園に行こうと誘われた。公園もあるのか…凄いな。

公園に着くと噴水が目の前にあるベンチに座った。


「キラ、来てくれてありがとう。さすがだね。HQで1位とるなんて。あまり長く話せないから短く言うね。実はキラに皇帝になって欲しいの。」

「そう言われるかなって思ってはいたけど、俺が?無理だろ。筆記試験はともかく、射撃なんてやった事なんてないぞ。」

「それは私が教える。練習場はいつでも開いているから練習しよう。キラならすぐこなせるよ。」

「あいつがアゲハに気があるから嫌なのか?」

「それもあるけど、そんな簡単な話じゃないんだ。その話はキラが皇帝になったら話すよ。」

「わかったよ。」

「この学園ではあまり人を信用しない方がいいよ。それは飛鳥も例外じゃないから。」

「飛鳥も?話した感じだと悪い印象はないけどな。」

「はっきりは聞いていないけど、飛鳥は噂でクルスの一員だよ。」

「でも皇帝様!って感じじゃないぞ。でもまあわかったよ。」


 飛鳥はモニタールームにいた。ここはクルスの幹部しか入る事は出来ない。今日は自分の当番ではなかったが、アゲハとキラが外に行くと聞いたので理由を付けて代わってもらった。多分アゲハはキラに皇帝になってくれとか言うつもりだろうと思っていた。この街には全体に監視カメラと盗聴器がついている。話した事を幹部に聞かれ、必要であれば皇帝の元に話が入るので危険だと感じたからだ。結局、公園で話しているのはわかったが、噴水のおかげで何を話しているかは聞き取れなかった。とりあえず2人でいる所を他のメンバーに見られなくて一安心だ。役目を終え飛鳥は自室に戻った。


 アゲハとキラは午後7時過ぎに学園へ戻った。アゲハと一緒に入り口から入るのは目立つと思い、キラは庭を散歩すると言って1人で歩き出した。アゲハがついて来ようとしていたので、今は目立ってはいけないと言って帰らせた。本当の事を言うと皇帝などなりたくない。興味本位で来ただけだったので周りがどうなろうがあまり関心が無かった。俺、そんな偉くなる器じゃないんだけどな。まあしばらく様子を見てみよう。

 そう言えば隣のDevilsってどこにあるんだろう。見えるのかな?結構歩いたけど中々前方に見えている壁の所まで辿り着けない。暗いし、草も木もいっぱい生えていて森のようになっているので、このままだと帰れなくなりそうだったので、もう諦めようかと思ったが、ここまで来たのだからと疲れた足を動かした。携帯のライトを頼りにやっと壁まで辿り着いた。周りを見渡しても壁が永遠に続いている。少し先に水が流れているような音が聞こえたので、そちらに向かって歩いた。歩いた先には大きな鉄柵の門があり、そのむこう側から水の音は聞こえる。音的に滝のような感じだった。こんな所に滝なんてあるのだろうか?ライトの光もとどかず目を凝らしてみたが暗くて見えない。明日、明るい時間帯に来てみるか。場所だけ確認しながらキラは戻って行った。


 キラは門の向こうにナイフを持った人物が立っていた事に気がつかなかった。


 学校が終わると早速キラは昨日の場所に行こうと一旦部屋に戻りラフな格好で外に出た。昨日と同じであろう道順で歩いて行く。昨日は気がつかなかったが結構緑が綺麗だった。分かれ道がいくつかあり、今日滝を見たら、次はそちらに行こうと考えていた。しばらくは探検が出来て面白そうだ。明るいと大分雰囲気が違う…たどり着けるだろうか。


「あった!」昨日帰るときに目印を付けておいた場所に着いた。道が三方向に分かれていたので絶対迷うと思い持っていた紙を挟んでおいていた。ここまでくればもう間違えない。少し歩くと水の音が聞こえる。

 やっと門の先が見ることが出来る。明るい所で見ると門はエンジ色で高さが3メートル以上もあり、一番上は先が尖っていて乗り越えられないような作りになっている。生活している場所はこんなに近代的なのに、ここは中世のヨーロッパの様な古い作りに見える。使われていない門なのだろうか。周りを見渡しても監視カメラなどなさそうだ。門の前に立ち中を覗き込んだ。やはり思った通りかなり先だったが滝が見えた。門の外は少し開けていて誰かが手入れをしているように見えた。上の方を見ると黒の大きな城のような建物があり、こちらの学園とは正反対のような印象を受けた。


「ここがDevilsか?」


 門の前で眺めているといきなり目の前に人が現れてびっくりした。

「うわ!」


 背中まである長い髪、目は大きく鋭い、全身黒ずくめだが、可愛い女の子が目の前に立っていた。手にはナイフを持っている。顔とナイフのギャップに変な感じがした。

「君、は誰?」

 少し後退りすると走って行ってしまった。

「あ、待って。」

 ナイフを持っていたな。彼女は殺し屋?ちょっと背中がゾクっとした。あんな子もいるんだな…Devilsをもっと知りたくなった。

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