第2話 幻のシューケット学園

 翌朝早い時間に、家の敷地内から船で出発した。スケールが大きすぎて頭がついて行かない。1時間もすると目的地の島まで着いた。外から見ると森があるようにしか見えないが、こんな所に学校なんてあるのか?


 迎えに来ていた車に乗り15分ぐらい走ったところでトンネルに入った。まだ外に出ていないのに途中で車が止まり、運転手が降り、懐中電灯で壁を照らし、石だと思っていた部分を押すと、ガラスの扉が表れ、扉を開きキーロックを押した。長い桁数を入力していた。見ていると30桁の数字を入力していた。隠さないのは覚えられないからと思っているからだろう。念のために30桁のキーロック番号を頭に入れておいた。ロック番号の後にエンターを押すと横に扉がスライドした。その後同じような扉が2枚あり、その度にキーロック番号を押していた。さすがに多いので覚えてすぐに携帯のメモに打ち込んだ。運転手も携帯に番号が入っているのだろう。それを見て打ち込んでいた。最後の扉を開く時にはさらにカードキーも指していた。どんだけ厳重なんだ。最後の扉が開き中へと入った。


 運転手は車を止め「お荷物は先に持っていきますので、せっかくですから学校まで歩いて行ってはどうですか?歩いて30分ぐらいで着くはずですよ。前方に見えるのが学校です。」

 周りが見たかったので「じゃ歩きます」と答え、降りると車は前方に走って行った。改めて周りを見渡す。青空だと思っていたのはよく見ると映像だった。全体がドームに覆われているみたいだ。お店は一部を除きほとんどが夕方からの営業のようだった。学校が終わる時間に合わせて営業しているのだろうか。たがか学校の為にこんな設備がされているなんて、そんなにこの学校は特別な所なのか?


 学校までは白と薄茶のレンガの道が続き、周りには綺麗に木々が並んでおり、とても室内とは思えなかった。犬までいる。なんなんだここは。運転手の言うとおり30分ぐらいで学校の門についた。門には警備員がいて身分証を見せるように言われ、ここに来る前に渡されたカードを見せてから自動改札機を通った。入ってすぐに大きな噴水があり、その先に近代的な作りのガラス張りで綺麗な美術館の様な建物の中へ案内をされた。2階に行くようにと指示をされ、目の前にあった白い大理石の階段を登った。何でもかんでもお金をかけているように見える。登ってすぐに大きな重厚そうな扉が開き中へと案内された。座ってくださいと促されゴシック調の大きなソファーに腰をかけた。


「お疲れ様でした。神城さんですね。ようこそ学園へ。私はこの学園の副園長で左門ローラと申します。学園長は来る前のお会いになりました曽根原でございます。よろしくお願いいたします。」

 曽根原大統領が学園長だったんだ。この豪華さはそのおかげなのかもしれない。

「学園の生活指導のものと変わりますので、これからの事をよく覚えて生活して下さい。」

「はい。」

 左門副園長が出て行ってすぐに、背の小さい鋭い目つきをした短髪のスーツの男の人が入ってきた。背は150センチぐらいだろうか年は30代ぐらいに見える。

「始めまして時田桜雅(ときたおうが)といいます。この学園の全体の生活指導を行っています。生活指導は私の他に30人ほどおります。」

「30人ですか!多いですね。」

「この学園は2つに分かれていて、今日入った門の先にもう一つ違う門があります。そちらにも生徒はおります。だたそちらは頭脳というよりかは体が資本になっています。いわゆるプロの格闘家を育てる所です。」

「格闘家?」

「わかりやすく言っただけで、本当の格闘家を育成するわけではありません。まあSPなどを育てていると理解していただけたらと思います。」

「はあ…。そちらの授業は受ける事は出来るのですか?ずっとキックボクシングをやっていたものですから、習えたら嬉しいんですけど。」

「あちらの校舎には行けませんが、週に2回格闘技を習う授業はあります。キックボクシングなどの格闘系の部活もあるのでそちらに入られても良いかもしれません。」

「良いですね。わかりました。」

「この学園は生徒主体です。成績によってトップの人がこの学園の決まりを作ります。トップがよく変わることもありますし、トップを取り続けるとその人の政権が続きます。良くなるも悪くなるもトップの人によって変わります。悪くても学校側からは何も言いません。生徒たちでどうにか対処してもらいます。」

「はあ」政権?悪くても何も言わない?

「授業を終えて、毎日15時から20時まで、土日は朝から外出可能です。朝、昼、夜、学園内のレストランに行って食事になります。時間は決められていますので指定された時間までに食事を終えてください。もしお食事がいらない場合は朝の時点で電話で伝えてください。お風呂は各部屋にありますのでご自由にお使い下さい。夜の23時以降は自動的に部屋の鍵がかかります。何か急用な時などは電話が24時間対応なのでそちらに用件を言って下さい。その後も1時間以上学校のルールの説明をされ、部屋に通された時にはもうグッタリだった。男子が東館、女子が西館に部屋があり、十畳ぐらいの洋室にキッチンとトイレとバスに冷蔵庫、テレビにパソコン、ゲームまで至れり尽くせり、憧れていた一人暮らしのようだ。さすが金持ちの子供が集まる学校だ。

「疲れた」フカフカのベッドに寝転がり、目を閉じた。俺は昼から参加することになっている。それまでゆっくり休もう。昼にレストランに行っても良いと言われたが、ここへ来る途中にコンビニに寄り弁当を買ってきたのでそれを食べることにした。


 昼を食べ終わると、制服に着替え部屋にいると担任が迎えに来た。

「はじめまして神城さん、担任のクヌギと言います。それでは教室にいきましょう。」

 機械的に話す人だな。人間ぽくないっていうか感情が無いみたいな。色も白いし細いしなんか本当にロボットなんじゃないんだろうか?部屋のあるフロアからエスカレーターで2つあがり、5階に着くと目の前に大きな扉が開いていた。学校が終わると閉まるのかな?廊下には生徒はいないようだ。あと五分で授業が始まるから教室に入っているらしい。どんだけ真面目なんだ。1年S組と書かれた教室に入った。クヌギが扉を開け中に入るとザワついた。

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