第5マッチ
そこは辺り一面真っ暗で、時折光る雷がその情景を一瞬だけ映し出す。
5人の黒い影、シルエットがその部屋に浮かぶ。
「フッ…ついに来たようね」
玉座と思わしきデカい椅子に、肩肘をつけ足を組みながら女が呟く。
その目の前には4つの椅子が対面するように2つずつ置かれ、そこにも誰か座っていた。
「ええ、女王様」
「しかも、強大」
「やられる前にやる…」
「やられるなんて、そんな馬鹿な話あるわけねーべ?」
「ふっふっふ、やっとこの世界を奪える時が来たわ」
玉座に座る女王の笑みが、雷の音と同時に一瞬だけ見えた。
~~~
ドゴォーンと大きい音が響き、森から爆速で砂煙を立てながら何かが物凄い勢いで北へと移動していた。
「ほえー、こんな事もできるのね」
とてつもない速さで動いていたのはリリアだった
目の前には天にも届きそうな程高くそびえる城壁が、横幅も視界に目いっぱい広がっている。
カタカタカタカタ…
両端がデカい鎖に繋がれている城門が、音を立てながらゆっくりと降りてくる。
「ようこそいらっしゃいました旅の者!」
城門が開いたすぐそこに、小刀を腰に刺し、頭には額当て、いかにも忍びとおもしき格好の門番が出迎えた。
「わわっ!ど、どうもー」
リリアが少し驚いた様子で挨拶を交わす。
「最上級次官様から伺っております!覆面を被る女子の者が現れたら手厚く歓迎しなさいと!もう貴女様で間違いありませんね!?先程の爆速の移動も国中に響き渡ってましたよ、ハハッ」
「え!?もう私の事が知れ渡ってる訳!?」
(ほんとついさっき転生されたばっかだってのに、噂が広まる速さはどの世界も共通ね…)
「さぁさぁ、どうぞお入り下さい!最近不穏な空気が漂ってるので、城門を開けるなんて事は滅多にないんですよ!さぁこちらへ」
「ど、どうもー」
リリアが門番に案内され城門の中に入ると、そこには忍の国が広がっていた。
「うわーー!すっごい!これ何年代だ!?」
デカい城壁に囲まれたその中はまさに城下町、着物を纏う人々が行き交うずーっと先に、ここからでも見える程の、それはまたどデカい城がそびえ立っていた。
「もうここからでも見えますね?あの城のテッペンに住まうお方こそ、この国の長"蛇郎魔苑(じゃろうまえ)様で御座います」
「蛇郎魔苑…聞いてた通りいかにも蛇使いって感じね」
「そういえばリリア様、今日はもうすぐ日暮れですので、少しこの国を見て回ってお宿で休まれてはどうです?マエ様の謁見はまた明日にでも」
「あ、それもそうね、なんかドタバタで気付かなかったけどお腹めっちゃ空いたし!」
「ではリリア様これを、ここが今私達の居る位置でして、お宿はこちらの方にご用意して頂けるよう、もう伝達しておきました」
門番が地図を広げ、説明を織り交ぜて渡した。
「お、ありがと!へー、この地図動くのね、まるでスマホ」
「スマ、ホ…?ただの空間把握魔法でございますゆえ…」
「あ、そうなんだ!魔法も便利に使えるって事ね」
「それでは拙者は勤務に戻りますので、ゆっくりとお休み下さい!」
「いろいろありがとねー!」
門番はリリアへ深々とお辞儀をし、リリアは手を振りながらそれぞれ反対方向に歩く。
まるで昔の様子を映し出す現代美術館が目の前に広がる光景に、リリアははしゃぎ隅々まで見て回った。
覆面を変な様子で見る子供、噂が出回ってたのか気さくに手を振る街の人。
一通り観光を終え、リリアは目的の旅館に着いた。
立派な門松が飾ってあるだだっ広い玄関を潜ると
「いらっしゃいませーー!!」
女将さんを筆頭に、壮絶5人の中居さんがリリアを出迎えた。
「うわー、手厚い歓迎ね」
リリアが少し困惑していると
「ささっ、お部屋へご案内いたします、どうぞこちらへ!」
間髪入れずに女将さんがリリアを客室まで案内する。
「リリア様ようこそいらっしゃいました!温泉も是非ご堪能くださいませ、あ、まずはお食事がいいですか?」
「そ、そうね、お腹空いたし…」
女将さんの迫力に押され気味だ。
「それでは、お夕飯をすぐお待ちいたしますね」
ニコッと笑い部屋へ案内し終えた女将さんは襖を閉め、厨房へ向かう。
ドサッ
「ぷはぁーーー!!やっぱこれよねーー!フカフカー」
リリアは部屋に敷かれていた布団にダイブし、フカフカさを早速堪能していた。
程なくして
「お夕食をお待ちいたしましたー!」
襖が開けられ、土下座の体制で居る女将さんの後ろから御膳を持った中居さんがテキパキと机に料理を並べる。
「うわ、うんまそーーー!!」
リリアは料理を目の前に、目を輝かせ涎を垂らしている。
「それではごゆっくりー、温泉もありますので」
「いただきまーーす!!」
目の前に並べられた懐石料理をガツガツ頬張る。
「うぅ、おなかいっぱい…あ、温泉行こー、部屋着はここね」
お腹をポンっと叩き、押し入れから着物を取り出し温泉へ向かう。
「ここねー!あ、そうだ、なんだかんだ覆面外すの初めてね…」
サッと覆面を外し、プロレス衣装も入れた籠の中へ。
「ふー」
温泉にはただ1人、湯気がモクモクと登り顔は見えにくいが、美少女が足を目一杯伸ばしくつろいでいた。
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