第3マッチ
「だれ!?てかいつの間にいたの?」
リリアが仰天した様子で言葉を返した。
「まぁそう慌てなさんな」
「いきなりそんな事言われてもねぇ!ここはいったいどこなの!なんなの!?意味分からないっての!」
「お主でそうじゃな、5人目じゃな」
「5人目!?なんの話よ?」
「まぁ一旦腰掛けるといい、すこーし長くなるからな、フォッフォッフォ」
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遥か昔、この世界には神族と魔族、それぞれ5人ずつが均衡を保ち平和に暮らしていた。
ちょうど世界が二つに分けられ、お互い干渉する事なくな。
そして神族は大地を繁栄させ、自らが住みやすくするように、人間を生み出した。
その反対に、魔族は自然の摂理を正し続ける為に、魔獣を生み出した。
人間は神族から元々授けられていた魔法も含めたあらゆる知識を増やし、家を建て、農作物を育て、繁殖し、神族を祀りつつ暮らしていたのじゃ。
魔族の方の大地では弱肉強食が成り立っており、大きい魔獣が小さい魔獣を狩り、はたまた群れから離れた大きい魔獣を小さい魔獣が群れで襲い食べ、更には寿命で尽きた大きい魔獣の亡骸を小さい魔獣が食べる事で、一定数以上の数が増える事なく、同時に自然の摂理が崩れる事なく暮らしておった。
そして人間はどんどん繁殖し、やがて住む場所も狭くなっていった。
そこで目につけたのが魔族側の大地だったのじゃ。
強力で獰猛な魔獣が居るのは承知だったが、人間には数と知識があったので、それほど脅威にはならなかった。
合わせ技の魔法を駆使し、作った武器で魔獣をどんどん狩りまくったのじゃ。
人間側も多少の犠牲はあったが、その対価以上の土地を手に入れる事ができていた。
そして黙っていなかったのが魔獣を生み出した魔族の者たちじゃ。
神族と渡り合える程の力を前に、流石の人間も成す術が無かったのじゃ。
まずは侵攻されていた魔族側の領地に居た人間を次々と始末し、神族側の土地へと足を踏み入れた。
神族側の者たちは人間に全部任せっきりで、堕落した生活を何千年と送っていた。
もうこの頃になると、自然を崩壊させる事なく、世界に干渉し続けていた魔族に対抗する力を失っていたのじゃ。
ずっと守っていた不可侵の掟を背いた人間に対する魔族の怒りは収まる事は無かった。
その元凶となる神族の元へ赴くと、一神、二神と次々と人間同様始末していった。
唯一残った神が居たが、もうその世界からは跡形もなく消えていた。
長年に渡る魔族側の一方的な戦いで神族も滅び、次は人間が手にかけられると思ったその時じゃ。
お主のようにどこからともなく、魔族にも対抗しうる力を持った者が各地に散らばって現れたのじゃ。
一人目は忍者をやっていると言い、守り神と呼んでいた白と黒、2匹の大蛇を操り強力な魔法を使う男。
もう2人は暗殺を生業にしていると言い、どこまでも伸びる鎖が付いた鎌を持った女と、無数の投げナイフを出現させ、音も無く敵を始末すると言う女の姉妹。
もう一人は武将をやっていると言い、風の流れの向きをも変えてしまう程の、最強の槍使いと恐れられていたと言う男。
元々居た人間達は、こやつらの強大な魔力、気力、パワー、それから溢れる殺気を肌身で感じ取ったのじゃ。
神族も消えた今、こやつらに頼み込んで魔族の侵攻を止めてもらうしかなかった。
魔族もその強大な力を感じ取り、その者達の元へ向かった。
その4人は襲い掛かってくる魔族をもろともしなかった。
最終的に忍者は魔族を蛇で縛り上げ殺し、暗殺姉妹は素早い動きで翻弄して仕留め、武将は真正面から槍をふりかざした。
そして魔族と神族が全滅し、人間と魔獣だけが残った。
数も減った人間は魔族側への侵略を諦め、不可侵の掟を再び守ると誓った。
でも神族が居なくなり、人間を指揮する者が居なくなった。
そこで人間達はこの4人に統治して貰おうと考え、4つの国を作った。
今まで世界の半分は神族側の物じゃったが、国を作る際におおよそ3分の1の大地が余った。
4か国協議の末、余った大地は4つの国それぞれで平等に使おうと決めた。
一方魔獣側も、何事も無かったかのように元の自然へと戻って行った。
順調に数を増やし、かと言って増やしすぎないようにも自然と摂理が正されていた。
統治する者となった4人はとても優秀じゃった。
余った大地を利用し各国と交易を深め、豊かに暮らしていた。
やがて4人はそれぞれ子供を産むのじゃが、みな強大な力が色濃く受け継がれていた。
だから次の統治する者がその子供に引き継がれる事を咎める国民は誰一人として居なかったのじゃ。
そうして何十年、何百年と月日が経った…
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