第2話 追放の言い渡し
次の日、バーブノウンは今日も体調が悪く、熱も出している中、ロレンスの所へ行く。
「やぁバーブノウン、やっと来たか」
「ごほっ……で、僕に何の用だい?」
「お前をこのパーティーから追放する」
「――――は?」
バーブノウンは頭の中が真っ白になる。
病弱であまり役に立てない自分を認めてくれ、ともに戦ってきた仲間たちなのに。
バーブノウンはその場に崩れ落ちた。
悲しい、そしてそれと同時に溢れ出る悔しさと涙。
「ちっ、男のくせにめそめそ泣きやがって。俺たちが苦労している間に、お前は楽しやがって……! 目障りだ、早く出ていけ!」
「ぐっ……わ、分かったよ。今までお世話になりました……」
バーブノウンは俯いたまま、ロレンスの部屋を出た。
扉を閉じた瞬間、中から笑い声がバーブノウンの耳に入った。
完全にバーブノウンを馬鹿にする笑い方だった。
(結局、僕は邪魔者だったのか……。そこそこ気づいてはいたけど)
もうこの街には居られない。
どこか違う街へ行き、ロレンスから遠ざかる必要がある。
しかし、バーブノウンは高熱を出している。
足がおぼついて歩くのがやっとだ。
少しずつ意識が遠くなり始めた時、バーブノウンが気づいた時には見知らぬ森にいた。
「――――ここは……?」
もう意識を失う寸前。
バーブノウンは崩れ落ちた。
もう歩くことも立つこともできない。
バーブノウンは死という言葉が頭に浮かぶ。
(死にたくない、死にたくない! 僕はまだ何もしてないのに!)
しかし、体は正直だった。
すでに限界は超えてしまっている。
バーブノウンの視界はぼやけ、どんどん狭くなっていく。
そして、そのまま倒れてしまった。
◇◇◇
「ん……」
バーブノウンは意識を取り戻したが、体勢と頭の感触に違和感を持つ。
頭に何か柔らかいものが。
「やっと起きた」
バーブノウンはゆっくりと目を開けると、目の前には少女の姿が。
「良かった。歩いてたら倒れている人がいたからびっくりしたよ」
バーブノウンは見知らぬ少女に膝枕されている状態だったのだ。
バーブノウンの脳がやっと状況に追いつき、あまりの恥ずかしさに素早くその場から離れた。
「えっと……君は?」
「わたし? えっとー……通りすがりの女の子」
「――――は?」
予想外の回答にバーブノウンは目を見開く。
艶やかで銀髪のロングヘア、灰色の瞳を持った少女。
ものすごく優しくて大人しそう、ではあるが……。
「わたしが偶然ここを通りかかったら君が倒れてた。もしかしたらお腹空かして倒れてるのかなって思ったんだけど、そんな感じもなかったから……もしかして地べたで寝る人なのかなって」
少しおっとりとした口調から出るおかしな発言の連続に、バーブノウンは反応に困ってしまった。
「じ、地べたに寝る人なんてそうそういないよ……。まぁ、助けてくれてありがとう。途中で気を失ってしまったみたいだ」
「気を失ってたんだ。可哀想……。じゃあわたしが慰めてあげる」
銀髪の少女は優しくバーブノウンを包み込むように抱きしめる。
「――――」
バーブノウンは驚きに目を見開いたが、だんだんと心が温かくなっていった。
今まで勇者パーティーという実力者揃いのパーティーに招待されたのに、結局は病弱な体質のせいで追放された。
のしかかっていた今までの苦しみが、全てスっと抜けていったような気がした。
「――――ありがとう。もう大丈夫」
そう言うと、銀髪の少女はバーブノウンをゆっくりと離した。
「良かった。なんか、辛そうな顔をしてたから」
「――――実はさ、僕さっき追放されたんだよ」
「追放?」
「うん……」
バーブノウンは、銀髪の少女に先程の出来事を語った。
銀髪の少女はバーブノウンの話を、頷きながら真剣に聞く。
「――――っていうことがあってさ」
「ふーん……なんか可哀想。じゃあわたしバーブノウンについてくね」
「えっ? な、なんで?」
「ここでうろついてても意味ないから……」
「まぁ、良いけど……」
「よろしく」
「えっと……こちらこそよろしく」
銀髪の少女はバーブノウンに向かって手を伸ばすと、バーブノウンは握手をした。
そしてバーブノウンは1つ聞き忘れたことがあった。
「君の名前は?」
そう聞かれると銀髪の少女は手を後ろに組んだ。
「わたしの名前はフィーダ。
「フィーダ、だね。よろしくね。じゃあ……とりあえず何処行こうかな。近くに村とかあったら良いんだけど……」
バーブノウンは頭を掻きながら、とりあえずの方向へと歩み始めた。
しかし、さきほどのフィーダの自己紹介の言葉を思い出し、立ち止まった。
「フィーダ」
「なに?」
「今さ、自己紹介言った後に何か言ったよね?」
「うん、言ったよ」
「ごめんね、もう1回言ってもらってもいい?」
「
「そっか、
「うん、そうだよ」
「そっかそっかー」
「そうだよそうだよー」
「ふぅーん……ええええええええぇぇぇ!!!」
にこやかな表情をしていたのも束の間だった。
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