第9話登校

希と一緒に行くとき別々で馬橋駅に入ってるから、いつもはこういった視線は受けない。学校でもできるだけ平穏に過ごしたいから、可憐から喋りかけてくることも滅多にない。俺と可憐が幼馴染みなのを知っているやつも同じ中学のやつらくらいだ。


可憐は四大天使の一人になっている。希もそのうちの一人だったりする。俺と希が兄妹だと知っている人も勿論いない。疑われたことすらない。似てないしな。少し悲しくなってきたわ。損だけ俺は普通の顔面偏差値ってことだからな。


馬橋駅に着いてから、二分後に電車が来た。この時間はあまり混んでいないので、普通に椅子に座れた。俺達は目の前にリュックを置き座った。


「視線すごかったですね、驚嘆みたいな視線もありましたね。大半は嫉妬の視線でしたけど、お兄様モテているのでは?」


いやモテてないだろ。一度も告白なんてされたことないんだが。嫉妬の視線は希が美少女だからそれに対する嫉妬だろう。はぁーでも俺結構知らない人の荷物持ったり、色々手伝っているのになんでモテないんだろう。もちろん手伝っているときは下心ないが。


「モテないだろ。それより二人きりなのに外面モードなんだな」


「ええ、どこで聞かれているか分からないものですから」


ならお兄様呼びでいいのか?男避けなら、下の名前で呼んだほうがよくないか?兄だとばれる方が面倒だろ。俺も希を紹介してとしつこく言って聞いてきそうだし。


「男避けなら、下の名前で呼んだ方がいいんじゃないか?」


希は顎に指を当て、小首をかしげて、しばらく考えていた。やがて目を開けて、上品に膝の上に手を置いた。


「お兄様の呼びにします。聞かれたら義理の兄で彼氏と答えるので」


義理の兄で恋人って大丈夫なのか?ああ、でも義理ならくっついてもおかくしくないか。法律的には大丈夫か。後は相手が勝手に勘違いすればいいってことだな。


「分かった。嫌かもしれないが、距離感ちょっと近くするからな」


俺は希と体をぴったりとくっつけた。うわーめっちゃフローラのいい匂いがする。同じシャンプー使っているのにこんなに匂いが違うのか。人類の神秘だ。


「いいですよ。そうじゃなきゃこんなこと最初っから頼みませんよ」


妹と家にいるより距離が近くても、やっぱりしゃべり方や雰囲気が作られたものだから、心的距離は遠く感じるな。俺は家での希の方が好きだな。電車に揺られながら、そんなことを考えていた。


やがて学校のもより駅に着いたので、電車を降りて、定期を駅員さんに見せて改札を通ると、可憐が一人で歩いているのを見つけた。可憐はこちらに気がついたのか手を振りながら、こっちに向かってきた。


「望くんおはよう!今日は希ちゃんと来ているんだね」


「おはよう可憐。今日は一緒に登校しているんだよ。今泉はいないのか?」


俺はいつもならこの曜日はいるはずなのにいないので、疑問に思い聞いてみた。


「今日は風邪で休みみたいだよ」


可憐は希をジーと見ると、感嘆した声音で相変わらず完璧な雰囲気だねと言った。


「希ちゃんの素を知っている人からするとギャップがすごいよね」


「やるからには全力で完璧にこなすのが私のモットーですから」


うちの学校は偏差値70を越える進学校なのにそこで希は成績はトップを張っている。恐らく東大にも受かるんじゃないかというくらい頭がいい。だが運動には力をいれてないらしく、クラスでも真ん中よりもちょっと上である。本当はもっと運動ができるが、周囲の評価に運動は関係ないから、抜いているらしい。


力をいれるものは一番を目指し、力をいれないものには適当に抜くというのが希のやり方だ。だが進路に関しては周囲の評価ではなく、自分の行きたい進路に行くという芯の強さを持っていたりする。どいう進路に行くかは聞かされてないが。


「じゃーまた学校でね。望くん、希ちゃん」


「あーまた学校でな」


俺達はその場で可憐と別れて、別々で学校に向かった。可憐も代わりの友達がいるだろうしな。そして俺達は歩きだし、希とアニメの会話をしながら、学校に向かっていた。


そして学校にすぐに着いて、中に入ると、好奇の視線を横から前から後ろから、あらゆるところから受けた。はぁーいつもだったら、俺の影の薄さで、誰にも気がつかれないのに今日は希がとなりにいるから、目立つ。


「はぁー視線をあまり受けない学校生活を送っていたから、精神的に疲れるな」


出掛けてるときの視線も結構くるが、学校は一瞬じゃなく長く見られるから、きついのだ。


「お兄様も視線に慣れたら、どうですか。この機会に」


「慣れなくていいんだよ。普段は誰にも気づかれないだから」


まじで、ミスディレクションができるんじゃないかってくらい影を薄くできるんだよ。だって可憐と希以外に見つからなかったぐらいだし。


「お兄様目だ....だたないですよね。影が薄すぎて」


「途中まで違うこと言うんだったら、最後まで言わないでほしかったわ。人に言われると、なぜか傷つくからな」


俺達は下駄箱で靴に履き替えて、じぁなと言って、それぞれ教室に向かった。たぶんいろんな視線を教室でも受けるんだろうなぁーと溜め息をはきたい気分になりながら向かった。


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俺の好きな幼馴染みは別な人が好きなようです 作家目指すもの @Ronisei

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