地球は青かった

すでおに

地球は青かった

 まだ地球の外を一緒くたに『宇宙』と乱暴に呼称していた21世紀の初頭。人々は口を揃えて言った。


『これからは宇宙の時代になる』と。


 宇宙は希望だった。果てしなく広がる暗闇に未来を見た。宇宙開発に人類の英知が注ぎ込まれ、世界の富豪たちが地球からの脱出を競った。


 しかし希望は時に目を眩ませる。地球人は忘れていた。人類の歴史は、すなわち戦争の歴史であったことを。地球を飛び出すほどに発達した文明もまた戦争によってもたらされたことを。漆黒の宇宙が地球人を盲目たらしめたのかもしれない。


 庶民には手の届かない財産と自由な時間と旺盛な好奇心さえあれば宇宙旅行が実現できるようになった21世紀の中頃、地球人はついに宇宙人と出会った。地球外の生命体との出会いは、誕生から46億年、地球史上における最大の僥倖であった。


 地球人が存在すら知らなかった星は、必然地球とは比肩できないほど文明が発達していた。地球では最先端の技術が、その星では中世のそれにすぎなかった。その星に教えを請えば、自前の開発よりも得るものが膨大なのは明白で、星から地球に特使を招いた。


 文明は歴史上類を見ない飛躍を遂げる。地球人は心を躍らせた。


 特使の乗った宇宙船が地球に着陸する様子はインターネットを通じて全世界に配信された。地球外生命体が歴史上はじめて地球に降り立つ瞬間を、40億を超える地球人が固唾を飲んで見守った。


 いよいよカウントダウンが始まった、その着陸地点で爆発が起きた。


 一体何が起こったのか、地球人には理解することはできなかった。幸いまだはるか上空にあった宇宙船にダメージはなかったが、すぐに宇宙のかなたへ消えて行った。


 やがて星からメッセージが届いた。我々を騙した、これは宣戦布告であると。誤解である、決して我々の意図したものではないとすぐさま地球から謝罪のメッセージを送り返したが、聞き入れてはもらなかった。星からやってきた軍隊が地球に総攻撃を加えた。はるかに文明の進んだ星の攻撃に地球の兵器が敵うはずもなく、地球は真っ赤に焼き尽くされた。


 あの爆発は、地球侵略の正当性を誇示するための自作自演の陰謀であったのかもしれないが、それに対する備えすら地球にはなかった。ようやく思い知らされたのだった。


「地球人は青かった」と。

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地球は青かった すでおに @sudeoni

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