第9-4話「家にいないけど」
直美先生から麻薙が家に帰ったと聞かされた俺は麻薙の家へと向かっていた。
俺に会わないようにと放課後に入ってからすぐに帰宅した麻薙に会いに行ったところで外まで出てきてくれるかは分からないが、今はとにかく思った通りに行動するしかない。
麻薙の家に到着した俺は迷わずインターホンを押した。
「あ、あの。健文だけど」
「あら、健文くん?」
「あ、麻薙。話がしたいんだ。ちょっと外まで……」
「どうしたの? 今十祈ちゃんなら家にいないけど」
話し出してすぐは気付かなかったが、インターホン越しに喋り出したのは麻薙ではなく麻薙の母親だった。
「え? お母さん? 麻薙家に帰ってないんですか?」
「ええ。そうだけど、十祈ちゃんと何か約束でもしてたの?」
「あ、あの……そういうわけではないんですけど……。すいません、急にお邪魔してしまって。またお邪魔させていただきます」
「え、ちょっと健文くん?」
麻薙の母親からすれば約束もしていないのに急に家にやってきておきながら、特に何をするわけでもなくその場から立ち去られればわけが分からないし気にもなるだろう。
しかし、麻薙が体調不良で学校を出て自宅に向かったのに家にいなかった、なんて状況を正直に伝えたら麻薙の母親は心配してしまう。
変な心配をかけるくらいなら麻薙が学校を出ているのに家にいなかったことは隠して、先に麻薙を見つけてしまった方がいいはずだ。
そう考えた俺は麻薙の家に向かっていたときよりもスピードを上げて再び麻薙の捜索を始めた。
◇◆
麻薙を探し始めて一時間が経過したが、麻薙の姿は見当たらない。
こうして走り回るよりも先に麻薙に連絡を取ろうとメッセージも送ったし電話もしてみたが反応はなかった。
麻薙が行きそうな場所に心当たりはないので、手当たり次第に走り回っていたのだが麻薙の姿はどこにも見当たらなかった。
あいつ……。まさか体調なんてこれっぽっちも悪くなくて、何か理由があって早く帰っていったのか?
その理由がなんなのかと考えれば、おそらくは俺が原因なのだろう。
早く見つけてやらないと……。
とはいえ、これ以上麻薙を探す場所にアテはない。
「あれ、どうしたの? まだ制服ってことは寄り道でもしてたの?」
途方に暮れながら駅前を歩いていると、私服姿の千国と出会った。
「実は体調不良って言って早退した麻薙が帰ってないみたいで……」
「……え? じゃあ早く探さないと。もう結構探したの?
「ああ。俺が思いつきそうな場所は大体な」
「分かった。私も探してみる。一緒に探しても仕方がないだろうし手分けして探そう」
「すまん……。助かる」
そして麻薙の捜索には千国も加わり、俺は再び捜索を始めた。
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