お仕事9

第9-1話「珍しいわね」

 テスト期間を終え、無事にテストを終えた俺は気を抜いて授業を受けていた。

 テスト期間が終わって次の日の授業くらい気を抜いたって文句を言ってくる人はいないだろう。


 このテスト期間はテスト以外にも疲労が蓄積することが多かった。


 教室内で麻薙を避けているのも意外と体力を使うし、何より図書館で千国にキスをされたことに対して、なぜ俺にキスをしたのかと毎日のように考えていたので頭が割れるかと思った程だ。


 もうすぐ午前中の授業が終わる。


 昼休みはゆっくりしたいところだが、今日俺は昼休みに麻薙に話しかけに行こうとしている。


 俺の方から麻薙をさけていたのでここ最近俺と麻薙の間に会話はなかった。

 それに、テスト期間は委員会がないのでどうしても麻薙と会話をしなければならないという状況もなく、麻薙と会話をするのは本当に久しぶりだ。


 とはいえ、俺が麻薙を避けておいて、俺の方から話しかけても麻薙が俺と会話をしてくれるかと言われれば怪しいところではある。


 しかし、このテスト期間中に麻薙が俺に話しかけてきた理由が父親が保健委員長だったからだとしても気にせずに麻薙と関わると決めた。

 だから、今ここで弱気になって麻薙に話しかけないわけにはいかない。


 授業が終了する合図のチャイムがなまた後で俺はすぐに麻薙に話しかけにいった。


「あ、麻薙。一緒に昼飯でもどうだ?」

「健文くんの方から私を誘ってくるなんて珍しいわね」


 久しぶりの会話ではあるが、とりあえず無視をされなかっただけでも今のところは成功と言えるだろう。

 麻薙はいつも通りの反応だし、このまま話していけば一緒に昼食を食べてながら会話をして元の関係に戻れるはずだ。


「あ、ああちょっとな。屋上でも行くか?」

「私、他の友達とご飯を食べる予定があるから。千国さんとでも食べてこればいいんじゃない?」

「--え? ちょ、ちょっと麻薙さん?」


 麻薙はそう言って俺の前から立ち去っていった。

 麻薙の今の反応に、違和感を覚えずにはいられない。


 まず一つ目の違和感は、そもそも麻薙には一緒にご飯を食べられるような仲のいい友達はいないはずなのに麻薙が友達とご飯を食べると言った点だ。


 別に避けられているとかではなく、麻薙が高嶺の花すぎて誰も友達にならないという理由まで知っているだけに、麻薙がご飯を誰かと食べるというのは違和感がある。


 そしてもうひとつは、俺に対して千国と一緒にご飯を食べたらどうかと進めてきた点だ。


 今までの麻薙は千国に対して対抗心のような物を持っていたし、俺と千国を自ら二人っきりにさせるような発言は絶対にしなかった。


 それに、さっきの麻薙、どこか怒っていたような……。


 俺があまりにもあからさまに麻薙のことを避けていたから怒ったのか?

 だとするなら、誠意を込めて謝罪をしなければならないだろう。


 ……まあとりあえずは千国と飯でも食うか。

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