第7-5話 「デートでしょ?」
「もういいわよ……ってなんで正座してるのかしら」
リビングから追い出された俺は麻薙の着替えが終わるまでの時間に冷静になって考え直してみた。
同級生女子の下着姿を見るって犯罪なんじゃね? と。
同意があるのなら話は別だが、いくら故意ではなかったとはいえ女子からすると下着姿を見られるというのは男子が股間を見られるのと同じレベルで恥ずかしいのではないだろうか。
男子が下着を女子に見られるのなんていくらでもある話だが、男女が逆となればカップルでもない限りそうそう起こりえる話ではない。
そんなことを考えていたら、自分がとんでもないことをしでかしたのではないかと思い始め自分でも気付かぬうちに正座をしてしまっていた。
その姿勢から繰り出される謝罪といえばもちろん……。
「すいませんでしたぁぁぁぁ!!」
麻薙がリビングから出てきて俺の正座姿について疑問を投げかけてきた後ですぐ頭を床に付けた。
日本人最上級の謝罪、土下座である。
「別に謝る必要なんてないわよ。ママが勝手にリビングに招いたのが原因なんだし」
「そうはいっても謝らないと気が済まないし」
「どうせなら下着の下も見てみる?」
……いや、今更いつも通りの強気のフリしたって遅いだろ。
動揺して大声上げてリビングから俺を追い出した人間が言うセリフじゃないだろそれ。
そう突っ込みたくなったが、麻薙が無かったことにしたいのなら余計な口出しをするのはやめておこう。
「別に下着も下着の下も見たくねぇよ」
「あら、我慢は体に悪いわよ」
「別に我慢なんてしてねぇし」
「そうやって言う人は大体我慢してるのよ」
ついさっきまで、余計な口出しをするのはやめておこうと考えていた俺だったが、流石にイラッとしたので先程の反応について指摘することにした。
「麻薙こそ、今更取り繕ったってさっき動揺してたのはなかったことにはならねぇからな」
「動揺なんてしてないけど?」
「いや、明らかに動揺……」
「動揺なんてしてないけど?」
「あれは流石に……」
「してないけど?」
こいつ、先程の動揺した姿は何が何でも無かったことにするつもりだな……。
まあ確かに先程の動揺した姿を認めてしまったら麻薙のキャラクターは完全に崩れ去ってしまう。
俺が麻薙の立場であっても先程の姿は何とかして無かったことにしたい姿である。
「とりあえず行くか?」
「ええ。今日のデート、期待してるわね」
「で、デート!?」
「男女が二人で遊びに行くんだからデートでしょ?」
「さすがにその理論は無理があるような気もするが……」
「ほら、早く行きましょ」
意識しないようにしてはいたものの、麻薙から言葉に出されて更に意識してしまう。
麻薙は今日の誕生日祝い大作戦をデートだと本気で思っているのだろうか。
そんなことを考え続けていても答えは出るはずもなく、麻薙から急かされた俺はそそくさと麻薙の家を出た。
家を出た後も、麻薙の下着姿が頭から離れず悶々としていたことは言うまでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます