第6-9話 「一言も言ってないけど……。」
ポスターを貼り終えた私は保健室へと戻る最中に職員室に直美先生が入っていくのを見かけた。
保健室に直美先生がいないとなれば、ほしくんと保健室で二人きりになれるのではないか⁉︎
と一瞬心を躍らせたが、保健室には先程すれ違った麻薙さんがいる可能性が高い。
というか絶対いるだろう。
それなら最初から期待しない方が落ち込まないで済む。
そう考えながら保健室へと入室した。
「ポスター貼り終わったよー……ってあれ、ほしくん一人?」
絶対に麻薙さんがいると決めつけて保健室へ入ったのだが、保健室にはほしくんの姿しか見当たらない。
「さっきまで麻薙も直美先生もいたんだけどな。二人とももう出ていったよ」
「そ、そうなんだ……」
ってことは本当にほしくんと二人きりってこと⁉︎
それは願ってもない状況だ。
とはいえ私の部屋での出来事もあるのでこの状況に気まずさを感じる部分もある。
しかし、麻薙さんを出し抜くにはもってこいの状況だ。
今保健室で私とほしくんが何をしていてもそれを止める者はいない。
いや、何考えてるのよ私、ここは学校だよ⁉︎
というか学校とか以前にそもそも私まだほしくんとそんなことをする関係性になるつもりはないんだけど⁉︎
「なぁ、これって何かわかるか?」
「ん? これ?」
頭の中で変な妄想を繰り広げていた私に対してほしくんは机の上に置かれたアルバムを指差して訊いてきた。
「このアルバム、さっき保健室に来た時も直美先生が見てたけど何のアルバムなのかなと思ってさ」
ほしくんが指差しているのは麻薙さんのお父さんが写っている卒業アルバムだ。
直美先生、危機管理能力無さすぎない⁉︎
「な、ななななななんでこんなところにそそそそそんなに古そーなアルバムが置いてあるるるるんだろうねー?」
「いや、どうした? 明らかに様子がおかしいけど」
「べべべべ別に⁉︎ 何もおかしくないけど⁉︎」
そのアルバムについて訊かれて動揺するなという方が無理があるだろう。
麻薙さんがひた隠しにしている事実がほしくんに伝わってしまう可能性があるのだから。
私にとっては麻薙さんは恋の好敵手で、ここで秘密をバラしてしまえば麻薙さんとのレースを一歩、いや、百歩はリードできる可能性がある。
でも私は友達を売ってまでほしくんを手に入れたいとは思わない。
「それならいいんだけど……。麻薙保成……」
「え、ちょっとなんで麻薙さんのお父さんだって分かったの⁉︎」
「いや、麻薙の親父だとは一言も言ってないけど……。まあ珍しい苗字だしきっとそうなんだろうなとは思ったけどな。今の千国の発言で確信に変わったよ」
はいやらかしましたー。どうやら私はほしくんの言葉に乗せられて麻薙さんの秘密をバラしてしまったようだ。
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