第6-7話 「自慢じゃないけど‼︎」

 意外と私ってすぐに動揺する女だったのね……。


 そんなことを考えながら放課後の化粧室で今日の自分の行動について反省していた。


 千国さんから健文くんの話を聞いた私は動揺してしまい、問い詰めるだけならまだしも機嫌を悪くし、明らかに不機嫌な態度で教室を後にしてしまった。


 健文くんからしたら間違いなく印象は悪かっただろう。


 それに普段は保健室に行くときに無理矢理にでも健文くんを連れて行こうとするのに、急についてこないでと言われたら混乱するだろう。


 いつものように冷静になって健文くんをあざ笑うような話し方ができればよかったのに……。


 そう後悔しながらも、今日健文くんと千国さんが保健室に来ることを直美先生から聞いていたので、私はトイレを出て保健室へと向かった。


 よし、あくまでいつも通り、いつも通り接するのよ私。


「あれ、麻薙さん?」

「ち、千国さん? どうかしたの?」


 保健室に入室する前に千国さんと出会してしまい動揺する私。

 さっき動揺しないでおこうって決心したばかりなのに……。


「今保健室に行ってたところで今から手洗いポスターを貼りにいくの。麻薙さんは?」

「あ、私? 私は少し体調が悪かったから保健室に行こうかと思ってたところよ」

「そうなんだ……。麻薙さん、ひとつ聞いてもいい?」


 千国さんが何を聞きたいのかは知らないが、何やらこれまで目にしたことのないくらい真剣な表情をしている。


 どちらかと言えば私に対して苦手意識を持っており、自ら関わりを持とうとはしてこないはずなのだけれど。


「何かしら」

「麻薙さんはお父さんが保健委員長をしていたからほしくんに近づいたの?」

「……それ、誰から聞いたの?」


 誰から聞いたのかと尋ねたが、この話を知っているのは直美先生しかいないので、伝えたとしたら直美先生なのだろう。


「直美先生」


 誰から聞いたのかと尋ねたが、この話を知っているのは直美先生しかいないので、伝えたとしたら直美先生なのだろう。


 確かに健文くんには伝えないでほしいと伝えていただけなので、健文くん以外の人に話すのは問題ないのだけど……。


「……はぁ。別に私は自分の父親が保健委員長だからって理由で健文くんに関わったわけじゃないわよ」

「本当に? それが理由じゃないの?」

「それが理由なのだとしたら高校に入学した時から健文くんに関わりに行ってるわよ。私が健文くんと関わり始めたのは2年生になってからだし、テストの日に助けてもらったから関わりを持つようになったの」

「……そうなんだね。それなら同じだね」

「同じ?」

「私も麻薙さんもほしくんのことが好きってこと」

「--っ。そんな恥ずかしいことよく堂々と言えるわね」

「麻薙さんより長いことほしくんといるからね‼︎ 自慢じゃないけど‼︎」

「--っ」

「それじゃあ私はポスター貼ってくるから‼︎」


 そう言って麻薙さんは私の前から去っていった。


 ……食えない人ね。

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