お仕事5
第5-1話 「始めての委員会?」
今日は委員会開催日で俺は誰よりも早く開催場所の教室に来て席に座り準備をしていた。
各席に資料を置いていると教室に入ってきたのは千国だ。
「お疲れーって行っても今から委員会だからまだ仕事は残ってるんだけどねーっ。早く帰りたいな〜」
「俺も同じ気持だよ。なんなら早く保健委員長やめたい」
「そうやって言いながら続けてる辺り、やっぱり天職なんだと思うけどなー」
「それなら理由もなく欠席する保健委員が多い中で毎回サボらず参加してる千国もこれが天職なのかもな。将来は保健の先生してたりしてな」
「いやいやー、流石にそれはないと思うけど」
千国には天職だなんて言われたりしているが、保健委員長は俺には向いていないと思う。
とはいえ、すくニコ報の一件で麻薙のように自分が書いた記事を見てくれている人がいることを知り以前よりはやりがいを感じているのも事実ではある。
まあとりあえず文句たらしながらも辞めずに続けてはみよう。
「そういえば武田くん、柔道の全国大会に出ることになったらしいよ」
武田とは、俺たちと同じく二年生の保健委員である。
「へぇ。全国はすごいな」
「ほしくんはなんで部活やってないの?」
「やりたくないからやってないわけじゃないぞ。部活見学に行った時、俺の目つきが怖すぎてどこに行っても避けられたから入部してないだけだ」
「そんな理由で部活してないのほしくんくらいだろうね」
「まあそもそも俺レベルに目つきが悪い人間なんて中々いないからな」
「まあそれはそうだね。それでね、武田くん部活が忙しくなるから保健委員会やめちゃうんだって」
全国大会に出場するほどのレベルなら放課後に委員会に参加している暇なんてないだろう。間違いなく委員会よりも練習を優先するべきだ。
委員会なんて全国大会出場に比べたら価値なんて無いのだから。
「まあ仕方がないな。全国大会に出るレベルなら流石に部活優先だわ」
「今日から代わりの人が来るって直美先生は言ってたけど誰なんだろうね」
「まあ誰が委員会に入ってきても構わないけど……」
「こんにちわ」
俺たちの会話に飛び入りで参加してきたのはこの教室には用事がないはずの麻薙だ。
「あ、麻薙さん!?」
「そんな怖い目で睨まなくても保科くんを取って食ったりはしないわよ」
「な、何言ってるの⁉︎ ほしくんが取って食われたからって私はどうでもいいんだけど⁉︎」
いや、どうでもいいは流石に傷つくんだが。
取って食われそうになったら救いの手を差し伸べてくれ。
「何しにきたんだ?」
「何しにきたんだって、それが保健委員に対して委員長が言うセリフかしら」
「いや、麻薙は保健委員じゃないんだからここに用事なんてないだろ?」
「ごめんごめーん‼︎」
麻薙の発言に疑問符を浮かべていたところに直美先生が急足で教室へとやってきた。
「どうしたんですか? そんなに急いで」
「保科くんに言い忘れてたことがあって」
「言い忘れたこと?」
「そうそう、言い忘れたこと……ってあら、早いのね麻薙さん」
「始めての委員会なので、早めに出席しようと思いまして」
「「始めての委員会?」」
俺と千国は顔を見合わせた。
「そうそう。今日から柔道部の武田くんに変わって、麻薙さんに委員会に所属してもらうことになったから」
直美先生の言葉に俺は呆然と立ち尽くすしかなかった。
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