第2-2話 「私の家に来て」
昼休み、千国に問い詰められる前に教室を出ようと考えていた俺だっだが、流石に隣の席ともなるとそう上手くはいかない。
「ちょっとほし君、逃げないでよ」
「べ、別に? 逃げようとしてたわけじゃないけど?」
嘘です逃げようとしてます。
「まあ逃げようとしても絶対捕まえるけどさ」
え、いつもより発言内容がちょっぴりハードなんですけど千国さん? もしかして本性はそっちだったりします?
「ま、まあ逃げてないから捕まんないけど」
「それよりどういうこと⁉︎ 何でほし君と麻薙さんが仲良さげに喋ってるの⁉︎」
「こないだのテスト、遅刻してきて補修になっただろ? その原因ってのが道端で蹲ってた麻薙を助けたからなんだよ。それから少し関わるようになったってだけだ」
「それはまあ理解できるよ。確かに助けてくれた人に恩を返さないとって思ったりとか仲良くなりたいって思ったりするのは分かる。でもさ、お姫様抱っこってなんなの⁉︎」
ごもっともなご意見です。俺自身そう思うんだから。
お姫様抱っこを要求してきた麻薙の体調は悪そうには見えなかったし、ただ体調が悪そうだったところを助けただけの俺になぜお姫様抱っこで保健室に運んでほしいと求めてきたのかは理解できない。
「いやだから、それは俺から言ったことじゃなくて麻薙の方からだな……」
「麻薙さんがそんなこと言うわけないでしょ⁉︎」
それもごもっともなご意見だと思うよ。俺も麻薙はそんなこと言うキャラじゃないと思ってたから。
でも実際言ったんだよ。そっちが本性なんだよ。
「いや、そう思うかもしれないけどな……」
「自分の罪を人のせいにしようとするなんて最低‼︎」
罪ってまた大袈裟な……。別にお姫様抱っこするくらいでは罪にはならないだろ。
まあそれが無理やりとかなら問題はあるだろうけど。
「だから、俺が麻薙をお姫様抱っこしたのは麻薙に言われて……」
「御宅は結構‼︎ とにかくほし君はもう麻薙さんをお姫様抱っこしたらだめだからね!! 会話するのもほどほどにしなさい‼︎」
そう言いながら、千国は購買へと向かっていった。
言われなくてもそうするつもりだよ。
俺から麻薙の方に関わろうとするなんて恐れ多くてできるはずがない。
そう思っていた矢先、教室の出入り口から顔を出し、何やら手招きしている人物の姿が見えた。
見て見ぬ振りをしようと思ったが、明らかにこちらを向いて手招きしているので無視もできない。
「……はぁ。どうしたんだよ麻薙」
俺と千国の様子を見計らって千国が教室を出て行ったタイミングで俺に視線を送ってきたらしい。
麻薙とはあまり関わるなと言われたばかりなのに、こうして麻薙と会話するのは流石に罪悪感がある。
「ちょっとお願いがあってきたんだけど」
「またお姫様抱っこするとかってわけわからんお願いはやめてくれよ」
「私今日ちょっと体調が悪いんだけれど……」
「また保健室に連れて行けばいいのか? でもお姫様抱っこはなしな。せめて肩を貸すくらいに……」
「違うわ。私の家に来てって言いに来たの」
「--は?」
俺は自分の耳を疑ったが、その何かを企んでいそうな笑顔を見る限り、どうやら俺の聞き間違いではないらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます