第17話 懐かしい香り
あの手鏡は·····今も手元に大切に保管してある。――――あの日、老婆と別れた私を兄様達は叱ることなる受け入れ優しく迎え入れてくれた。
幼い記憶の欠片の一片が、懐かしい香りを呼び起こし脳裏が痺れた。
「あの香り·····どこかで·····」
老婆から感じた懐かしさ·····
(明らかにおかしい·····?)
1つの疑問が脳をよぎる。―――私は、本当に久乃という人なのだろうかと·····。何時からか、感じていた違和感。大人になるにつれ、自分の存在を疑うことはなくなったが幼少期は、常に心の片隅に抱いていた。微かな疑い。――――己の本当の姿を、誰もが隠そうとしている。
久乃の、不安を煽るように立ち込めだす煙が、強引に久乃の思考を正常なものへと導き戻し、当たりを渦巻く無数の敵兵に怒りが込み上げた。
「悩んでる暇は与えてはくれぬようだな」
(―――今はまだ、
立ち込める重たい空気を自らの心に背負い。久乃は前へ進む決意を固めるのだった。
煙と炎が村を包み
逃げ惑う人々を他所に歪な音色を口ずさむ。
華も消えうる僅かな時に
首をもがれた哀れな鳥が
悲し悲しと鳴いている
紅い花、散った
蒼い華、咲いた
流る紅は美しく笑うは華には毒ひとつ
「この
黒銀の衣に身を包んだ女の姿が、ひとり燃え盛る炎に照らされた映し出される。
「哀れな女の最期を表したようですね」
奥から姿を表す影は同じく黒銀色の衣に身を包み軽やか足取りで女に近付くと柔らかな笑みを浮かべた。
「
「
2人の笑みが交差し消えゆく村を見つめる。
――――そこへ禍々しいき黒き力を手に入れた左近の姿―――――。
「…成功したようだね」
「ええ。凄まじい力を感じます·····」
身の毛もよだつ左近の風貌にぞわりと身震いし2人は――――何処か悲しげな表情を浮かべるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます