第10話
僕は3つのシナリオを考えた。
1. 今すぐ彼女に告白する
2. このまま告白せず、先生と生徒の関係を続ける
3. 彼女の受験が終わったら、告白して塾を辞める
1のシナリオが最も自分の気持ちに正直な選択であり、最も危険な選択でもあった。告白したら何かしらの変化が起きるのは必然で、塾や彼女に迷惑をかけてしまう可能性が高い。そして僕自身も社会的に制裁を受けるかもしれない。自分の気持ちに正直に生きていたいけど、正直になることで大切な人たちを傷つけるのなら、我慢した方がいい。僕にとって一番つらいのは、自分の行動が彼女の人生の邪魔になってしまうことだった。
2のシナリオを選択すれば、彼女や塾に迷惑をかける可能性は著しく低くなる。しかし、それと裏腹に自分自身は相当な苦しみに耐え続けなければならないだろう。自分の気持ちに嘘をつき続け、それでも近くで彼女と向き合わなければならない。一緒にいられることは確かに幸せだが、僕はもうすでに耐えることに限界を感じていた。
3のシナリオは僕にとってベストな選択だった。先生として彼女が志望校に合格するのを助け、役目を果たした後で自分の気持ちを伝える。そして、塾に迷惑をかけるのを避けるために、講師をやめる。僕は、塾の講師という仕事が大好きだったし、大きなやりがいを感じていた。だからこそ、もっと続けたい気持ちは当然あった。しかし、生徒を好きになることは先生としてあるまじきこと。自分の中でのけじめとしても、もう続けられないと思った。
僕は決断した。受験が終わるまでの残りの期間を頑張って耐えよう。そして、彼女に気持ちを伝えよう。世間から見たら僕の選択は身勝手だと思われるかもしれない。今まで僕を慕ってくれていた友人にも、お前ってそんな奴だったんだと失望されてしまうかもしれない。気持ち悪いって思われてしまうかもしれない。それでも僕は、誰に何と言われようと、どう思われようと、自分の好きを伝えたい。好きな人にこの気持ちを知ってほしい。
この時、自分にとって絶対に譲れないものが何なのか、わかった気がした。
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