第3話

 対面授業が開始された。僕は彼女の授業を引き続き担当したかったが、それは一講師の僕が決められることではなかった。


 彼女と初めて教室で顔を合わせる日がやってきた。授業を担当する講師が自分だとわかって、その時は舞い上がるような気持ちだった。彼女は、画面越しで話したことをちゃんと覚えてくれていて、僕のことを認識してくれた。面と向かって話すのは初めてなのに、不思議と馬が合った。


 その日の授業の終わり際、彼女が僕に尋ねてきた。


「これからずっと先生が担当?」


「塾長に聞いてみないとわからない。」と僕は答えた。彼女は、純粋に聞いただけだろうけど、僕はその質問の裏に何かしらの思いがあるのではないかと考えた。これからも僕に担当してほしいと思っているかもしれないし、その反対に嫌だと思っているかもしれない。


 僕は昔から、他人が自分のことをどう思っているのか気にしすぎてしまう性格だった。人に嫌われたくないという思いが強く、大人数の中にいるときは特に、空気を読んで振る舞うことが多かった。だから、この時も無意識のうちに彼女が僕のことをどう思っているのかが気になっていた。


 僕は塾長に、彼女の担当講師は誰になるか聞きに行った。


「担当はこのまま先生にお願いしようと思っています」


 そう塾長から聞いたとき、純粋に嬉しいと思った。でもこの嬉しさに少し後ろめたさを感じていた。僕はできるだけ冷静を装って、彼女がいる席へと戻った。




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