050 その向日葵は黄金に移ろう③
……ビクリ。
私は体を
やがて本棚の影から姿を現す……一人の少女。
その小さな体には似つかわしくないほどの
右へ左へ、少女はフラフラとしながらもこちらに向かって
「…………」
しかしながらも、
ふとした
「あっ」
そしてそのまま、私が見ている前で音を立てて転んでしまう。
〈どてっ━━〉
……
起き上がろうとして顔を上げた少女は目をまんまるとさせ、少しの間こちらをジッと見つめていたが……
私が座っている
「だめよ、そこはリリーの場所なの。今から、この……ん…………しょ。今から、この図鑑をそこで見るんだから」
パタパタと自身の衣服をはたき、床に落としてしまった大きな本を重そうに持ち上げた少女が……そう言って、
「━━━━」
やや離れた場所からだが、確かに聞こえてくる。
「━━━━!」
どうやらこちらを探している様子で、その声は
ああ、もう終わりだ……
またどこかに閉じ込められてしまう……
どうして、こんな事に……
私は……私はただ…………
「う……ぁ……」
私はすぐ
なおも近づき、確実に大きくなってくる私を探す修道服の女性の声……
……その時。
私の頭に、何か、
「大丈夫、もう一人じゃないよ」
少女の声だった。
少女は
……大丈夫。その言葉と、少女の
そして、そんな少女が私の頭を優しく
「…………」
それを見た少女が、ふわりと
……そこで初めて、
「━━ああ、ようやく見つけました。ここに居たのね、急に居なくなってしまうから……何かあったのではと、とても心配しましたよ?」
いきなりと聞こえた呼び声に、
思わず席を立とうとする私。しかしそれよりも早く、その少女は両手を腰に当てつつ私達の間へと割って入った。
「だめっ! こっちに来ないでっ」
「リ、リリー? 彼女は来たばかりで、まだ手続きが……」
「´この子´……とても怖がっているの。だから、慣れるまではリリーと一緒。あなたは近付いちゃダメ」
「ですが、ここの案内もまだ━━」
「決めたのっ!」
まだ何か言いたげな様子の修道服の女性ではあったが……
「ふぅ…………分かりました。彼女の事は
「うんっ!」
そう大きく
「みんな最初は同じなの。だから大丈夫よ? それに……」
「ここはいい所。だから、大丈夫」
「う……?」
「すぐに´お話´も出来るようになるから平気よ。リリーは何でも知ってるから、何でも聞いてね」
そうして少女は目の前にある図鑑の中へと、その意識を
自身の
そんな初めてだらけに
~~~~~~~~~~
「……ありがとう、リリー」
「今までずっと助けてもらってばかりだったけれど……助けてくれた、支えてくれたのが…………リリー、あなたで良かった……」
「……うん」
少女は机の上で静かに座っていたクマのぬいぐるみを持ち上げ、ぎゅっと抱きしめ、光に包まれた
「……やっと、願いが
彼女が座っていたその
「…………」
「…………」
クマのぬいぐるみをひたすらに強く抱きしめる少女。
少女に強く抱きしめられるクマのぬいぐるみ。
言葉は
〈━━ドサドサッ〉
見れば床に
「あ……の…………わ、私っ、お師匠様に言われてっ! 本を返しに……し、書類も届けないと……
でも、二階から光が見えたから……その……え、えっと……
あ、あれれ? 私ったら、ここに何しに来たんだっけ…………あ……あはは……
ごめんね? リリーにこんな事言っても、困っちゃうよね? ……ごめんね?」
若いシスターは
そっと顔を見合わせる少女とクマのぬいぐるみが、何も言わず、それに続く。
「……ほら、向こうにも落ちてたぞ?」
「あ、ありがとロッコ! 助かる……ます!」
張り付いたような、若いシスターのニコニコとした笑顔。
「リリーもロッコも……なんかごめんね〜? あははは!」
「……大丈夫?」
無理やりと明るく振る
「えっ? ……な、何が? お姉さんは元気いっぱいよ! ……ほら見て!」
´今にも´な表情で、そう元気をアピールする若いシスター。
しかし、それも長くは持たず……
「……んもう、手伝ってくれるなんてリリー大好きっ!」
そう言葉を変えると、若いシスターは目の前にいる少女をぎゅっと抱きしめた。
「ふんふんふ〜ん」
「……いなくなっちゃったわけじゃないよ」
それを聞いて、動きと
「ちゃんとそこにいるよ」
「うん」
「お話は出来ないかもしれないけど、ちゃんと聞いてるよ」
「……うん」
「今までの事はずっと覚えてるし、ずっと忘れないよ」
「…………うん」
「だから……」
「…………」
少女が、自分を抱きしめている若いシスターの腕の中から……その顔を上げる。
「……だから、泣かないで?」
「…………う゛ん゛っ」
少女の
若いシスターは少女を抱きしめたまま、大きく声をあげ、目を赤く
……その日は雨だった。
少しだけ
人目も
ドール・リコレクト ななくさ @nanakusa-nazuna
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