048 その向日葵は黄金に移ろう①
……その日は雨だった。
少しだけ
人目も
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「━━私……決めたわ。リリー」
バジリカの敷地内。
大図書館二階にあるいつもの場所にて、クマのぬいぐるみと一緒に楽しげな様子で本を
「?」
すぐ横にある窓の外は
空にかかった分厚く黒い雲が太陽を
そのため……
「なあに?」
そう言って不思議そうな顔を見せる少女に、言葉を返したようで、ただ
「……こっちにおいで、リリー。…………一緒に読もう?」
そんな
普段からよくある事、よくある提案。
「ロッコもいい?」
ただ、今はちょっとだけ……ちょっとだけ、
「ええ、もちろん」
「……ロッコ、あっち行こ?」
「おう」
「……?」
ふわりと頭に
そして、一冊の絵本の表紙は…………静かに、ゆっくりと
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ここは深い深い森の中の、大きな大きな木の根元にある……小さな小さな一軒のお家。
そこでは、
まあるい眼鏡をかけた、何でも知ってる物知りなお父さんウサギ。
その後ろにくっついて、どんな時でも離れようとはしない小さな子ウサギ。
子ウサギが生まれた時からいつもいつでもそばにいて、子ウサギが気になる色々な事を、お父さんウサギはいつもいつでも教えてくれるのです。
「━━お父さんお父さん、これは何ですか?」
さっそく、外を散歩していた子ウサギが前を行くお父さんウサギに
「これはね、´花´だよ。いろんな形や色、それに香りで……それを見たみんなを、元気にしてくれるんだ」
「ふむふむ」
少しすると、再び子ウサギは
「お父さんお父さん、これは何ですか?」
「これはね、´川´だよ。川をどこまでも流れていく
「ふむふむ」
目に
やがて━━
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「やがて……」
自身の
読み進めていくにつれて少しずつと近づく、物語の´終わり´。
そこに……何かを心配する様な
「……もう終わりにする? あとは、ロッコと読むから大丈夫だよ」
「ご、ごめんね、リリー。続き、気になる……よね?」
少しの
「……うん、大丈夫。大丈夫、大丈夫……」
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やがて……周囲に夜が
ぴょん、ぴょん。
ぴょん、ぴょん。
真っ暗になる前に、お家まで帰ってきたウサギ達。
さっそく夜の食事の準備を始めるお父さんウサギの
「さあ、ゆっくりとお休み……」
一日も終わり、お父さんウサギはそう言って子ウサギを優しく寝かしつけようとしますが……子ウサギのほうは、まだまだ気になる事がいっぱいです。
ふと、窓の外。遠く……遠くで輝くものを指差して、子ウサギは
「お父さんお父さん、あれは何ですか?」
「あれはね、´お月さま´だよ。夜になって、´お日さま´が眠ってしまうと外は真っ暗になってしまうから……代わりに、みんなを
「ふむふむ」
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再び、その動きを止める
どうやら次が
「終わる……終わってしまう…………物語……わ、私は……」
気が付けば言葉を
「……ん?」
「…………」
目の前にある絵本の行く
だけども、小さな右手は抱きしめていたクマのぬいぐるみからは離れ……
「大丈夫、リリーもロッコもいるよ。……大丈夫」
いつだったか、
「あっ……」
自身に
少女の口からは、言葉が続くことはない。しかしながら、
「…………」
「…………」
しばしの後、少女の口が開く。
「……次が最後だね」
「…………。うん。私はもう、大丈夫」
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「……どうだい、
お父さんウサギが、´お月さま´を見ながら言いました。
「お父さんは……´お月さま´に行った事があるのですか?」
「そうだね、´お月さま´の事を考えながら眠ったら……もしかしたら、夢で行けるかもしれないね? さあ、もうお休み……」
「……はい、お休みなさいお父さん」
知りたがりな子ウサギは優しいお父さんウサギに頭を
夢の中でお父さんウサギと一緒に、´お月さま´の上でいっぱいいっぱい、元気いっぱいに遊び回るのでした。
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「おしまい」
小さな机の上で、パタリと音を立てて閉じられる一冊の絵本。
「……どう?
「うん、´お月さま´行ってみたい。気になる……ね、ロッコ?」
そこに……
「……私ね、本当はずっと…………」
「最後の最後まで、本という物をちゃんと……しっかりと……自分自身で読んでみたかったの……」
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