043 とっても楽しい道化市③
……´とっておき´。
そのたった一つの言葉に、今まで以上の物が見れるのかとざわめき立つ観客達。
「では…………そこのお嬢さん。どうぞこちらに」
一度周囲を見回すも、最初からそう決めていたかのように男性は最前列で特別な人達に
「む……」
「ちょっと、すごいすごい! 今日はリリーの日なのかぁ〜?」
「ええ、そうかもしれませんね。ほら……リリー? 行っておいで?」
お嬢さんと呼ばれた事に
同じ容姿をした二人の男性に
自分に向けられる様々な感覚に体を
「━━━━」
目を丸くさせて男性の言葉に耳を
それを確認した男性が自分と同じ姿であるもう一人の
〈パンッ━━パンッ━━〉
観客達のざわめきを打ち消す目的の二つの音。
「━━お待たせ致しました。それでは皆様、今からわたくしどもの´とっておき´。こちらの少女が胸に
そう言うが早いか、すぐさまと打ち鳴らされる男性の指先。
〈カシャリ━━〉
´あの音´が、
続いて、
さらさら。さらさら。
黒く
以前と同様、白い羽根のような物が
〈…………〉
〈…………〉
静まりかえる観客席。息を
そこへ、男性の言葉を
「皆様、ここからは
観客席からの注目を
「…………」
「(……大丈夫だよ、ロッコ。みんなの前でも、一緒にお話が出来るようになるんだって)」
どうしたどうなったと
やがて少しの
「(……ロッコ?)」
「(わかったわかった、
その言葉と共に
「…………や、やあ」
そしてやや緊張
〈おお、すごい!〉
〈本当に動いた!!〉
〈……カシャリ〉
特別な´ひととき´の
再び、やや
「━━ほえ〜、ロッコ……ほえ〜……」
巨大な
若いシスターは、少女の腕に
「う〜ん、どうやって動いてるんだろ……気になる〜! ドールみたいな感じなのかなあ? ……ねえ、リリー。少しロッコを触ってみてもいい?」
「ん……ちょっとだけなら、いいよ?」
「ようし! それでは……!」
すっかりとチヤホヤされる事にご
「なあリリー、見てみろよ! みんながこっちを見て手を━━」
そう言ってクマのぬいぐるみが顔を上げた時には、´それ´はもう目と鼻の先であった。
「な、なんだなんだ!?」
「(さわさわ)……ほほお……」
「お、おい……! なんなんだよ……!」
「これはこれは……(さわさわ)……ふむふむ……(さわさわ)」
「ちょ……へ、変なとこ触るなって……!」
「(さわさわ)……ん? ここは……」
「あは、あはは……っ。や、やめ……やめて…………」
なおも顔を近付けて自分の体をまさぐる若いシスターに、クマのぬいぐるみは少女に抱かれたまま
「や・め・ろ!!」
「ごふっ……!」
そう言って
「うぐぐ……そ、その´やわらかぼでぃ´のどこにそんなチカラが……」
「だからちょっとだけ、って言ったのに……」
´ぷんすこ´と腕の中で
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