032 高ぶる気持ちと膨らむ頬②
「う〜ん、これはリリーには少し大きいし……。こっちの箱は男の子用かぁ……え〜っと、確かどこかに
´お下がり´であったり、寄付であったり。主にバジリカで暮らしている子供達のための衣服や小物等が多数収められているこの部屋……少女が以前に使用した、子供用のケープもここから持ち出された物の一つとなる。
「むむむ〜…………ん?」
目についた
「おやおやぁ~? これからとびっきりのオシャレをするっていうのに、´ほっぺ´を
……とは言え、私はいつものコレかぁ~。あ、でもでも? コレはコレで……意外と気に入ってたり~?」
ウキウキと
そのまま、頼まれた
「……おっと。主役のほったらかしはいけませんな! ようし、リリー。まずはお
「ううん、このままで大丈夫」
「ええ~! もったいな〜い! ……
ふるふると首を横に振っている少女はお構い無しに、若いシスターは目をつぶり、あれやこれやと頭の中に想像を
「やっぱりぃ、色は薄めで
「リリーはいいの。……ロッコならしてもいいよ?」
「(!?)」
「ん……? ロッ……コ?」
よだれが
「う〜ん……ロッコ…………う〜〜ん……」
……まさか! 突然に飛び出た思いも寄らぬ提案を聞き、
されど、願いが届くよりも先に……必死すぎるアピールは、はたと止まった。
「…………ふう。なるほど、ロッコも´アリ´……か」
頭の中で何を見たのか若いシスターはそう
「…………」
「(…………)」
こうなってしまっては、
声を上げる事も出来ず……体を動かす事も出来ず……
「うん、うんうんうん。……よし!」
やや離れた位置に立つ若いシスターは片目を閉じて
「(こ、ここまでか……)」
「(??)」
「小さい……カバン?」
「そう、カバン。これはね、ポシェットって言うの」
クマのぬいぐるみと同様、頭にハテナを
「
生まれたばかりのそんな小さな不安を取り払うよう、消し去るよう、若いシスターは明るく笑う。
「……そ・こ・でっ! ロッコをこのポシェットに入れて、リリーが肩から
「安心……」
「リリーだって、ロッコと
「うん……」
「んふふ、なら決まりね!」
返事を確認した若いシスターは嬉しそうに飛び
少し
「ん~……このぐらいかな? ほらほら、ロッコを入れてみて?」
様々な角度から少女を
腕の中にいるクマのぬいぐるみと、肩から下げたポシェット。鏡に
「…………」
最後に、鏡の中でも変わらずに
「か〜んぺき! ああ、もうっ……かわいすぎるっ!」
ちょっと大きなポシェットから、まん丸な顔と両腕を出しているクマのぬいぐるみ……
そのポシェットを肩から下げ、胸元で
「このまま誰にも見せずに……リリーを
モジモジと興奮に身を
そこには
〈トントン〉
入り口の
見た目の年齢的には少女と女性の
「お待たせしました」
「ジャストタイミ〜ング! こっちも
そう言って部屋から遠ざかっていく若いシスターの足音は
「置いてったら泣いちゃうからね! ……ホントなんだからねっ!」
何度も何度も言葉を付け
そして、足音を響かせながらに通路を大急ぎで
「━━それじゃあ、私達は入口に行きましょうか」
「うん……」
「大丈夫よ、リリー。……大丈夫」
「…………」
流れる時間。少しだけ、必要な……大切な時間。
やがて立ち上がり、自分に向けて差し
〈キィ……パタン〉
「
「……! ……うん!」
右手がポシェットに収まったクマのぬいぐるみの
気付けば、いつの間にか笑顔が戻っていた少女の
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