030 沸き立つ街並み
〈ドドン……ドン…………ドンドン……〉
朝日が街に
「ねえ、ロッコ! 今の聞いた?」
「ああ、ばっちり聞こえたぜ。とうとう来たんだな……この日が!」
……大聖堂二階。担当のシスターが
やや大きく見える大人用の
そしてそのまま、こちらに手を伸ばすクマのぬいぐるみを自身の胸へと
廊下を抜け……階段を
「
朝食の準備に取り掛かっていたシスター達の
普段とは違い、どこか興奮した様子で
「……ええ、私達にも聞こえたわ。昼のお祈りが終わったら、
何日も前から始まった
シスター達の事前的な説明により、
「お祈りはいつ始まるの? ……終わったらすぐ行くの?」
「ふふっ……お祈りの時間はいつもと同じですよ。楽しみなのね、リリー?」
シスタースズシロからそうは言われても、壁に備え付けられた時計は少女の目の前でカチコチと音を立てるばかりで……
どうにもこうにも待ちきれず、
そのうち、大聖堂の正面入口が開放される時間となった事で、少女の足は自然とそちらへ向かって歩き出していた。
ワイワイ、ガヤガヤ……
入口脇に
ガチャガチャと音を立て、何体かで
様々な者達が、様々な想いを胸にその歩みを進め、それらは
「━━はやくはやくー!」
ふと……
感覚を
「ふたりとも、おそいとおいてっちゃうのー!」
「ハハハ。そんなに急がなくても、お祭りはいなくなったりしないさ」
「ほら……ちゃんと前を向いて歩かないと、転んで
そんな
「…………」
「やあ、おはようリリー」
驚いた少女が顔を上げると、ベンチの横では気付かぬうちに一人の男性が立っている。
「あっ…………。配達さん、あなたもここで待ちたいの?」
「ん……待つ? ……ああ、
「どうして? たくさんの動物が来るのよ? いろんな芸を見せてくれて、大きなクマだって見れるかもしれないの。……ね、ロッコ?」
青年にそう返した少女は
「ごめんごめん。もちろんリリーと同じで、僕も興味はあるんだよ? だけど、
「ふうん……」
「それに誰もが
「……配達さんは、その誰かさんの事がキライなの?」
クマのぬいぐるみの手を取り、フリフリと動かして遊び始める少女。
その
帽子を
「…………。好き……ではないかな」
「うーん……でも、ずっと誰かさんのままじゃ……誰かさんもかわいそう。リリーが名前をつけてあげようかな?」
「……!」
いつも
それは、どこか
それは、どこか
「そうか……名前…………」
「うん! いっぱいいっぱい、考えておくね!」
そうして少女がクマのぬいぐるみから青年へ、その視線を戻した時には。
「……それはいいね、喜ぶと思うよ。でも、僕が次にリリーと会えるのは……もう少しだけ、先になりそうなんだ」
「えっ……」
少女の顔が、
「
「どうしても…………行かないとダメなの?」
ベンチに座ったまま消え入りそうな声で
「ああ。僕は……どうしても、行かないとダメなんだ」
「…………」
「そんな顔をしないで、リリー……ほら、僕の顔を見てごらん? ……笑っているだろう? 街の
だから、リリーもたくさん笑って……初めての
「…………。うん……」
「大丈夫、
そう言ってニコリと笑った青年は、少女の
そして、少女が目を離した
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