026 お祭りが街にやってくる④
〈━━ごつん〉
視界を本によって
「あっ」
「おっと」
声を聞いた少女が顔を上げれば、そこに立っていたのは制服姿の青年。
「……大丈夫だったかい、リリー? ……おや? ロッコは……あまり大丈夫じゃなさそうだね……」
「だめよ、配達さん。ここはリリーがいつも使う
それは申し訳ないと体をどかした青年の隣を、一度は通り抜けようとした少女だったが……ふと立ち止まり、今度は不思議そうな顔をして青年を見上げた。
「どうしてこんな所にいるの?」
「ん……どうしてだったかな? ……ああ、´かくれんぼ´をしていたんだ。うん。でもリリーに見つかっちゃったからね、
普段とは少しだけ違う様な気がする笑顔と共に、青年は少女に向かって小さく手を振ると……そのまま、一階に続く階段の方へと歩いていく。
「……? ……へんな配達さん」
そうこうしているうちに見えてくる、暖かな日差しが差し込むお気に入りの場所。窓際に置かれた、少女のいつもの席。
少女がよいしょと
……どうやら、声の
「まあ……いつこちらにいらっしゃっていたのですか? はい……はい……。お
「や、やっと終わったか……」
そしてげんなりとして立ち上がり、おぼつかない足取りのままあらぬ方向へと歩き始めたクマのぬいぐるみを……机の上から落ちそうになった
「ロッコはこっちよ?」
「お、おう……ありがとな、リリー」
向き合うように座らされた机の上に、
「ああ、もう……。ここも……こっちも……!」
ぽかぽかとした
〈パラ、パラ、パラ〉
大図書館二階にある窓際の小さな席で……本を
〈パラ、パラ、パラ〉
……
しかし、本の中に
長い鼻を使って、大きな旗を
火がついた輪を
頭の上に
そうしてそして。
「あっ、クマがいる! 見てロッコ、クマがいるよ?」
少女がそう言って嬉しそうに指で
「へぇ……」
〈パラ、パラ、パラ〉
その後も
「ねえロッコ……なんだろう、これ……」
「んー……」
「なあ、その絵の上にあるちっちゃい文字には何が書いてあるんだ?」
「えぇっと…………ど……う…………け?」
「どうけ……? ……ああ! もしかしたら、それがシスター達の言ってた
泣いていたり笑っていたり。色々な表情を思わせる
大掛かりな劇場や、それを
小動物と共に活動する者……一人で様々な楽器を演奏する者……
机の上から窓枠へと場所を
来たる
通りのあちらこちらで止まる、
人の増加に
驚くことに宿屋のほとんどは
従来を知っている身からすれば、突然の事で街に対する
〈━━ぱたん〉
少女が一冊の本を読み終える頃には、クマのぬいぐるみの体もすっかりと元通り。
「ふふん」
ご
「次の本持ってこよ。……おいで?」
「…………??? (他に誰かいるのか?)」
理解が追いつかず周囲をキョロキョロとしているクマのぬいぐるみを、地獄まで叩き落とすかのような少女からの最終宣告。
「ロッコ、はやく来て?」
そこから先は……
机に置かれた本に自分の体を押し付けようとしている少女との
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