025 お祭りが街にやってくる③
「やれやれ……ひどい目にあった……」
そう
そこへ、少女が
「よしよし、やっぱりこの位置が一番……って……ん? ……んん? …………ああっ!」
「……? どうしたの、ロッコ?」
「あ、あぁ……なんてこった……。なあ、リリーも見てくれよ……」
「うん?」
少女が持つ鏡に向かい、初めはご
「ほら、ここだよここ! なんかさぁ、前より少し……
「うーん……ロッコの目は、元から´まんまる´だよ?」
「いいや、違うね。きっとさっき´ぺしゃんこ´にされたせいで変わっちまったんだ……くそう……」
何度確認をしようとも、鏡に
されど
「━━それにしても……
礼拝堂に向かって廊下を進む少女の胸元から、クマのぬいぐるみがそう言葉を
「どんな事をするんだろうな?」
「クマは来るのかなあ?」
「うーん……」
「うーん……」
「…………よし! じゃあさ、それっぽい本があるか……後で図書館に
「……うん。そうしよ、ロッコ!」
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昼のお祈りを
大聖堂を
行き
楽しそうな声、楽しそうな顔……すれ違わずとも感じられるそれらの
そんな感覚を持って歩いていた少女に、ふと
(みんな同じなら、本……もう残ってないかも……?)
「━━ふぅ……ふぅ……」
「こんにちは、リリー。そんなに息を切らして……どうしたんだい?」
やっとの事で
「あの、あのね…………ふぅ。
「ん……
「うん」
「ああ、それなら……少し高い所に並んでいるから、一緒についていってあげるよ。本棚に戻さないといけない本も……ちょうど何冊かあることだしね」
「うん、わかった」
一時的な不在を伝える小さなプレートを受付の上に置き、
「でも……
「大丈夫、ロッコと一緒に絵だけを見るの」
「……なるほどなぁ」
話の途中途中で立ち止まっては、
「さあ、おまたせ。奥にある本棚が、リリーのお目当ての場所だよ。新しくコーナーを
確かに、ドールが言うその本棚だけは
そして何より、今この瞬間にも別方向からやってきた一人の女性が……少女の
「……あっ! ねえ、はやく! はやく本を取って!」
「ご、ごめんごめん。それじゃあ……えーっと…………こ、このシリーズとかいいんじゃないかな? ……あ、それともこっちだろうか」
「なるべく絵が多い本を選んでみたんだ。リリーの見たい本はあるかなあ?」
様々な人達が静かにその腰を落ち着ける、
少女が座った席の前で、長机に広げられた
表紙、色、大きさ、厚さ。どこを取ってみても同じものがない、そんな個性
「……これ。これにする」
持っていたクマのぬいぐるみを長机の上に置き、少し重そうにも見えるその本をズリズリと引き
「ねえ、ここにロッコを入れて?」
「え……そ、そこに入れるのかい?」
「うん、ここ」
どこか困ったような表情と
少女から直接お願いをされたされないに
……それもそのはず。
少女が
「ちょ、ちょっと
「大丈夫、ぐいぐいして」
「うーん…………じゃあ、失礼するよ?」
〈ぐぐぐ……〉
「この引っかかりは……お腹の部分だろうか……」
〈ぐりぐり……〉
「うぐっ」
「ん? リリー、今何か言ったかい?」
たまらず声を
「ううん。ねえ、もっとぐいぐいして」
「あ、ああ……。よっ……と! …………ふう、これでもう落ちないと思うよ」
「じゃ、残りの本は受付で預かっておくよ。他の本が見たくなったらまた声をかけてね」
そう言葉を残して仕事に戻っていくドールと別れると……少女は両手に
「うぐぐ……また、これかよぉ……」
「
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