021 仲良しのあかし①
一日の業務が終わり、バジリカに残っていた街の人々も
やがて大聖堂が正面に
必要最低限の
〈ぱたぱた……ぱたぱたぱた……〉
風でカタカタと音を立てる窓の向こう側。
先の見えない薄暗い廊下の曲がり角。
どこまでも広がる闇に、
それは、廊下に
「………………」
少女は事ある毎に立ち止まっては振り返り、立ち止まっては振り返る。
見えない何かが自分の
〈ガチャリ━━〉
急ぎ足のままに飛び付き、押し開けた先。
他の部屋と比べてあまり
どこか落ち着いていて
この部屋は主に
明るく、それでいて
「━━いらっしゃい、リリー」
クマのぬいぐるみを胸に
「そろそろ来るかなって思っていた所なの。ほら、いつもみたいに一緒にお
先輩シスターの
小さな少女の
どこからともなくホンワカとしてくる様な、そういった
「……ねえ、リリー。バジリカは……この場所は好き?」
「うん」
「ここの
「うん」
「どんな所が好きなの?」
「みんな、リリーとお
「笑ってる
「…………」
そう
「…………みんな、いなくなっちゃうのが嫌い」
言葉と共に、クマのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。
「……そっか。リリーは
みんなみんな本当にリリーの事が大好きだから、どんなに離れてしまったとしてもその気持ちや
「でも……。……リリーには、何も見えないよ?」
左右に何度か顔を動かしたうえで、改めて
「そうね……たとえ目で見ることが出来なくっても、そこにいると知っていれば……すぐ
それって、見えているのと同じ事……なんじゃないかなあ?」
「…………。みんなが……」
……その言葉は、小さな少女には少し難しかったのかも知れない。
されど、胸に
〈カチ……カチ……〉
静かな夜。静かな室内。
……と。
「そうだわリリー、今日はね? いつも仲良しなあなた達に、プレゼントを用意しているの!」
「プレゼント? ……ロッコにもあるの?」
すぐさま手を止め、自身を
「ええ、
「うん……分からなかった!」
こちらを見上げる少女に笑顔を返し、抱きかかえるようにして
「気に入ってくれるといいんだけど……」
そう言いながら先輩シスターは
「…………?」
予想に
ごくごく普通の
〈ガサリ……〉
先輩シスターが紙袋を開くと……まず最初に顔を
頭頂部には赤い
続いて姿を見せるのが、少し小さめなバンダナ。
しかし、小さいとは言え´ほつれ´を防ぐためかその
そしてそれらは同じ一つの
「……あっ、ロッコがいる!」
テーブルの上で広げられたバンダナにその姿を見つけ、楽しそうに声をあげる少女の頭へ……優しく着けられる、先輩シスターお手製の赤いカチューシャ。
「わぁ…………ねえ、ロッコにも! はやくはやく!」
自分だけでなくお友達へのプレゼントですらも待ち切れず、体を
それが手作りであったのであれば、その嬉しさは
「ふふっ。すぐ着けてあげるから、少しだけロッコを
「……! うん!」
お願いに対して大きな
「……はい、出来たわよリリー」
「わぁ……! わあ……!!」
バンダナを巻いたクマのぬいぐるみを持ち上げる
「……あっ!」
そんななか……ふと声をあげた少女は小さな気付きそのままにぴょんと
「ほらみて。ロッコ、かっこいい!」
「リリーもロッコも、とても良く似合っているわ」
「本当? ……だって、ロッコ!」
鏡の中の少女に
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