020 清風、遥かに
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木々は
小川の近くには人々の
〈サーーッ……〉
この場所は風がよく通り、とても
高い場所から見下ろす世界は……いつもの見上げてばかりな世界とは違い、私を少しだけ大人になった気分にさせてくれる。
いつもより、ちょっぴり近くに見える空。
いつもより、ちょっぴり暖かく感じる太陽。
「おっ、お嬢様! そそそんな所に立たれて何かあっては……!」
本当にいい風……
目を閉じ、腕を広げて、からだ全体で受け止めれば……意識は風と共に
「あっ……ああっ……! お嬢様ぁ!」
い、意識は風と共に
「いけません、いけません! 危険ですので今すぐお
鳥たちと……鳥たちと……ええっと…………
「お願いします、お嬢様ぁ……。お嬢様に何かあっては
「…………んもう! 何を考えてたか忘れちゃったわっ!」
声がする方へくるりと振り返れば、そこには私を心配そうに見上げる
誕生日プレゼントとしてお父様に
確かに……今、私が立っているのは
まあ、大人に見上げられるくらいだから……´
庭にある大きな木が、
そんなの……登りたくなるに決まってるじゃない? 私は何も悪くないわっ。
「ほら見て、全然平気よ? 心配しすぎ━━」
〈ぶわっ〉
突然、正面から強い風が吹き付けた。
「あっ……」
……ぐらり。
バランスを
「!?!?」
不思議とゆっくり流れる時間……視界には青空がいっぱいに広がり、
〈どさっ━━〉
その音と共に現れた
「…………!」
しかし、それを確かに感じはしたものの……後に続いたのはお尻のじんじんとした痛みくらいなもので、他は特になんともない。
「……あ、あれ?」
ゆっくりと目を開ければ、
お尻の下では、大人が
「いい´働き´だったわ。あなた達、うちへいらっしゃい!」
背中からお尻までをすっぽりと
私が預けた人形を胸元で持ったあの姿勢のまま、遠くに見える
「……お嬢様ぁ!」
入口の方から
ヨタヨタと左右に
「ぜぇ……はぁ…………おじょ……さま……お、お
「大丈夫、どこにもないわ。それより、
「さ、
ささ、はやくお屋敷へ戻りましょう。今夜は
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「━━そろそろ戻ろう、ロッコ?」
大聖堂の入口を正面に、そのまま敷地内を左へと歩いていけば……やがて見えてくる、緑に
そんな
「……んっ。あ、ああ……そうだな」
母親と思わしき女性や、父親らしき男性、またはそれに
「…………」
丸太で組まれた遊具の一番の
「ほら、俺達も行こうぜ?」
「……うん」
ベンチから立ち上がったまま何も言わず、遊具の上で手を振っている一つの影をじっと見つめていた少女は小さく答え……腕の中でモゾモゾと動くクマのぬいぐるみの頭を
それは、何かを思うように優しく……誰かを想うように何度も。
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