017 中庭に響く音色④
「スコップさん……?」
「ん、大丈夫大丈夫」
「本当かよ……」
ベンチから心配そうに視線を送る少女達の前で、ふらつく足に苦労をしながらも若い男性はどうにかして立ち上がるが……そこから先には進む事が出来ず、まるで力が急に抜けたかのようにヘタリとその場で座り込んでしまった。
「なんだか……体を思うように動かせないんだ……」
そう言って苦笑いを見せる若い男性の体が、
「あっ……」
口から
「え? …………えっ? ほ、本当に大丈夫……なんだよな?」
「…………」
「お……おい!
目の前で起きている光景に対し、何らかの答えを求めるクマのぬいぐるみが自身を
そこにあった少女の
地面に座り込んだ若い男性をベンチの上から
「…………。なんで……」
やがて、
そのうちの
「ああ…………そうか。そうだったな、うん」
体のあちらこちらから抜け出るような形で天へと
「ごめんね、本当はもっと色々な遊びを教えてあげたかったんだけど……」
「だからっ……そんな事は今はいいんだって! 具合が悪いなら他に誰かを━━ リリーが行かないなら俺だけでも━━」
クマのぬいぐるみからの
白き光の
「なんでだよ……なんでなんだよ…………」
そうこうしている
「リリーも……! あんたも……っ! どうして━━」
「リ…………リリー……」
何も言わず、
……若い男性の姿はもう、どこにもなかった。
少女達が座るベンチの前では麦わら帽子をかぶった一体の古びた
「あんたも…………だったのかよ……。言われないと気付かないじゃないか、こんなの……そうだろ、リリー? 誰がどう見たって……」
胸元からポツポツと聞こえてくるクマのぬいぐるみの声に耳を
光が向かった先……あの青い空の向こう……
自分の知らない
「━━こっちにもいないなら……次は礼拝堂の方に行ってみようぜ」
「うん」
大聖堂の二階や、一階にある食堂、通路で
中庭で倒れたドールの事を伝えるべく、少女はクマのぬいぐるみを胸にバジリカの
きょろきょろと
「それは片付けても大丈夫よ、代わりは倉庫から持ってきて
午前の部の召喚業務が終わり、続く昼のお祈りに向けての準備を複数のドールと共に行っていたシスタースズシロは自身の服を引っ張られる感覚に手を休め、後方へと視線を動かす。
人々の暮らしに
ドール達は役目に応じた様々な姿・衣服で身を包んでいるが
「どうしたの? ……リリー?」
「…………。行っちゃった……」
……行っちゃった。
お気に入りのクマのぬいぐるみを左手に
ただのそれだけで、
「…………そう。リリーは伝えにきてくれたのね」
「……うん」
「ありがとう、リリ━━」
下を向いたままこくりと
礼拝堂へと入ってくる一つの足音が聞こえ、その場の空気なぞ丸ごと吹き飛ばしてしまいそうな
「はい聞こえました! しっかりとこの耳に聞こえましたよ! お師匠様……いるんですね? そこに……! リリーが……っ!」
「!!!」
前が見えないほどの荷物を
「私を見捨てた
運んできた荷物を
そしてシスタースズシロの
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