第280話 サエカの曙
サエカの曙は、アリッサをリーダーとするサエカの冒険者パーティーである。メンバーはアリッサ(ヒーラー兼タンク)、マリリン(剣士)、ドアン(風魔導士)、クミーツ(弓士)。基本はこの4人。Eランクの緩い兼業冒険者パーティーだ。
マリリンはメイド兼教育学部の学生で冒険者は初心者。他は一応経験はある。アリッサはベテランのBランク。エルフのドアンはFランクだが、風魔法は得意。クミーツはベルベル隊の1期生で、Fランクだが弓の達人である。
クミーツが大学を休学して、森の特殊部隊のムササビ隊に行ってしまった。責任を感じたベルベルが、週2回パーティーに参加してくれることになった。ベルベルは育成には面倒見がいい。
アリッサは教授であり、あまり参加できない。お気楽メイドのマリリンとエルフのドアン、そしてベルベルの3人で初級ダンジョンに潜ることが続いた。
ライラは暇だった。メイドのマリリンに誘われて、サエカの曙に参加するようになったのである。ライラの武器は短槍でスキルはレベル1。それと支援魔法がレベル1。王女なのでこんなものだ。
面倒見のいいベルベルはアリッサ、マリリン、ドアン、ライラをブラウニーダンジョンへ連れて行き、限界突破をさせた。
アリッサは大喜びだ。大事なヒールがレベル6に上がった。火魔法をマリリンにあげて、水魔法をもらった。水魔法がレベル2になって、その時キュアを覚えた。医学部教授として、状態異常を治すキュアのスキルは貴重だった。
マリリンは剣士をいくらやっても剣技は発現しなかった。腐っていたところに、自分へのヒールを手に入れたばかりでなく、火魔法レベル2になった。魔力がないのでクールタイム1時間だが、ファイアーボールを打てるようになった。
ドアンはエルフで魔力は多い。風魔法レベル2だったが、ヒールレベル1と火魔法レベル2になった。攻撃魔法を2種類持てたのである。しかもエルフなので弓技はレベル1である。
ライラは槍技レベル1、支援魔法レベル1に加えて、ヒールレベル1、水魔法レベル2になった。
ベルベルがいて4人の時は、前衛はベルベルとライラ。後衛はマリリンとドアン。ベルベルは王者のムチを使う。このパーティーは強い。オークでも楽に倒せる。3人はダンジョン攻略が面白くなった。
ベルベルがこれない時も、ダンジョンに潜り始めた。3人の時はライラとマリリンが前衛で、ドアンが後衛。3人は全員自分をヒールできる。しかも全員攻撃魔法持ち。支援魔法もある。それに流行している結界魔道具も身につけていた。
それでも3人でダンジョン討伐をしている時、ゴーレム3体と戦って、ヒヤッとする場面があった。ライラに何かあったら大変なことになる。
アデルは3人だけではダンジョンに行かないようにライラに言った。レンタル警備隊の誰かを連れて行くようにした。さらにマリリンにスクロールで剣技のスキルを発現させた。
前衛はマリリンとレンタル警備隊の誰か。ライラの前衛は禁止された。それでも3人のダンジョン攻略ブームは去らない。連れて行くのはモフモフのイヌになった。名前はルビー。けっこう強い。
ある時ベルベルが急に参加できなくなった。代わりに来たのがケリーだった。ケリーはトレジャーハンティングで、斥候としての腕を一流と言えるまで上げていた。
センサー(フル)を使えば、浅い階層などソロでも楽に攻略できた。育成もミーシャで慣れている。この日はドアンが来れなくて、ライラ、マリリン、ルビー、ケリーとなった。
アデルが心配して幼竜ゴドラをつけてくれた。ゴドラも弱いながらドラゴンブレスを吐ける。空中からの火攻撃は有難い。
スライム、ゴブリン、コボルトと倒し方を丁寧に教えて進む。罠の発見の仕方、途中の薬草採取も丁寧だ。そして隠し部屋を発見。
慣れているダンジョンのゴブリンの階層に、隠し部屋があった。モンスターハウスだ。ケリーは討伐可能と判断し、乱戦突入である。50体以上のゴブリンとの乱戦になる。
結界魔道具を発動し安全確保。乱戦ではあるが、ケリーが透明なミスリル糸を使って、ゴブリンを隔てている。ライラの短槍、マリリンの剣、ルビーの牙、弱いドラゴンブレスが次々とゴブリンを倒していく。
50体以上をすべてを倒しきると、さすがに疲れ切って、安全地帯で休憩を取る。この時ライラの槍技とマリリンの剣技のレベルが上がった。どちらもレベル2である。
この日はこれで満足して帰った。でもケリーに古代船サルベージの予定があると聞いたマリリンは、強引に参加をねじ込んだ。
6日後、まずサエカの浜でウィンドサーフィンの練習である。参加者はライラ、マリリンとミーシャ。ドアンは都合で今日も参加できない。実はドアンは古代船の操縦士としてスカウトされていた。ナターシャも参加予定だったが、用事で来れなくなった。
ケリーの風魔法のおかげで、ウィンドサーフィンに二人はすぐ慣れた。ケリーを先導にして、ミーシャが一番後ろで、気持ちの良い春の海を走る。
今日の予定地はジェホロ島の西北。ケリーの予定では今日が古代船サルベージの最終日。戦争が半年後に迫っている。これ以上船が増えても、乗員の訓練が間に合わない。
ウィルが所有する古代戦艦は現在4隻。プリム、リリエス、アリア、エルザである。今日サルベージしたらクルトと名付けるつもりのケリーである。
サーチで沈没船の真上に来たら、シュビー2を海中に投入する。ケリーは風の糸で海底の古代船をくるむ。いつもより大きいのが手応えでわかる。しかも何かいる。強敵だとケリーには分かる。
ケリーはルミエに念話した。
「ルミエ。ちょっと強敵がいそうなんだけど、来れるかな」
「ケリーね。場所は?」
「ジェホロ島の西北。でもまだポータブルダンジョンを出していない」
「じゃ出したらもう一回念話して」
いつも通り船体が現れたら乗艦する。大きい船だった。ポータブルダンジョンを出して、すぐルミエに来てもらう。サハギン、スケルトン、ゾンビ、レイス、クラーケンと問題なく進む。最後に出てきたのがヒドラだった。
大蛇で9つの頭を持っている。ルミエとケリーで立ち向かう。ライラはバフをかける。ヒュドラが危険なのは、頭を切り落としても高速再生することと、血が猛毒であることだ。
真ん中の頭は不死属性を持っている。ルミエが鎮静スキルで運動を止める。そのあとスキル強奪ですべてのスキルを奪い、HPを1残して瀕死にする。最後にルミエが顔盗術で9つのペルソナを奪う。
ケリーが粘糸で巻いて、物化し、ルミエのマジックバッグに入れて終了。ルミエへの謝礼はペルソナとヒュドラの身体でいいそうだ。ルミエはすぐ帰る。
見物していた3人は、どれほど危険だったか認識していない。対処方法が分かって、適切なスキルを持っている人を呼べば、強敵も怖くない。
ウィルに古代戦艦を売る。今までの3倍の大きさだった。3億チコリで売れた。売り上げはライラにあげる。装備やアイテムで自分たちを強化すればいい。名前は女性名しかダメだと言われて、ライラと命名された。
モンスタードロップや宝箱の収入は、ライラ以外の3人で山分けになった。けっこうな収入になりそうだった。それに全員に膨大な経験値が入っているはずだ。
実際この3億チコリとマリリンの取り分3千万チコリは、パーティーだけでなく、サエカの装備を強化した。それにパーティーはルビーをレンタル警備隊から買い取れたのである。
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