第270話 幸福なピピン
ユグドラシルが暴走して、カリクガルに挑んだ。そして勇者パーティーが負けた。チームに激震が走る。4人の力はカリクガルとほぼ互角のはずだった。それが手も足も出ずボロ負けした。命だけは助かったという。
敗北の1週間後。ピピンがジュリアスのところにやってきた。幸福そうな笑顔である。
「ピピン。大変だったね」
ジュリアスはピピンが嫌いではない。模擬戦では負けたし、その強さを尊敬もしている。相当落ち込んでいると思っていた。
「全然、大丈夫だった。ユグドラシルも命あって良かったって言ってくれたしね。今すごい幸せなんだ」
「強いね。ピピン」
「それで何があったか。ジュリアスに伝えたいことあって」
「私も聞きたい」
カリクガルはどんな戦いをするのか。貴重な情報である。戦いは情報戦だ。情報をたくさん持っている方が勝つ。
「カナスの近くで待ち伏せしていたの。私達。4人とドライアド100人。それで馬車を止めて、相手を馬車から降ろしたのね」
「ピピンたちが仕掛けたってことね」
正確にはムスタン北方の、カナスからアリアスへ向かう街道上だ。
「それで相手も4人。カリクガルとF。それに私達と同世代の男女」
「男がマクロで、カリクガルの息子。16歳。女がパンセ。フローズン・ローズの娘。16歳。3か月後結婚するらしいよ」
「そうなんだ。おめでとう」
ピピンが敗北のせいでおかしくなっているのは確実だ。
「いや私達には関係ないわよ。おめでたくないと思う」
「人が幸せになるって、自分もうれしいの」
「いい人なんだね。ピピン」
「褒められると照れる。それで最初にかけられたのが分離という魔法。私自分の模倣スキルでそれコピーした」
やはり情報戦で負けていた。勇者パーティーの強さは、大精霊を内部召喚できることだ。そこを対策されていたのだ。分離された時点で敗北確定だ。
「ありがとう。ピピン。すごく助かる」
「ジュリアスに検証してもらいたいの。ジュリアスはアシュラキャット内部召喚しているから、これ使われたら、内部召喚解除されてしまうわよね」
「対策しておく」
ジュリアスもそうだが、ルミエもベルベルを内部召喚している。
「次に氷獄を使われた。これも模倣してある。これはFのスキルね」
「Fって能力値どれくらい」
「300あるかもしれない。私より美人なのが悔しい。今回のラッキーな事件で、唯一の汚点ね」
「ラッキーなんだ」
「超幸運よ。私達4人の絆も深まったし。あ、その次にね。Fに凍結スキル使われた。これもあげるわ」
凍結スキルは、リビーが持っているが、それは言わないで置く。
「ありがとう」
「それでミスリルゴーレムに。、ぼこぼこにされた。大精霊たちも」
「大精霊もゴーレムにやられてしまうんだ。ミスリルゴーレムの能力値分かる?」
「700くらい。でも今は770。私達は能力値をあの人たちに捧げたの。あの人たちは全員1割能力値増えた。御者まで増えたのよ」
「カリクガルは?」
「1000だったのが、1100になった。全部取られなくて良かったわ。ラッキーだった。全部取られたら、今頃カリクガルの能力値は4000超えていたわよ」
もしそうなっていたら、誰も勝てない。そしてリッチになったら、能力は2倍になるのだ。
「何か制限あるのかな」
「1か月に1割かもしれないし、よくわかんないわ。とにかく褒めて。私達1割で抑えたんだから」
「偉かったねピピン」
「それでね。ミスリムゴーレムは物理攻撃だけだった。大精霊がなぶり殺しにされた後、順番に私たちのなぶり殺し」
「アバターあったら死なないんじゃ?」
「30しかなかったの。アバター。これも超ラッキーよ。100持っていたら100回死ななきゃならなかったのよ。30回で済んで本当に良かった」
「ピピンってポジティブだね」
「ラッキーガールって呼んで」
「よっ、ラッキーピピン」
「それでなぶり殺しはまだ楽なのよ。その合間に夢処刑を2分されるんだけど、この2分が体感20時間。ゴキブリの雌になって、雄たちに強姦されたりするのね。最初嫌なんだけど、だんだん良くなるの」
「良くなるんだ」
二人ともまだ現実の男性との経験はない。ピピンには過酷な経験だっただろう。
「すべて終わった後、子供ができたって分かって、大事に育てようと思ったら、誰かに踏まれて、潰されておしまい。そしたらまた次のセックスが始まって、それを20時間やるわけ。私現実には処女だけど、もうセックスの端から端まで経験できた。いい経験できたわ」
「いい経験なんだ」
「そうよ、でももうロマンチックな純愛はできないかな」
「そんなことないよ。ピピン。私も夢処刑は精神耐性ダンジョンで体験しているから。似たようなこといっぱいされている。夢だけど」
「私達は負けることあんまり考えていなかったの。だから精神耐性ダンジョンなんてあることも知らなかったわ」
「私は今純愛中だから。アシュラキャットと巡り会って。片思いだけどさ。夢処刑されても、恋する乙女になれるのよ」
「そうなんだ。ジュリアスは強い。私も強くなるわ」
「そうだよ。隠れたる神は、お前は既に許されているって言っているでしょ」
「どんな悪いことしても許されているなら、最初から悪い方がいいのかな」
「そこが違うのね。善人であろうとするほど、悪人になってしまうことが悲しいの。そういう人に隠れたる神は許されているって言ってるのよ」
「カリクガルっていう人ね、どんな悪も神に許されているって考えていると思うの。悪い人なんだけど、私に幸福を与えてくれたから憎めない」
「ピピン。あんた薬飲まされていない?」
「わからない。深く考えたら負けよ。次行くね。あ。夢処刑も幻像もコピーしてあるから、あげる。ついでにアバターもあげる。そしてね、カリクガルは優しいから私たちを助けてくれたの。いい思い出ができたわ」
「どうやって許してもらったの。能力値捧げる以外で」
「下半身脱がされて、あそこむき出し。ドライアドたちに股開いて犯してって頼んだのよ。笑うわよ。ドライアド全員女なのに」
「それいい思い出なんんだ」
「それで誰も犯してくれなくて、しょうがなく敵の兵士や御者に頼んだんだけどフラれてね。笑うでしょ。しょうがなくて、男の前でおしっことうんちして見せたの。カリクガルはそれで合格にしてくれて、命助かったのよ。本当に感謝している」
「そうしろって命令されたの?」
「ううん。カリクガルは優しいからそんなこと言わないわ。自分が恥ずかしいと思うことみんなの前でやれって言われたの。だから私は頑張れた」
「他の人も同じ?」
「男は射精させられた。私達が股開いて見せたんだけど、ガンズは射精できたんだけど、マジューロが駄目で」
「どうなったの」
「Fが来て、おっぱいむき出しにして、マジューロに押し付けたらやっとできたのよ。笑うわよ」
幸福なピピンは帰っていった。ジュリアスはFが最後に薬を使ったと推測していた。死にたくなるようなひどい経験まで幸福に感じさせる薬だ。ひどい反動が来るはずだ。ユグドラシルに念話した。
「ユグドラシル。ピピンたち薬切れたら自殺するわよ」
「大丈夫。全員アバターを30入れてある。人間は連続30回も自殺できないのよ」
確かにそうだろう。自殺して失敗した人に、直後に自殺をやり直す気力があるとは思えない。少なくとも連続30回は無理だ。
「ジュリアス。君たちに頼みがある」
「ユグドラシル。誇り高いあなたが、頭を下げちゃだめよ。あなたと無関係に、私達はカリクガルを倒す」
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