第262話 玄武との戦い
レニーは戦い方を変えることにした。ガンズとの戦いに負けたこともある。それにカリクガルには毒針は効果がない。
ペルソナ結界を生かすとすれば、内側に防御力の強いモンスター、外側に攻撃力の強いモンスターのペルソナを配置しなくてはならない。
結界の能力はペルソナの能力+結界士の能力だ。レニー、ブルースの能力はおよそ200。カリクガルの能力が攻撃、防御とも1000だとすれば、内側は防御力800以上、外側は攻撃力、あるいは魔力、理力が800以上のモンスターを探せばいい。
レニーはルミエを訪ねて、能力値が800以上のモンスターのペルソナをもらいに行った。氷雪ドラゴンの理力が850あった。魔力(MP上限)が760。魔法攻撃では一番強い。攻撃は氷雪ブリザード。相手の体温を下げて攻撃するタイプだ。
氷雪ドラゴンの防御力は300しかない。他のペルソナも防御力が400を超えるモンスターはいなかった。内側の結界のモンスターがいない。
レニーはケリーを訪問して、防御力の一番強いモンスターをサーチしてもらった。出てきたのは玄武という亀のモンスターというか、神だった。
レニーとブルースでは勝てる気がしない。頼りになるルミエ姉さんに頼る。念話をしたら、今なら行っても良いという。
それで北の海の絶海の孤島にいる。この島になぜかドライアドのダンジョン入り口があり、玄武はまさかのダンジョンボスだった。歩きやすい黒い岩でできたダンジョン。かがり火が燃えていて、暗くはない。
先頭を歩くベルベル。親切な男の子は好きだ。ベルベルは良いやつだと、レニーは思う。太い鞭でゴブリンを瞬殺しながら歩いている。
2層目はブルースに先頭に立ってもらう。相手はオーク。これくらいは危なげなく倒せるようになったブルースだ。
3層目はレニーが先頭に立つ。攻撃は毒針の投擲。モンスターはホブゴブリン。ベルベルが月光のデバフを発動してくれる。月光はゆっくりだが相手のHPを削ってくれる。ホブゴブリンは弱くはないが、レニー一人でも戦える相手だ。
毒針の投擲時に羽音がして、相手を威圧する。投擲の連射もできる。追尾のモジュールもあるので、精密に同じ場所に当たる。
えげつないが目を狙う。両眼を潰すまでもない。片目に毒針が刺さると麻痺毒で動けなくなる。ただレニーにはその後の攻撃がない。ただ待つだけになる。
無駄な時間なので、ベルベルが鞭でホブゴブリンを物理的に絶命させてくれる。あとは自動収納でマジックバッグに入れる。
4層はサイクロプスだった。そこそこ強者である。今度はルミエかなと思ったら、ルミエがレニーに、結界の戦い方を見たいと言ってきた。
内面はブルースが張る。キラービーのペルソナ完全結界。外側はレニーの張る氷雪ドラゴン完全結界だ。
レニーが叫ぶ。
「メイクハニカム」
内面と外面の二重結界が1枚の構造結界になり、ハニカム構造で強化された。完全結界でモンスターからの攻撃はさえぎられる。空気も通さないので、呼吸はできずモンスターはいつかは死ぬ。
氷雪ドラゴンがブリザードをブレスする。結界内は一気に気温が下がり、サイクロプスの動きが鈍る。そこに1キロ弾がキラービーから発射される。追尾モジュールで決して外さない。
確実に倒せるが、サイクロプス1体倒すたびに結界を張り直す。強大な敵には結界攻撃はいい方法だ。しかしばらばらに出てくる敵を倒すには向いていない。
2体目のサイクロプスはルミエが鎮静で動きを止めて、顔盗術でペルソナを奪ってから、ベルベルが鞭で倒した。
3体目からは鎮静、鞭の組み合わせか、あるいはベルベルがエロスの神弓の鉄の鏃で心臓を打ち抜くスタイルで倒して進む。やはりその方がスピードが速い。
さて4層目。いよいよ玄武である。ルミエが言う。
「レニー。まず自分のやり方で戦ってみて。私達最初は見ているから。途中でこうした方がいいことあれば手伝う」
大きな浅い湖があった。その中央の島が、玄武という大亀だ。モンスターというより、やはり神に近い。
「ベルベル。これ亀モンスターというより、神様だと思う」
「北の方角を守護する神様で、水の神様」
「私たちに倒せるわけないんじゃ?」
「60年に1回死ぬ。死んでまた蘇る。その死と再生の儀式の時期だけ、殺すことができる。それが今」
「殺せなければ?」
「挑んだ者が死ぬ」
レニーとブルースはさっきと同じ二重の結界を張る。氷雪ドラゴンがブリザードブレス。結界の中は氷点下。なのに湖は凍らない。
ブルース、キラービーのペルソナ、レニー。毒針が一斉に、玄武の目を攻撃する。当たってはいるが、傷をつけることができない。針や弾丸は、軟らかそうな目の表面を傷つけることもできない。
「レニー。水よ。水がその亀を癒している。水を止めなきゃ」
ベルベルはもう六魔の杖を発動している。ゆっくりだが玄武のHPとMPが減っていく。だがすぐ補充されてしまう。ドレインを発動しても同じ。防御力が高いだけではない。この水が玄武の再生能力を高めていた。
玄武はウォーターバレットで反撃してくる。しっぽが大蛇になっている。その大蛇の口から多数の水弾が発射される。攻撃力もかなり高い。幸い結界は固く、水弾で破壊されることはない。ベルベルが言う。
「冥界から流れてくる水は、玄武にはエリクサーと同じなんだ。水を止めないと玄武は倒せない」
レニーはブルースの結界を裏返す。これで結界は中からも外からも物理的に切り離された。冥界の水は浅い湖に入ることはできない。
ブルースはキラービーとペルソナを交替する。結界の底辺に移動し、湖の水を飲みこみ、結界外に排出。
時間はかかったが水はほとんどなくなり、土の凍結が始まった。
「レニー、ブルースと私が交替する」
ルミエが結界のペルソナとして、攻撃に加わる。ルミエの攻撃は鎮静の範囲攻撃。一定の範囲の物理的な静止。同時に心理的なやる気が失せて無力感に捕らわれる。
ベルベルが結界の中に入り、鞭で玄武を打つ。甲羅ではじかれてダメージを与えることはできない。しかしときどき能力値をわずかに奪っている。
レニーのできることは何もない。結界を縮小させて、氷結速度を上げようと試みる。ルミエは空気を吸って外に排出し始めた。内部の空気の圧力が強まるのが嫌のようだ。空気の密度が高まると気温が上昇するらしい。
「レニー。セバスに念話。氷聖石を手に入れて、誰かに持って来てもらって。それを亀に投擲してほしい」
セバスはコオロギゴーレムを使って、大量の氷聖石を贈ってくれた。結界の中に入り、玄武に投擲し続けるレニー。追尾は使わず、ランダムに玄武の体温を下げる。
2時間以上たって、やっと体温低下の効果が出てきた。同時に急激に玄武のHPが減り始める。能力値の逆転が起こり、六魔のすべてがベルベルの支配下に入ったのだ。
鎮静と氷結ブリザード、氷聖石の相乗効果で玄武の体温低下が激しくなる。HPが10を切ったところでルミエが顔盗術をかけ、玄武のペルソナを奪う。
倒しきったのは3時間経過の時点だった。結界を外すと、玄武は眠ったように冥界に去っていく。ドロップは守護のスクロール。防御力を70上げてくれる。
ルミエはスクロールはレニーが使うべきと言ってくれた。ありがたく受け取るレニー。玄武の防御力850。守備のスクロールとレニーたちの防御力の加算で、カリクガルに対抗できる。
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